読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

【特集】校地の里山体験で「持続可能な循環型社会」を学ぶ…奈良学園

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 奈良学園中学校・高等学校(奈良県大和郡山市)は、中学1年生を対象に、10年以上前から敷地内の広大な里山を活用した「環境研修」に取り組んできた。自然環境に関する講義と、森林、水路、棚田、動植物など変化に富む自然環境の中での実地体験によって、生徒たちは「持続可能な循環型社会の仕組み」を考えるスタートラインに立つという。今年7月に行われた「環境研修」をリポートする。

里山体験を通じて探究心の扉を開け

「学ぼう 発見しよう 里山づくり」のタイトルで講義する養父教授(奥)
「学ぼう 発見しよう 里山づくり」のタイトルで講義する養父教授(奥)

 同校は、「持続可能な循環型社会の仕組み」を体験的に学ぶことを目的に、10年以上前から中1生と保護者を対象とする「環境研修」を行っている。この学習が行われるのは、12ヘクタールの校地の約半分を占める里山で、グラウンド周辺水路にはホタルが住み、校舎の裏山にはクワガタやカブトムシなどの昆虫や、ニホンハッカ、ドクダミ、リョウブなどの植物が生息する豊かな環境だ。この恵まれた自然環境に触れる体験を通じて、課題発見力や探究心を養うのが研修の狙いだ。

 研修は例年、自然環境に関する講義と実地体験の2部からなり、実地体験では数グループに分かれて地下水脈の活用や動植物の調査、棚田での稲作、間伐材を利用したシイタケ栽培などさまざまな観察、実験に取り組む。生徒は講義を通して世界的な環境問題などを学び、実地体験を通して自然への知的好奇心を刺激されて、SDGs(持続可能な開発目標)などグローバルな諸課題について考察する入り口に立つ。

 今年の「環境研修」は7月25日、中学1年生4クラス159人と保護者を対象に行われた。まず、河合保秀校長があいさつに立ち、初めて環境学習を体験する生徒たちに対して、「持続可能な社会を作っていくために自分自身に何ができるか、当事者意識を持って考えてほしい」と呼びかけた。

 続いて、同校の環境学習に長年協力してきた和歌山大学システム工学部の養父志乃夫(やぶしのぶ)教授が「学ぼう 発見しよう 里山づくり」のタイトルで講義を行った。養父教授は、日本の低い食料自給率、増え続ける絶滅危惧種、気候変動・環境破壊など、現代社会が抱える数々の問題を説明したあと、「今のままのライフスタイルはいつまでも続けられない」と指摘。さらに、未来を担う生徒たちに「君たちが探究心を持つことが問題の解決につながるかもしれない」と語りかけた。

 また、同校の里山に触れ、「この豊かな自然環境は、生徒、教員が環境保全に努めて作り上げてきたもの。この本物の自然環境から、自身の生活とのつながりを考えたり、科学への興味を引き出したりするきっかけとなる多くの発見や学びが得られます」と養父教授は話した。そして、「地球の自然環境と、そこにいる生物によって私たちは生かされています。だからこそ壊す一方ではなく、それらを持続可能な状態で守っていかなければなりません。今日を含めた里山での体験を通じて探究心の扉を開け、これからもこの地球上で生きていくためにどうしていったらいいのか、学び考えてほしい」と訴えかけた。

自然と触れ合うことで可能となる幅広い学び

昆虫プログラムを学ぶ生徒たち
昆虫プログラムを学ぶ生徒たち
生徒がシイタケの菌を植え付けたほだ木
生徒がシイタケの菌を植え付けたほだ木

 講義のあと、生徒たちは、生物観察、ため池の土砂除去、水路の整備などの実地体験を行う予定だったが、この日はあいにくの雨のため中止された。代わりに屋内でのプログラムに切り替え、DVDによる里山学習や、日本ビオトープ管理士会京奈和支部から招いた具志堅陽子先生、小泉昭男先生による昆虫プログラムが行われた。

 昆虫プログラムでは、まずチョウが種類によって異なる植物を餌とすることを学習した。さらに、いろいろな植物の匂いのする液体が入ったビンが用意され、生徒たちは、匂いを嗅いでどの植物かを当てるゲームを行った。具志堅先生は、「昔の人は植物の匂いを嗅いだりして何に使えるか考え、さまざまな用途に利用してきました。皆さんも里山で実際に自然と触れ合ってみてください」と語った。

 保護者は屋内プログラムの学習の様子を見守ったが、里山見学を希望するグループには案内も行われた。稲が植えられた棚田、地下探査によって掘り当てた水脈、シイタケ栽培のほだ場などを見て回った保護者たちは、「思っていた以上に豊かな自然があって驚きました。自然がいっぱいで開放感があり、のびのびと過ごせそうですね」「生物や化学だけではなく社会科なども含め、科目の枠を超えた幅広い学習ができると分かりました」などと感想を話した。

里山に学んだ卒業生が後輩たちのサポート役に

 環境研修には、同校の卒業生で構成される「矢田の丘里山支援チーム」のメンバーも参加していた。メンバーは校内での研修や実習の際にティーチングアシスタント(TA)を務めるほか、里山の管理・維持活動などにも携わっていて、今回は、里山の案内役やプログラムのアシスタントとして活躍した。

TAとして活躍した卒業生の蕪木さん(左)と吉田さん
TAとして活躍した卒業生の蕪木さん(左)と吉田さん

 メンバーの一人である蕪木(かぶらぎ)史弦(しげん)さんは現在、大阪府立大学生命環境科学域で植物の研究を行っている。「中学、高校時には科学部に所属していました。毎日のように里山に入って調査し、積み重ねたデータから、希少生物であるニホンアカガエルの生態の一端を解き明かすことができました。スーパーサイエンスハイスクールの全国発表会に出場する機会にも恵まれ、調査・研究・発表という研究者に必要なスキルを養えたことは大学での学びにも役立っています」と話す。

 TAとして母校の里山研修などの活動を続けるのは、持続可能な循環型の社会システムを構築することの大切さを在学中に学び、それを実現する活動に携わりたいと考えたからだという。「目標を実現するには、自分たちだけで活動するのではなく、後輩や地域の人も含めて関わりを広げていくことが必要だと思っています」

 蕪木さんの同級生で、同じくメンバーの吉田周平さんは、近畿大学農学部環境管理学科に通っている。吉田さんは、生物について学べる環境を求めて高校から入学したという。「多様な自然環境のある里山にはさまざまな種類のキノコが生息し、キノコが好きな私にとっては毎日訪れても飽きない場所でした」と高校時代を振り返る。

 大学では、キノコの研究を通じて、人と自然の関わりについて考察しており、大学卒業後は公務員として森林保全に携わりたいとの目標を持っている。「里山の自然の中には、知らないこと、驚かされることがたくさんあります。研究対象に事欠かないばかりか、研究環境も整っています。恵まれた学習環境があることに気付き、この環境を最大限に生かして、たくさんの学びを得てほしいと思います」と、後輩たちへの期待を語った。

 (文・写真:溝口葉子)

 奈良学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載・複製を禁じます
1635330 0 奈良学園中学校・高等学校 2020/11/24 06:00:00 2020/11/24 06:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201118-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)