決めるのは自分、熱意と行動力で海外へ飛び出せ…自修館

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 自修館中等教育学校(神奈川県伊勢原市)で、「少年少女国連大使」への参加を中心に海外活動や社会貢献に対する生徒たちの関心が高まっている。1999年の開校当初からグローバル人材の育成を意識し、さまざまな海外体験の機会を用意してきた同校の取り組みが実を結んだ形だ。「大使」に選抜された生徒らの活動ぶりを紹介する。

生徒たちが参加している「少年少女国連大使」の活動
生徒たちが参加している「少年少女国連大使」の活動

 「本校は開校以来『21世紀が求める人間性豊かでグローバルな人材を創出する』という教育目標を掲げ、海外の研修旅行や短期留学など、異文化に触れる活動を採り入れてきました」と、入試広報室長の佐藤信教諭は語る。

 このため開校当時から長期留学する生徒が年間1、2人はいたというが、近年、学校が用意している海外プログラム以外にも、高校模擬国連大会や、核兵器の廃絶を訴える「高校生平和大使」など、さまざまな機会をとらえて海外活動に参加する積極的な傾向が出てきたという。

 佐藤教諭によると、生徒たちに海外への関心が高まったのは、4年ほど前に有志生徒が、「日本青年会議所」の主催する「少年少女国連大使」事業に参加したことがきっかけだ。

 「少年少女国連大使」は、国際NGO「国際青年会議所」に加盟する「日本青年会議所」が、毎年全国の中1~高3から募集した約30人の男女をニューヨークの国連本部やジュネーブの国連欧州本部などに派遣し、研修を受けさせている事業。国際社会の諸課題を知ってもらい、次世代の民間外交の担い手を養成することを狙いとしている。

 自修館からは昨年、今年と続いて生徒が「大使」に選ばれた。

先輩のプレゼンに憧れて「大使」に挑戦

 昨年度は、5年生の矢野真彩さんが「大使」に選ばれた。先輩の「大使」としての活動報告プレゼンテーションを見て「自分も」と憧れ、2度目のチャレンジで「大使」に選ばれた。

 矢野さんは昨年7月23日から8月1日にかけて、ニューヨークとマニラを訪問した。前半のニューヨーク研修では、在ニューヨーク日本総領事に表敬訪問を行い、国連日本政府代表部で「SDGs(持続可能な開発目標)」についての研修を受講。その中で「水と衛生」というテーマで世界の現状や対策について学んだ。

 さらに、世界各国の青年会議所メンバーの集い「JCIグローバルパートナーシップサミット」の場で討論されているジェンダー問題について、他の参加生徒とともに自分の考えを英語でプレゼンテーションした。また、再び国連日本政府代表部を訪問して、研修を受けた「水と衛生」に関する「大使」となることを宣言するプレゼンテーションも行った。

 矢野さんはもともと水資源について問題意識を持っていたという。3年生の夏に自修館の「オーストラリア短期研修」に参加した際、ホームステイ先で「水の節約のため、シャワーは5~10分ほどにしてね」と言われ、「先進国でも水不足の問題があるのか」と驚いたそうだ。その経験から、国連日本政府代表部でのプレゼンテーションでは「バーチャルウォーター(輸入する農・畜産物を自国で生産すると仮定した場合に要する水の量)の知識をもっと広めるべき」という提案を行った。

 後半のマニラ研修では、スラム街のスモーキーマウンテンや孤児院などを視察し、帰国後はこれらの経験を踏まえ、地元のライオンズクラブや出身小学校、地域イベントなどで「SDGs」についての啓発活動を行った。

 これらの研修旅行について矢野さんは、「英会話は小学校の頃から習っており、ある程度自信がありました。ただ、人前でのスピーチや、話を要領よくまとめるのが苦手です。一緒に行った仲間に刺激を受け、何とか頑張れました。前より活動的にもなれたし、自分のカラを少し破れた気がします」と振り返った。

 さらに、「父が医療関連の仕事なので、漠然と似たような将来を想像していましたが、途上国の問題を目の当たりにして、国際機関で働く医者として世界の子供たちを助けたいと思うようになりました」と言う。自分の将来像がはっきり見えてきたようだ。

「大使」落選の悔しさをバネに社会貢献サークルを設立

フェアトレード販売会を行う「自修館インターアクトクラブ」のメンバー
フェアトレード販売会を行う「自修館インターアクトクラブ」のメンバー

 今年、「大使」に選抜された3年の加藤陽菜さんは、2年の時にも先生の勧めで応募したが、自分のテーマが定まっていなかったため落選した苦い経験がある。

 「このまま何もせずじまいでは納得がいかない」という思いから学校で、国際理解と社会奉仕を活動目的とするサークル「自修館インターアクトクラブ」を作った。友達に声をかけたり、ポスターでアピールしたりしてようやく9人のメンバーを集め、担任の伊藤晋教諭に顧問をお願いした。現在は、ボランティア募集サイトなどで情報を集め、NPOをサポートするなどの活動を意欲的に行っている。

 その活動を通して加藤さんが大きな手応えを感じたのが、フェアトレード製品のバザーだという。国際協力NGO「わかちあいプロジェクト」からコーヒーや紅茶、チョコ、スパイスなどの商品を仕入れ、昨年度末の保護者会で販売した。売れるかどうか直前まで不安だったそうだが、「なんと午前中に完売。数学が得意な子は会計、絵が得意な子は黒板アート制作など得意分野で活躍してもらい、チームで一つのことを作り上げる面白さを学びました。サークルのメンバーが増えるきっかけにもなり、運営の自信が付きました」

 加藤さんは今春、「大使」に応募した際もフェアトレードにテーマを絞り、作文と動画で自己アピールして見事、選ばれた。今年、スイスやスウェーデンを訪問する。「将来は、フェアトレードのブランドを作って起業ができたらと思っています」と夢を膨らませている。

「その活動で何がやりたいの」

「自修館インターアクトクラブ」の顧問を務める伊藤晋教諭
「自修館インターアクトクラブ」の顧問を務める伊藤晋教諭

 「自修館インターアクトクラブ」の顧問を務める伊藤教諭は、生徒たちの行動力の源に、同校が教育の柱とする「フィールドワーク」や自由テーマによる「探究」活動の体験があると見ている。

 1年次は地元伊勢原の各所を訪ねて歴史や自然、産業を学ぶ。3年次の関西フィールドワークでは京都と奈良で伝統文化を見て歩くとともに、企業や大学を訪問する。5年次で行う約1週間の海外フィールドワークでは、主要観光地や大学を訪問、ホームステイを通して海外の文化や生活を体験する。

 「フィールドワークの前には時間をかけて事前学習を行いますが、本物を見るとやはり全然違う。そのカルチャーショックがさらなる知への刺激になります。また『探究』活動では自分のテーマに沿って研究機関や企業などに自ら訪問取材を行います。こうした経験が行動力につながるのでは」と伊藤教諭は話す。

 近年は、生徒の熱意や行動力に押される形で海外留学・交流の機会を増やしているという。矢野さんが参加した2週間のオーストラリア短期研修や、ニュージーランドの姉妹校とのターム留学制度、文部科学省による留学プログラム「トビタテ!留学JAPAN」の紹介なども行っている。

 こうした海外活動などについて要望を出してくる生徒たちに、伊藤教諭は「それを通して君は何がやりたいの」と問いかけることにしている。

 「学校としては全力でサポートしますが、ゴールを決めるのは自分。敷かれたレールに乗っかるのではなく、こちらが思いもつかないことをやってもらいたい、という気持ちもあります。まずは『自分が何も知らなかった』ことを知り、どうしたら世の中の役に立てるのか考える人になってほしい」

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:自修館中等教育学校)

 自修館中等教育学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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812798 0 自修館中等教育学校 2019/09/26 05:21:00 2019/09/26 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190925-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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