【特集】生徒を主体的に変えるグローバルマインド養成プログラム…奈良学園登美ヶ丘

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 奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校(奈良市)は今年度、高1生を対象に、国際社会に対応できるマインドを育てる民間教育プログラムを導入した。ネイティブの講師に指導を受けながら、身の回りから家族、地域、世界へと拡大するトピックを、主に英語で考え、論じ合う中で、多様性を理解し、コミュニケーション力を高める。同校は今後、中3から高2まで対象を広げる考えだ。プログラム導入の背景などを聞き、授業風景を紹介する。

言語の習得よりもマインドの養成にウェート

グローバル社会で活躍するためのマインド養成の重要性について語る深石教諭
グローバル社会で活躍するためのマインド養成の重要性について語る深石教諭

 同校は、これまでグローバルに活躍できる人材の育成を目指し、英会話の授業や英語スピーチコンテスト、高2生全員参加のオーストラリア語学研修など、さまざまな取り組みをしてきた。その中で、「本当に重要なのは、言語習得よりもマインドの養成なのではないかと考えるようになりました」と、国際交流部長の深石芳弘教諭は話す。「グローバルな社会において海外の優秀な人材と渡り合うには、自分とは異なる文化や価値観を受容し、他者を尊重しつつも自分の意見を主張できる、そんなマインドが必要なのではないでしょうか」

 新たな国際教育について模索する中で知ったのが、国際教育研修企業「アイエスエイ」が提供している「グローバルコンピテンスプログラム」だったという。「実際に海外に行かなくても、国内にいながらグローバルなマインドを醸成できるプログラムであるという点が導入の決め手です。希望者や選ばれた生徒だけでなく学年全体で取り組めて、しかも数か月にわたって持続的に学び続けることで、生徒に深い学びが与えられると判断しました」

 このプログラムには七つのユニットがあり、それぞれ4~6コマの授業が設定されている。身の回りから家族、地域、世界へとステップアップしていくトピックを扱っていて、トピックごとに設定された課題について、一人で考え、さらにクラスメートと考えを共有していく。こうした取り組みを通して多角的・論理的に思考する方法や、コミュニケーションスキルが身に付き、段階的にグローバルなマインドを養っていけるように設計されているという。

10年後の教師として学校の改善を考える

「授業を重ねるごとに生徒のコミュニケーションスキルが向上していると感じます」と言うギル先生
「授業を重ねるごとに生徒のコミュニケーションスキルが向上していると感じます」と言うギル先生

 このプログラムは年間30コマのカリキュラムで構成されていて、同社から派遣されるネイティブの講師に指導を受けて、高1生が週1回のペースで学んでいる。取材に訪れた10月26日は、講師のジョン・ギル先生と同校の英語教師のチームティーチングで4番目のユニットに取り組んでいた。

 この日のトピックは、自分が10年後に多様な生徒が通う学校の教員になったと仮定して、学校をどのように改善していくかというものだ。生徒たちは、スクールユニホーム、スクールランチ、クラスルームの三つの中から一つを選び、具体的な改善のアイデアを考えていく。まずは個人で考え、考えたアイデアについて他の生徒から意見を聞き、グループで意見を持ち寄って一つのアイデアにまとめていく。生徒たちは、ギル先生らのアドバイスを受けながら活発に意見交換をしていた。このユニットの最終段階では、グラフィックデザインツールのアプリを使用し、アイデアを形にしてプレゼンテーションを行う計画だ。

 同校は最難関国公立大・医学部を目指す1類と、難関国公立大・私立大を目指す2類のコース制を取っている。1類の村上裕真君は、「スクールユニホームにズボンを選択したことに対し、周りから否定的な反応をされている女生徒というキャラクターを設定し、新しいユニホームの形を考えました」と言う。「男女関係なくありのままの姿を見せられるデザインがいいという考えにたどり着き、デザインを検討しています」

 同じくスクールユニホームをテーマに選んだ2類の阪本 早香(さやか) さんは、「ぽっちゃり体形で身長が低く、体に合わないユニホームを着ている生徒が、服にアレンジを加えられないことにも不満を持っているという設定で考えました」と話す。「今は、人それぞれに合う着こなしができるバリエーション豊富なデザインを考えています。グループで意見交換をしていると、宗教に配慮したデザインについて意見が出るなど、自分が思いつかない気付きやアイデアが出てくるのが面白く、勉強になります」

生徒の意識が主体的、積極的に変化

10年後の学校の改善をテーマに活発に意見を交換する生徒たち
10年後の学校の改善をテーマに活発に意見を交換する生徒たち

 授業はネイティブの講師を中心に英語で進められ、使われるテキストも全文英語で書かれている。生徒もテキストへの書き込みや意見発表は原則的に英語で行うが、深石教諭は「このプログラムは、英語を学ぶ授業ではありません」と強調する。「英語の使用を推奨していますが、日本語の使用も禁じていません。英語が苦手な生徒をサポートするため、ネイティブの教員と本校の英語教員の2人体制で授業を行っています」

 英語に固執しない理由について深石教諭は、このプログラムは課題について考えを深める中で生徒が自ら学んでいくという点に目的があるからだという。「生徒が主体的に考え、発話することを重視しています。例えば、『多様性について理解しましょう』と働きかけるのではなく、課題に取り組む中で、多様性を意識した考えに生徒自身がたどり着けるように授業は進められています。また、考えを深めるプロセスを大事にしていることから、出した答えの良しあしを判断することもしていません」

 こうした狙いで授業を進めているギル先生も、「回数を重ねるごとに、生徒の発言が増えています。自分の考えを発言する経験から、自信が付いてきたのでしょう。コミュニケーションスキルも向上していると感じ、うれしく思っています」と手応えを話す。

グループでまとめた意見をプレゼンテーションする生徒たち
グループでまとめた意見をプレゼンテーションする生徒たち

 生徒の感想を聞くと、村上君は「男女関係なく着用できるユニホームを考える中で、性別にとらわれない価値観を広く受け入れられるようになりました」と言う。阪本さんも「私が思っていた以上に、世界の中では価値観の違いがあることが分かりました。また、世界にはさまざまな課題があります。これらの課題に対し、誰かに言われて行動するのではなく、自ら積極的に関わっていきたいと考えるようになりました。授業で意見を話す機会が多かったから、そのように変われたのだと思っています」と話した。

 深石教諭は「プログラムを通じて、生徒の意識が自然と変化していることが感じられ、喜ばしく思っています」と言う。「その変化は生徒それぞれでかまいません。グローバルマインドの育成に向け、少しでも生徒の内面が変わってくれればと願っています」。ギル先生も「身近にいる家族や友人に限らず、自分が知らない人にも思いやりと尊敬を持てる人になってほしい」と話す。

 プログラムは現在、高1生のみが受講しているが、来年度は高1生と高2生に対象を拡大する。将来的には中3から高2までの3年間を通してのプログラムとする計画だという。「継続して複数年学ぶことで、より一層生徒のグローバル意識の定着を図ることが狙いです。3年間でどのように生徒が変化していくのかが楽しみです」と深石教諭は期待を込めた。

 (文・写真:溝口葉子 一部写真提供:奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校)

 奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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