【特集】中学生がリーダーシップ育む「なでしこ発表会」…淑徳与野

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 淑徳与野中学・高等学校(さいたま市)は、中学のクラブ発表会として「なでしこ発表会」を毎年行ってきたが、新型コロナウイルスの流行を受け、今年の一般公開を断念した。そこで立ち上がったのが、なでしこ発表会実行委員会の生徒たちだ。受験生たちに自分たちの思いを届けたいと奮闘し、成長していった様子を、見守ってきた教諭らに聞いた。

一般公開の中止でも「何かできないか」

「生徒の大きな成長を感じました」と話す青木教諭
「生徒の大きな成長を感じました」と話す青木教諭

 同校は、例年9月に中学校で行っている「なでしこ発表会」を、今年は延期して校内で縮小開催し、一般公開は中止した。「なでしこ発表会」はバトン部、吹奏楽部、音楽部などの文化部を中心に、同校の受験を考えている小学生や保護者など一般来場者に日頃の活動の成果を披露するクラブ発表の場だ。企画・運営が中学生の手だけで行われるのが特徴で、生徒が校内を案内する「キャンパスツアー」や、受験生のための「学校紹介コーナー」が例年は行われる。

 「昨年はコロナ禍で全て中止になってしまっただけに、生徒たちが今年の『なでしこ発表会』にかける思いは強いものがありました」と、実行委員会顧問の青木舞教諭は明かす。「校内のみの実施にもかかわらず、実行委員に約50人もの生徒が手を挙げたのです」

 実行委員会は、中学生徒会と募集に応じた一般生徒でつくる。中学生徒会は、副会長をトップに、中2と中3から1人ずつ選ばれた書記・会計・監事で計7人。これに立候補した実行委員の一般生徒が加わって、受付係、装飾係、パンフレット係、体育館運営係の四つの係に分かれて、準備・運営していく。

 実行委員会が全校生徒から募集して決定した今年のテーマは「REBORN」。「途中で止まっていたものが動き出す」の意味だという。今年も係ごとに先輩たちから引き継ぎがあり、係の顧問の先生と相談しながら校内開催に向けて、5月から準備を進めてきた。

 生徒たちは「受験生に見てもらうイベントなのに、来てもらえないなら、代わりに受験生へ向けて何かできないか」と提案してきたという。

 「『なでしこ発表会』の運営主体はあくまでも生徒で、私たち顧問の教員は見守り、助言をするだけです。生徒の考える力や成長を促すために、聞くだけにとどめていました」と、青木教諭は話す。

「受験生のために」生徒たちが動画配信を提案

「受験生を励ましたい」という思いで動画撮影する実行委員の生徒たち
「受験生を励ましたい」という思いで動画撮影する実行委員の生徒たち

 生徒たちの話し合いの中で出てきたのは、「校内案内ツアー」「淑徳与野生の1日」「部活紹介」の三つの動画を作り、一般公開して見てもらおうという案だった。早速、「校内案内ツアー」と「淑徳与野生の1日」の動画撮影に入った。「部活紹介」の動画は、中学生が一堂に集まる11月4日の仏教行事「成道会」の時に、なでしこ発表会を縮小して行うので、それを撮影する。いずれも動画が出来次第、学校のホームページにアップする予定だ。

 「なでしこ発表会」の伝統となっている、受験生に渡す手作りの合格お守りも、「渡せないなら、学校説明会で渡す資料の中に入れてほしい」と製作が始まった。

 「生徒たちは、受験生に見てもらいたいという熱い思いで、コロナ禍という困難を乗り越え、できることをやろうとしていました。『なでしこ発表会』は、生徒にとって、自分が受験生だった時に見て励まされたものだから、『今度は私たちが受験生を励ましたい』という思いなのでしょう」と、青木教諭は生徒たちの気持ちを推し量る。

中学生のリーダーシップを育む大切な行事

例年、「なでしこ発表会」で受験生に渡してきた生徒手作りの合格お守り
例年、「なでしこ発表会」で受験生に渡してきた生徒手作りの合格お守り

 同校では中学と高校で別々にクラブ活動を行う。中学生のクラブ加入率はほぼ100%で、中3が後輩を指導するなど、中学生のリーダーシップの育成の場として、クラブ活動を重視してきた。「なでしこ発表会」はその成果を校内外に発表するという大きな意味があり、特に対外試合などのない文化系クラブにとっては、年に1度の大きな発表の場となっている。

 それでも廃止の危機はあった。「なでしこ発表会」が始まったのは2010年だが、「当時は与野地区にあった高校の校舎で文化祭を行い、主体的に運営していたのは高校生で、さいたま新都心の校舎にいる中学生は、ほとんどお客さん状態で、見るだけになっていました。それを、一日は自分たちの活動や学校の様子を見てもらいたい、と独立したのが『なでしこ発表会』です」と、黒田貴副校長は当時の状況を説明する。そのため、5年後に中高の校地がさいたま新都心に一本化された際、「高校の文化祭もあるのに、行事が多すぎるのではないか」という声が上がったというが、「むしろ中学生にも活躍できる場を与え、リーダーシップを育成する場としたいと考え、『なでしこ発表会』を大切にしてきました」と、黒田副校長は強調する。

 同校では、早稲田大学グローバルエデュケーションセンターの高橋俊之さんの監修で、「全員発揮のリーダーシップ」を育てることに注力している。

リーダーシップの育成について話す黒田副校長(左)と小澤中等部教頭
リーダーシップの育成について話す黒田副校長(左)と小澤中等部教頭

 「一人のリーダーが周りを引っ張っていく昔ながらのリーダーシップではなく、チームのメンバー全員が自分の得意なことを生かして主体的に取り組んでいくことで、大きな成果が得られる、一人一人の動きこそがリーダーシップだ、という考えです。『なでしこ発表会』を通して、生徒たちに、これがリーダーシップなんだと気付いてほしいのです」

 小澤幸子中等部教頭は、「女子校の方がリーダーシップを養いやすいという面もあります」と話す。「共学だと大道具などの力仕事は男子がやるという風潮が、無意識にあります。女子校ではそれがないので、全部自分たちでやるのが当たり前になります。また、男子の目を気にしたり、遠慮したりしなくていいので、自分の良さを十分に発揮できるという点もあります。それがリーダーシップにつながるのです」と語る。

 今年、生徒たちの決断と行動を見守った青木教諭は、「生徒たちの大きな成長を感じました」と言う。「『なでしこ発表会』は生徒が成長するいいチャンスだと改めて思います。受験生だけでなく、中1の生徒もその様子を見て、上級生になったら生徒会に入ろう、実行委員をやろうと思うきっかけになります。先輩を見て後輩が成長する、縦のつながりができる特別なものなのです」

 ある中2の生徒は、「私たちが頑張っている姿を、受験生に見せたいのです。そして、後輩にも見てもらって、後輩に勇気を与えたいのです」と青木教諭に話したという。その思いは、動画を通じても伝わるに違いない。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:淑徳与野中学・高等学校)

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