「WOW」と喜びの声上がる手作り体験授業…立命館宇治

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 立命館宇治中学校・高等学校(京都府宇治市)は、中学生を対象として自由参加型のさまざまな体験学習「WOWプログラム」を実施している。生徒たちに学ぶ喜びや楽しみを体験させようと2017年度に始まったこのプログラムは、すでに42種類に上る。入試センター長の木越貴之教諭やプログラム作りに携わってきた先生たちに、具体的な内容やこの取り組みを通しての生徒たちの成長ぶりを聞いた。

中学教員全員で練り上げた42プログラムを実施

WOWプログラムを作ってきた福島賢教諭(左)と福原教恵教諭
WOWプログラムを作ってきた福島賢教諭(左)と福原教恵教諭

 英語で驚きや喜びを表す「WOW」を冠したこのプログラムは、中学生向けに、同校の先生たちが用意したさまざまな自由参加型の課外授業プログラムの総称だ。通常の授業では経験できない「特徴ある学び」を心がけており、土曜日や平日の放課後、試験の最終日、長期休暇など、生徒が参加しやすい時期に希望者を募って行っている。

 入試センター長の木越貴之教諭は「本校では、約8割の生徒が立命館大学および立命館アジア太平洋大学(APU)へ内部進学します。ですから、大学入試対策に終始した学習ではなく、学ぶ喜びや楽しみ、知的好奇心を原動力にした、答えのない問いに向き合う探究心の育成を重視しています」とプログラムの趣旨を説明する。

 木越教諭によると「WOWプログラム」は、教員によるオリジナルの企画で、17年4月に、中学の国語、数学、理科、社会、英語、保健体育、音楽の教員7人が代表者会議を組織し、毎週、議論を重ねて作り上げていったという。

 同年10月に実行に移されてから、これまで1年半の間に42のプログラムが実施されている。これらのプログラムには「教科横断」「地域連携」「大学との連携」「ホンモノに触れる」「附属校間交流」「生徒同士の学び」などの狙いがあるという。

 たとえば「地上絵を描いてドローンで撮ろう!」は、ナスカの地上絵をグラウンドに再現するプログラムで、数学と美術の学びが「教科横断」で試される。「源氏物語をめぐる宇治の旅」は、生徒たちが学校を飛び出し、宇治市の観光地のガイドや街の人と出会って「地域連携」を体験するプログラムだ。

「農家民泊」では、農家の人と一緒にピザ作りにも挑戦した
「農家民泊」では、農家の人と一緒にピザ作りにも挑戦した
立命館アジア太平洋大学を見学する生徒たち
立命館アジア太平洋大学を見学する生徒たち

 「WOWプログラム」は手作りだけに、先生たちも思い入れは深い。数多いプログラムの中から印象深かったものを紹介してもらった。

 代表者会議メンバーである音楽の福原教恵教諭は、2018年3月に実施した「農家民泊」を挙げる。1、2年生の20人が参加し、岡山県加賀郡の農家に宿泊して農業を体験する内容で、宿泊を伴う初めてのプログラムとなった。

 「農家に泊まり、初めて会う大人とコミュニケーションを取らなければなりません。最初はぎこちないのですが、手伝いをきっかけに対話をして関係が深まっていきます。知識を獲得するだけでなく、体験を通して生徒たちは初対面の方との関係構築を学んでいました」と、生徒の成長を振り返る。

 同校は中3生全員を対象に、オーストラリアで2週間、ホームステイを中心とした語学研修を行う。「知らない家庭にお世話になるとき、最初はぎこちなくても通じ合えるという体験をしておくと海外に出ても力になります」と、語学研修へのステップとして役立てたい考えだ。

 福原教諭がもう一つ取り上げたのは「中学APU研修」というプログラム。中学2、3年の20人が参加し、APUのキャンパスを見学して留学生と交流した。

 同校では高校進学時に、日本語での授業が中心の「インテグレイテッド・グローバルコース」と、英語での授業比率が高く、1年間の留学を行う「イマージョンコース」、さらに帰国子女の受け入れも多く、海外大学を目指す「国際バカロレアコース」の3コースに分かれる。このプログラムの受講者の中には、イマージョン・コースを希望する生徒がいるという。

 「学生の半数を留学生が占め、多様性あふれるキャンパスを実際に目にして刺激を受けるのでしょう」と福原教諭は話す。

北海道でロケット開発や生命を考える

北海道理科研修では、ロケット製作と打ち上げを体験した
北海道理科研修では、ロケット製作と打ち上げを体験した

 同じく代表者会議メンバーである理科の福島賢教諭は、「夢と挑戦する勇気がふくらむ北海道理科研修」を挙げた。「理科好き、宇宙好きの生徒の一生を変えるイベントを目指して考案した」という自信のプログラムだ。希望者が募集定員の35人を上回ったが、訪問先と調整してなんとか希望者全員が参加できたという。

 3月27日から29日の2泊3日で、まず、池井戸潤の小説「下町ロケット」を地で行くような北海道赤平市の町工場「植松電機」を訪問。ロケットエンジンの燃焼実験を見学したうえ、ワークショップでモデルロケットを製作し、実際に打ち上げた。北海道大学も訪問し、植松電機と共同研究を行う工学部の永田晴紀教授にロケットに関する講義を受けたという。

 「永田教授からは、実験を重ね、新技術を開発する話とともに、『失敗をたくさんしよう、失敗からどう学ぶかが大切だ』と生徒にアドバイスをいただきました。私からも生徒に、『失敗を恐れずどんどん質問しよう』と声がけし、後押ししたこともあって物おじせず、とても良いやりとりができました」と福島教諭は笑顔で話す。

 講義では、エンジンの仕組みについて質問する生徒もいれば、CASCADED MULTISTAGE IMPINGING-JET(縦列多段衝突噴流)型ハイブリッドロケットモーターの略称CAMUIは、アイヌ語の「カムイ」と関係があるのかどうか尋ねた生徒もいたという。

 このほか、旭川市科学館を訪れて、学芸員にブラックホールや宇宙の起源をテーマとする講話を聴いたり、同市内の旭山動物園のバックヤードツアーに参加し、生命について考えたりした。

 「失敗とはなんだろう、生命とはなんだろうという問いと向き合うことは、普段、学校で勉強している『知の理論(TOK)』にも共通しています」と福島教諭は話す。「知の理論」とは国際バカロレアのコア科目で、同校では、批判的思考を培い、自分なりの物の見方や、他人との違いを自覚できるよう促すカリキュラムとして学ばせているそうだ。「今回のプログラムはきっと、新しい経験を通じ、自分と向き合う時間になったと思います」

校外学習にも「WOWプログラム」の考えを反映

 この1年半の取り組みから木越教諭は、学年の垣根を取り払い、興味関心に従って活動する「WOWプログラム」には、生徒の積極性を引き出す効果があることを確かめた。

 そこで、今までは学年ごとに行ってきた校外学習にも、「WOWプログラム」の方式を応用することとし、2、3年生の校外学習では、昨春から学年の枠にとらわれずに複数のプログラムから選択できるようにした。

 今年は、アスレチック体験をしながらチームビルディングを学ぶ「アドベンチャー」、紅茶の専門家に学ぶ「ブレンドティ作り」、ウェディングプランナーに学ぶ「テーブルマナー講座」、大阪・鶴橋での「コリアンタウン見学とキムチ作り」のほか、「関西テレビ」「関西空港」「本田技研工業株式会社」の3社に協力を得ての企業訪問、伝統の技に触れ、学ぶ「絞り染め体験」「落語鑑賞」を行う。

 「WOWプログラム」自体もだんだん進化している。同校には40人強の教員がおり、一人一人が企画を考えるよう取り組んでいる。3年目を迎える今年度、すでに人気プログラムとなり、何度も採用されているものもあれば、生徒たちの反響を受けて企画内容をブラッシュアップしたものもあるという。

 「中学生のうちに楽しいことをたくさん経験させてあげたい」と木越教諭は語る。さまざまな経験を通して自らの関心や適性を知ることは、生徒たちの将来作りにきっと役立つことだろう。

 (文・写真:水崎真智子 一部写真:立命館宇治中学校・高等学校提供)

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644175 0 立命館宇治中学校・高等学校 2019/06/21 05:21:00 2019/06/21 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190618-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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