新しい教育改革でさらに確かな進学校へ…穎明館

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 高尾山に近い緑豊かな環境に立つ穎明館中学高等学校(東京都八王子市)は、多摩地区を代表する進学校として定評がある。この4月に就任した橋本好広新校長に、学校の特色や三つの教育方針、今年度スタートした教育改革「EMK未来プロジェクト」などについて話を聞いた。

「誇り」を生む豊かな自然と充実の施設

「穎明館は誇りの持てる学校」と語る橋本好広新校長
「穎明館は誇りの持てる学校」と語る橋本好広新校長

 橋本校長は1987年、穎明館中学の開校と同時に赴任し、副校長を経て今年度、校長に就任した。30年余り学校を見つめてきた橋本校長が、何より学校の特色として語ったのは「誇りの持てる学校」ということだ。

 「本校校歌の一節に『穎明館こそ我が誇り』とあるように、多くの生徒が本校に誇りや愛着を持ってくれています。師弟の関係も近く、卒業生がよく遊びに来て教員と談笑しています」

 その「誇り」の源泉は、充実した学園環境と自由な校風にあると橋本校長は考える。「近隣の豊かな森林や緑地は、中学理科の自然観察など授業にも活用しています。施設面の充実も特色で、例えば理科関連は物理・地学、生物、化学と三つの実験室に天文ドームがあり、人工芝グラウンドや屋内プールなど、質の高い運動施設もあります」

 「自由な校風は、生徒の主体性を重んじる教育方針がベースにあります。文化祭などの行事運営も、教員は口を出さず見守る立場です。多少の失敗や間違いは経験となるので、恐れずにやりなさいという姿勢です。こうした環境や校風によって『良い学校に通えた』という気持ちが育まれるのでしょう」

経験・道徳・知識が教育の三つの柱

菅平高原での3泊4日の合宿では集団行動や人間関係づくりを学ぶ
菅平高原での3泊4日の合宿では集団行動や人間関係づくりを学ぶ

 同校は校名「穎明館」の3文字のイニシャル「E・M・K」に合わせ、「Experience(経験)」「Morality(道徳)」「Knowledge(知識)」を教育の三つの柱としている。

 「Experience(経験)」は、自分の将来を見極めるためのさまざまな経験という意味合いだ。「良い進路に進むには、希望を持ち、適性を知り、努力することが重要。そのために自分を知り、社会を学ぶ各種の体験学習を行います」

 中1では、1学期に長野県の菅平高原で3泊4日の合宿を実施し、集団行動や人間関係作りを学ぶ。中2では平和学習として広島を訪れ、中3では京都・奈良で歴史や伝統文化に親しむ。ほかにも鎌倉での校外学習や芸術鑑賞などの体験学習を実施している。

広島を訪れての平和学習
広島を訪れての平和学習

 これらの体験学習を通して自分の関心事を探究し、中3で「卒業論文」にまとめる。「これも、自分を見つめ、将来を考えるきっかけの一つになるようです」と橋本校長は話す。

 中学後期からは進路を意識した行事が始まる。中3から高2生を対象に「キャリアガイダンス」があり、多様な職業の卒業生や保護者を6、7人迎えて話を聞いている。高1生全員参加のアメリカ・カナダ体験学習でも、現地の日本人留学生や企業人を招いた講話会が開かれる。

 もちろん進学先の研究にも力を入れている。高1、2では大学のオープンキャンパスを訪問し、リポートを提出することが必修課題だ。医学系を志望する生徒に向けた「医療系進学セミナー」では、東京・立川市の立川相互病院の協力を得て、医師、薬剤師、看護師、スタッフを招いて講演してもらったり、医療体験を行ったりしている。また同病院での「一日医療体験」で、医師による講演や回診の見学、入院患者との交流などを通し、医療の現場を体験させている。

京都・奈良を訪れて歴史や伝統文化に親しむ
京都・奈良を訪れて歴史や伝統文化に親しむ

 「Morality(道徳)」は、「本校の教育の真ん中にある概念」と橋本校長は強調する。常識的なモラルを身に付けるため、各教員がホームルームや授業、部活動などで日常的に生徒と対話することに努めているという。

 「生徒を一個の人格として、『話せば分かる』という信念で向き合う。その上で、思いやりや人の痛みの理解など、人のあるべき振る舞いについて話します。ただ、しゃくし定規なルールの適用は控えています。人を傷つけるような言動は絶対いけませんが、少々の逸脱はありがちな年齢です。きちんとコミュニケーションを取った上で、大目に見る姿勢も大事にしています」

 「Knowledge(知識)」は、生徒の学力向上だけでなく、生徒を支える教員の知識の充実も意味しているという。「本校は優れた専門性を持つ教員が多く、授業の方法や内容は各教員の創意工夫に任せ、学力向上に良いことはどんどんやらせます。ですから、シラバスにより、指導方針や進度についての共通理解はありますが、同じ科目でも授業は一人一人異なります」

 新たなノウハウやメソッドの獲得にも意欲的だ。教員が外部の教育研修へ参加することを奨励し、校内の研究授業や公開授業でも積極的に成果の共有を行っているという。

 これらの取り組みについて橋本校長は、「各教員が教育を手づくりしている感覚です」と語る。「目の前にいる生徒をどう伸ばそうかと絶えず考え、動いている。『面倒見の良い学校』と呼ばれるゆえんではないでしょうか」

 生徒のためにより多くの時間を使えるように、業務を効率化する努力も欠かせないという。「定例の職員会議は行わず、報告書や書類もできるだけ簡素化しています。その代わり、教員間で日常的に情報交換しています。各教員の裁量に任せる部分が多いことも、プラスに働いているのではないでしょうか」

確かな進路保証へ向けた未来プロジェクト

 同校は、橋本校長の就任を機に「EMK未来プロジェクト」と呼ばれる教育改革に着手した。その狙いについて、橋本校長は「従来の実績にも自負はありますが、近年の教育環境の変化を改めて見極め、より確かな進路保証の仕組みを整えたいと考えました」と語る。

 このために、五つのプロジェクトチーム(基礎学力向上・大学受験対策PT、カリキュラムマネジメントPT、特色教育構築PT、中長期目標戦略検討PT、広報PT)を発足させ、生徒の学力向上に向けてあらゆる角度から改革を進めている。

 プロジェクトは三つの柱から成る。一つ目は「アドバンストクラス(AC)」の新設だ。中3以上の各学年に、学年総合成績の上位30~40人の生徒からなるクラスを設け、難関大学進学を見据えた授業を行う。今年、中3に導入したのを手始めに順次、上の学年にも新しいクラスを広げていく。

 「これまでも『全クラス特進』という意識でしたが、希望の進路にあと一歩で届かないケースを少しでも減らそうというのが目的です。クラス替えもあるので、授業の進度は他のスタンダードクラス(SC)とあまり差を付けず、教員の専門性を生かしてより深く、細かく学ぶ授業を行います。教員間で連携しての教科横断的な授業も考えています」

 スタート間もない中3のACの様子を聞くと、朝早く登校して自習する姿が見られ、意欲的だという。また、SCにもACへの来年度編入を目指して頑張る生徒が出始めているとのことで、滑り出しは快調のようだ。

 二つ目は、放課後学習支援システム「EMK未来サポート」の導入だ。「本校は質の高い授業や補習などによって『塾不要』を標榜(ひょうぼう)しており、実際に塾通いをする生徒は低学年で1~2割ほどです。この特色をさらに強化すべく、放課後の自学自習環境を整えることにしました」

 計画では、図書館の1階と地下を自学自習専用の部屋に改装し、外部提携先からの専従スタッフを常駐させて学習のフォローを行う。また、この部屋を使う場合は中学生の下校時刻を午後6時から午後7時まで延長するという。10月から本格スタートの予定だ。

 三つ目は、グローバル教育の活性化だ。まず、英語4技能の向上を目指し、オンライン英会話を導入する。高2の英語の授業内で実施していく予定だ。

 注目されるのは、現在準備を進めている海外大学推薦制度の導入だ。「海外大学への進学を考える生徒に応えるものです。海外進学は書類の準備などが大変ですが、エージェントとの提携により、比較的負担の少ないステップで推薦入学が実現できるようになります」

 グローバル教育については従来から重視し、英国イートンカレッジのサマースクールへの参加、オーストラリアへのターム留学、高1生への第2外国語(フランス語・中国語)の授業(希望者)などを実施しているが、この制度の整備によって、本格的な海外大学進学校として進化を遂げたい考えだ。

 穎明館は、東京大学をはじめ、国公立大や難関私大、さらに医学部への進学者も増えてきている。新しく始まった教育改革は、こうした進学傾向をさらに伸ばし、確かなものにする一歩となるだろう。この改革が母校への「誇り」をさらに高めるものとなるのか、今後を注視したい。

 (文・写真:上田大朗 一部写真:穎明館中学高等学校提供)

 穎明館中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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660422 0 穎明館中学高等学校 2019/06/28 05:21:00 2019/06/28 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190627-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

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