【特集】生徒同士が講師を務め、学びを深める放課後授業…佐久長聖

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 佐久長聖中学・高等学校(長野県佐久市)は昨年、中学の放課後の特別授業「イブニングゼミ(eゼミ)」で、生徒同士が教え合う形式を導入した。このアイデアは、生徒会役員の選挙公約として登場したものだが、生徒の自主性を重んじる教育方針の下、学校として採用した。上級生と下級生の貴重な対面コミュニケーションの場ともなっており、生徒たちは互いに講師を務めながら、自主的に学びを深めているという。

生徒会役員選挙の公約として登場

特別授業の「eゼミ」で教え合う生徒たち
特別授業の「eゼミ」で教え合う生徒たち

 もともと「eゼミ」は、英語と数学の特別講座として2015年に始まり、中学1~3年の希望者を対象に、クラブ活動のない火曜、金曜の放課後に実施されてきた。生徒が希望に応じて選択する講座を、担当教員が指導する方式を取ってきたが、昨年4月から初めて生徒が互いに教え合うという形に改めた。

 きっかけは昨年末行われた生徒会「 聖凛会(せいりんかい) 」執行部役員の選挙公約だった。「放課後の時間を生徒同士のコミュニケーションや、生徒同士が勉強を教え合う場として活用します」。女子の副会長に立候補した 山崎(やまざき)心愛(みら) さん(中3)は、この公約に掲げて見事当選した。

 同校では、定期テストの後に試験結果を振り返る「見直しノート」を生徒に作成させている。試験で間違った問題を再確認し、知識の定着を図ることが目的だが、山崎さんはこのノートを作るたびに、先輩や友人に気軽に質問できたら良いのにと感じていたという。かつて苦手な数学の証明問題について友人に教えてもらったおかげで、テストで良い点が取れた経験もあった。先生には聞きづらいささいな問題であっても生徒同士なら気軽に教え合えると考えた。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響で部活動などが制限され、学年を超えて知り合い、交流する場が限られている時期でもあった。希望すれば学年を問わず参加できるeゼミなら、生徒同士のコミュニケーションの場となるし、教え合う形式にすれば一石二鳥と考えたそうだ。

 公約を実現するため山崎さんは、早速、新年度からの開始を目指して準備を始めた。すぐに突き当たったのは「教える側の生徒がどの程度確保できるか」という問題だった。

「教室では目にすることができない新たな一面が見られた」と話す吉田教諭
「教室では目にすることができない新たな一面が見られた」と話す吉田教諭

 そこで、eゼミを担当する吉田雅弘教諭に相談し、中3の全生徒にアンケートを取り、講師の希望者を募ったところ、学年の約3分の1にあたる約30人が、「講師をやりたい」と回答した。山崎さんは「びっくりしたと同時に、同じ思いの人がこんなにいたんだとうれしくなりました」と振り返る。

 生徒会と先生とで相談した末、まずは数学で生徒が講師役を務め、4月からスタートすることとなった。講座が始まると生徒たちの間に予想以上の反響があったという。講師役として数検対策の講座に参加した (おお)(つか)()(さき) さん(中3)は、「多くの下級生とも知り合うことができ、感謝されるとうれしくて、もっと上手に教えようと工夫するようになりました」と話す。初めは自分が伝えたいことをうまく伝えられないもどかしさがあったそうだが、「何度も繰り返すことで相手の納得感を引き出しながら必要な情報を伝えることができるようになりました」と言う。また、自分の知識の定着にも役立ったそうだ。

 生徒会で新聞委員会の委員長を務める (やなぎ)(はら)(だい)() 君(中3)も、eゼミの講師として参加し、その取り組みを「ダイアログ勉強法」として校内新聞で紹介した。柳原君は、生徒同士が先生役と生徒役になって教えあうことを「ダイアログ(対話)」と呼び、知識を定着させる勉強の方法として有効だと訴える。人に説明するには自分がしっかりと理解していなければならないが、「ダイアログ勉強法」なら、自分の知識のあやふやな部分に気付き、「分かったつもり」を減らすことが出来るという。

 「先生役となるために事前に調べ、学ぶ過程で知識を深めることができます。生徒会の活動としても自分の学習法としても自信が深まりました」

 講師を務めたのはこの2人だけではない。講師役を希望する多くの生徒たちに対して、山崎さんを中心とする聖凛会が、各々の知識レベルに合わせて担当講座を振り分けたため、希望した全員が講師役を務めることができたそうだ。

自主性重んじる教育方針が生徒を後押し

「時代の要請に校長の考えが合致した結果ではないか」と語る坂巻教諭
「時代の要請に校長の考えが合致した結果ではないか」と語る坂巻教諭

 理事長補佐兼入試戦略室長の坂巻 (ある)() 教諭は、こうした生徒たちの主体的、自発的な取り組みを、自身の経験と重ね合わせて感慨無量の思いで見つめる。

 坂巻教諭は同校の前身である佐久高校の卒業生で、在校中は特待生として勉学に励んだという。「私のいた頃はちょうど進学実績の向上に力を入れ始めた時期で、とにかく勉強、勉強。自由というよりは、しっかりと管理して成長させていくという雰囲気でした。それはもう文字通りのゴリゴリだったんですよ」

 大学を卒業後、長野県内の公立中学で数学教諭として15年間勤務し、2018年に佐久長聖中学に赴任してきた。佐藤康校長が就任して4年目の年だった。「『ずいぶん学校の雰囲気が変わったな』と思いました」。生徒の自主性を尊重する佐藤校長の方針で、生徒たちは一転、のびのびと勉強や部活や生徒会活動に打ち込むようになりつつある時期だった。坂巻教諭自身も公立中学では厳しい指導を心がけていただけに「最初はやや戸惑った」と言うが、佐藤校長の考えに接し、生徒の成長を目のあたりにするたびに、納得感が高まったという。

 佐藤校長の教育哲学は、生徒たちが自分で考え行動することが、生徒自身の力を最大限に伸ばすというものだ。今回、生徒たちは自ら特別授業の進め方を提案し、それを実現した。自主的に学びを深めていく生徒たちの姿を見て坂巻教諭は、「時代の要請に校長の考えがぴったり合致した結果ではないか」と言う。

 吉田教諭も、生徒たちが互いに生き生きと教え合う姿を見て、「教室では目にすることができない新たな一面が見られました」と振り返る。「自分がやりたいと思うことを、生徒たちが積極的に提案するようになってきています。自分で考え行動することが本当に身に付いてきたのでしょう」と、その成長ぶりに目を細めた。

 (文・写真:江澤岳史 一部写真提供:佐久長聖中学・高等学校)

 佐久長聖中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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