教育イノベーションで自立した人間を育てる…八王子学園

無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

「八学イノベーション」の取り組みについて話す小山貢校長
「八学イノベーション」の取り組みについて話す小山貢校長

 八王子学園八王子中学校・高等学校(東京都八王子市)は2016年から、「八学イノベーション」と呼ばれる教育改革を続けている。グローバル化する社会を生き抜ける自立した人間を育てる試みだ。「アクティブラーニング」「ICT教育」「国際理解教育」をキーワードとする改革について、中学の事例を中心として小山貢校長の話を聞いた。

教育の根本に「人格」と「平和」を据える

 小山校長は1980年、英語教員として同校に赴任。進路指導部長、教頭を経て、2015年度から校長を務める。長年、学校運営に携わり、他校や大学、各種教育機関とも交流する中で、時代に即した学校のアイデンティティーを確立する必要性を感じてきたという。そこで校長就任にあたって学校運営の根本に据えたのが、「人格を尊重しよう」「平和を心につちかおう」という学園モットーだ。

 「このモットーは終戦直後の1947年に定められたものですが、現代にこそ必要な考え方と思い、復活させました」と、二つの理念の今日的な意味合いを強調する。

 「人格」に着目した背景には、現代の学校教育への問題意識がある。「はみ出さないことを良しとする教育では、今後の社会を生き抜けません。生徒の個性や思いを生かし、やりたいことに自ら取り組ませることが、経済的、精神的、社会的に自立した人間への道と考えます」

 「平和」を掲げた背景には、地元の八王子が第2次世界大戦中に空襲を受けた歴史がある。中1では空襲について調べ、中2と高2の修学旅行ではそれぞれ広島、沖縄を訪ねて戦跡を訪問したり、戦争体験者に話を聞いたりする。

 さらに、「現代に即して平和を考える必要もあります」と小山校長は話す。「現在、グローバル化の負の側面として、国内外でさまざまな対立が表面化しています。互いの立場や人格を認め、相互理解や協調の道を探る姿勢が、今ほど必要とされている時はないでしょう。そうした素養を育てることも視野に入れています」

「探究ゼミ」でアクティブラーニング

平和学習とともに日本の歴史・文化についての見聞を広げる「京都・奈良・広島」修学旅行
平和学習とともに日本の歴史・文化についての見聞を広げる「京都・奈良・広島」修学旅行
前期の「探究ゼミ」の成果は9月の学園祭で発表される
前期の「探究ゼミ」の成果は9月の学園祭で発表される

 こうした理念に基づいて、これからの社会で不可欠な力を「英語力」「異文化理解力」「コミュニケーション能力」「課題解決能力」「新しい価値を生み出す創造力」「日本人としてのアイデンティティ」の六つと定めた。これらの力を育てるため2016年から「八学イノベーション」と銘打った学校改革の取り組みを行っている。

 八学イノベーションには「アクティブラーニング」「ICT教育」「国際理解教育」の三つの方向性がある。

 中学で「アクティブラーニング」の柱となるのは3年間をかけて取り組む「探究ゼミ」だ。学年ごとに、前期はプレゼンテーションの技術向上を目標として、テーマと発表手法を指定した調べ学習を行い、9月の学園祭で発表を行う。中1のテーマは、八王子の歴史、産業、自然を学ぶ「八王子学」。図書館やインターネットで文献を調べたり、施設訪問などで体験したりした成果をポスターにまとめるなどしてプレゼンテーションする。中2のテーマは、秋に修学旅行で訪れる「京都・奈良・広島」だ。11月の旅行に備えて事前学習し、スライドショーを使ってプレゼンテーションする。中3は夏休みのオーストラリア研修のための事前学習と実際の研修体験をリポート・論文形式にまとめて発表する。

 後期の「探究」では学年・クラスの枠を取り払い、さまざまな分野を扱った講座に参加し、ゼミナール形式で学んでいく。各ゼミで自由にテーマを設定し、調査、研究、考察を進めて学年末にプレゼンテーションを行う。

 今年2月にも、「野鳥と環境問題」「世界のジェンダー」など、近年の世界的課題から、「なぜコンビニが密集している地域があるのか」といった身近な経済に着目したテーマまで多彩な発表が行われた。「あるゼミクラスの発表係は1年生でしたが、立派にプレゼンを行って会場を沸かせていました」と小山校長は満足そうだ。

 二つ目の方向性である「ICT教育」は電子黒板とタブレットをツールとして行われている。全教室に電子黒板と無線LAN環境を整えて授業の効率化、スピード化を図る一方、生徒全員に配布したタブレット端末で、授業支援アプリを使って学びの幅を広げたり、授業プリントの配布、さまざまな情報の発信などに役立てたりしており、高度情報化社会で生きるために必要なICTリテラシーの基礎を作っている。

英語4技能を磨いて国際理解を深める

中3夏休みに実施される12泊10日間のオーストラリア海外研修
中3夏休みに実施される12泊10日間のオーストラリア海外研修

 三つ目の方向性である「国際理解教育」では、まず英語でのコミュニケーション能力を身に付けることを目指す。そのため、ネイティブの英語講師を中・高合わせて7人採用し、オールイングリッシュの授業で英語4技能の伸長を図っている。英会話を通じて「話す」「聞く」力を養うだけではなく、「最近の出来事」をテーマとした英作文の指導などで「書く」力も養い、中3までに全員が実用英語技能検定準2級の取得を目指すという。

 「中には日本の教員免許を取得し、クラス担任を務めるネイティブの教員もいます。その教員のクラスではホームルームの時間も英語が飛び交い、掲示物も全て英語です。面白いことになっていますよ」と小山校長は話す。

 さらに中3の夏休みには12泊10日間のオーストラリア海外研修も実施する。ホームステイや現地学校への通学を通して異文化交流を体験する。

 オーストラリア海外研修に先立って実施されるのが「日本人としてのアイデンティティ獲得プログラム」だ。「外国人と交流する機会が増える一方、多くの日本人が日本の文化について説明できないと言います。それではいけません。自分という人格のよりどころとしても、日本文化を知ることが大切です」と小山校長は話す。中2の「京都・奈良・広島」修学旅行に備えた事前学習や体験のほか、畳職人の職場見学など日本文化体験の特別講座を通して、日本の歴史や文化についての見聞を広げていくという。

 中学での「八学イノベーション」の学びは高校にも引き継がれ、18歳以上に選挙権が与えられたことに注目した「主権者教育プログラム」や沖縄修学旅行の事前学習を通して平和を考察する「平和学習」などのアクティブラーニングに発展する。さらに、中学時代に習得したICTリテラシーによって効率的でスピーディーな授業を実現し、「思考力・判断力・表現力」の養成にあてる時間を確保できるようになるという。

 アクティブラーニングやICT教育は、進学指導の面でも生かされている。同校は志の高い生徒のサポートを強化するために2016年、中学校を「東大・医進クラス」と「一貫特進クラス」の2クラスに編成したが、この「東大・医進クラス」では、新しい学習内容についてビデオなどを使って自宅で予習し、その内容を教室でディベートし合う「反転学習」などの先進的なプログラムを取り入れ、効果を上げているという。

 2018年に創立90周年を迎えた同校が中学校を開校したのは2012年。中学校の第2期生が今年の大学入試に臨み、東京大学や北海道大学などの最難関国立大、早稲田や慶応などの難関私大に次々合格を果たした。

 「中学校の開設以降、学校全体の雰囲気が以前に増して落ち着き、全体に良い影響が出ています。今年度は八学イノベーションの下で学んできた生徒たちが初めて高校に上がります。この先どのように成長していくか楽しみです」。そう話しながら小山校長は頬を緩めた。

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:八王子学園八王子中学校・高等学校)

 八王子学園八王子中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

528636 0 八王子学園八王子中学校・高等学校 2019/04/11 05:21:00 2019/04/11 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190409-OYT8I50025-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ