多様な個性を包み込んで高め合う、新たなリーダーシップ…東京女学館

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 グローバル社会に貢献できる人物の育成を目指す東京女学館中学校・高等学校(東京都渋谷区)は、従来のリーダーシップに代えて、多様な個性を包み込む「インクルーシブ・リーダーシップ」の養成に力を入れている。また、それを培うための仕組みとして、学校行事やクラブ活動を生徒が自主的に運営する「スタディ・アジェンダ」(実行委員会方式)を実行しているという。同校の目指す教育の姿について福原孝明校長に聞いた。

新時代に必要な新しいリーダーシップ

インクルーシブ・リーダーシップについて説明する福原校長
インクルーシブ・リーダーシップについて説明する福原校長

 「1人の強いリーダーが他のメンバーを牽引(けんいん)する時代は終わりです。これからの時代に必要なのはお互いの違いを認めつつ、包み込んで乗り越えていける力を養うこと。それが本校の目指すインクルーシブ(包摂的)・リーダーシップなのです」と福原孝明校長は話す。

 同校は1888年、「欧米の婦人と対等に交際できる日本の婦人を育成するために、国際基準の女子教育を受けさせたい」という目標の下、総理大臣伊藤博文を創立委員長とする女子教育奨励会によって設立された。7人のイギリス人女性を教員として招き、国語と日本史以外はすべて英語で授業をしていたという。

 時代の流れの中で欧米への対抗という意識は消え、現在では「高い品性を備え、人と社会に貢献できる女性の育成」という教育目標に変わった。「この目標を設定したのは新校舎に移った1998年です。『社会に貢献』に、あえて『人と』と加えました。お互いが理解し尊重し合えるかが、これからの時代には大切だから、という考えです」と福原校長は話す。

 さらに、21世紀に入ってグローバル化する時代に対応して打ち出したのが、お互いの多様性を認めながら、それらを包摂する「インクルーシブ・リーダーシップ」の考えだ。

 もともとはアメリカ教育界で、パインマナー大学のグロリア・ネメロビッチ学長らが提唱している考えで、さまざまな解釈があるそうだが、東京女学館では、この考えを「一つの課題をみんなで共有し、解決する力。時にリーダーとなり、時にサポーターとなり、それぞれが『主体的な視点』を持ち、みんなで力を出し合い、高め合っていく力」ととらえている。

 同校の教育の特徴は、この「インクルーシブ・リーダーシップ」を養うために「スタディ・アジェンダ」(実行委員会方式)という活動方式を取り入れている点だ。学校行事やクラブ活動などの場面で、生徒は実行委員会を作り、主体的に運営する。生徒自ら課題を見つけ、意見を交換しながら、取り決めたり、実施したりする。「インクルーシブ・リーダーシップ」はその中で発揮され、養われていくという。

 たとえば、中3の沖縄修学旅行は、中2の3学期に学年合同ホームルームで「修学旅行委員長・副委員長」を選出することから始まる。委員は、旅のしおりを作ったり、先生の補助的な連絡係を務めたりするだけでなく、部屋割りや夜の点呼までも任される。

 「修学旅行の部屋割りはすんなりとは決まらないものですが、教員はあえて介入しません。インクルーシブ・リーダーシップに(のっと)って、自分たちで話し合って決める。それがうまくいくと大きな自信につながります」と福原校長は話す。

 「今から十数年前、『体育大会の運営も修学旅行委員会と同じようにスタディ・アジェンダ方式で私たちがやりたい』と生徒たちから申し入れがありました。『それならば、おやりなさい』と任せてみると、それまでのように審判員による僅差の判定でもめることがなくなりました。入退場や進行もほぼ定刻通りに行われます。実行委員が一生懸命にやっている姿を見て、生徒たちが協力するのです。他校と兼務する非常勤の教員も驚くほど、見事な運営になっています」

 創立記念祭(文化祭)でも「インクルーシブ・リーダーシップ」が発揮される。直前になると、どのクラブも準備に余念がなく、つい下校時間が遅れがちだが、各クラブの部長で組織するクラブ幹事会は「下校時間は守ろう」という自主ルールに則り、校門前に立って生徒たちに声をかけるという。

 「本校では、新しく同好会や部を設立するときも、まず初めにクラブ幹事会が話し合って採決します。そこで承認されてから教職員が決議することになります」

インクルーシブ・リーダーシップを養うさまざまな委員会活動

生徒主体で管理し、授業でも使われるビオトープ
生徒主体で管理し、授業でも使われるビオトープ

 修学旅行や体育大会などの実行委員になるには、立候補して選出され、メンバーに承認される手続きがいる。そこまで積極的に「スタディ・アジェンダ」に関われない生徒は、「インクルーシブ・リーダーシップ」をどう学ぶのか。

 「アンネのバラ委員と、ビオトープ委員は、希望して手を挙げればなれます」と福原校長は話す。「アンネのバラ」とは、『アンネの日記』の作者の父が育てていたオレンジ色の美しいバラだ。同校は挿し木で増やしたその1株を譲り受けている。「委員」たちは協調し合って、枯らさないように水や肥料をやり、草を取るなどして世話をする。

 ビオトープ委員は、新校舎建設時に購入した隣接地でのビオトープの完成に携わり、現在では管理を受け持っている。設計にあたっては、自然科学に興味がある生徒たちに図面を提案してもらい、それを基に教員、業者と協働して作り上げたという。今は古代米を植えたり、果実を収穫したりしており、生物や社会の授業でも使っているという。

オルセースクールミュージアムで展示された忠実なレプリカ
オルセースクールミュージアムで展示された忠実なレプリカ

 このほか、新たな取り組みとしてオルセースクールミュージアムの開催やユネスコスクールへの加盟を行い、「開かれた学校」作りにもチャレンジしている。

 「オルセースクールミュージアム」は、校舎を美術館に見立てて、仏国立オルセー美術館が公認する所蔵品の忠実なレプリカを展示する試みで、今年3月の春休みに実施された。誰でも自由に間近に芸術作品を鑑賞できるよう無料で一般公開した。その準備や企画、運営は、生徒がクラブ単位や個人で手掛け、来場者に高く評価されたという。

 「ユネスコスクール」は、ユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校だ。同校がユネスコから認定を受けたのは、中2での広島や沖縄への修学旅行を通して平和教育を行ってきたことや、生徒有志が「模擬国連」に参加するなどの活動が評価されたからのようだ。

学年順位、クラス順位をあえて知らせない

国公立・難関私立大への安定した進学実績を誇る東京女学館
国公立・難関私立大への安定した進学実績を誇る東京女学館

 生徒たちが自主性、主体性を発揮するのはクラブ活動や委員会活動ばかりではない。むしろ、そうした姿勢は日々の学習の中で培われている。同校は、生徒に主体的な学習姿勢を身に付けさせるために、中学1年の初めからワークシートタイプの「ステップアップノート」を使って指導している。

 「最初は宿題や提出物などを記入してもらい、教員や保護者にもコメントをもらいます。それをずっと続けてできるようになったら、手放すのが本校のやり方です。つまり、指導されなくても自分で自己管理できるように持って行きます。また、数学と英語では『訂正ノート』を作り、小テストなどで間違ったところは何度でも教員とやりとりして理解を深めてもらいます。こうした小さなことをきちんと積み重ねていくことが、基礎固めになり、やがて学力も伸びていきます」

 こうした6年間の基礎の積み重ねが、大学入試で物を言う。今春は同校から東京大学に昨年より2人多い3人、慶応大学に10人多い33人(いずれも既卒者を含む)が合格した。国公立大と早・慶・上智の合計でも今春は93人が合格した。ここ数年は、毎年ほぼ100人前後がこれらの最難関大学に合格しており、安定した進学実績を見せている。

 ちなみに同校は、3年前から定期テスト後に学年順位、クラス順位を一切知らせない方針を取っているという。「たかだか200人の中で何番と知っても、それは井の中の(かわず)です。順位にとらわれるよりも、間違ったところ、理解が足りなかったところをしっかりと確かめ、復習して、次に生かしてほしい」と福原校長は語る。

 「スタディ・アジェンダ」では、生徒自ら学校生活やクラブ活動の中で課題を見つけ、意見を交換しながら、取り決め、実施するという。勉強も仲間同士で競うことなく、自ら弱点を見つけて克服していく。進学実績を支えているのも、常に主体的に、みんなで高め合っていく、そのあり方なのだろう。

 (文・写真:田村幸子 一部写真提供:東京女学館中学校・高等学校)

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820441 0 東京女学館中学校・高等学校 2019/09/30 13:36:00 2019/09/30 13:36:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190930-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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