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【特集】「社会との関わり」を問う「探究」を成長のステップに…自修館

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 自修館中等教育学校(神奈川県伊勢原市)は今年度、開校当初からの必修授業「探究」を、「社会との関わり」を中心軸とするプログラムへと刷新した。授業の対象もこれまでの1~4年生から全学年に拡大し、将来「社会を良い方向へ導く人」になれる基礎を身に付けさせたい考えだ。この新しいプログラムと、生徒たちの活動の舞台としてリニューアルされた図書館について紹介する。

学校設立当初から「探究」を必修科目に

「社会との関わり」を意識した新しい「探究」について語る海老名教諭
「社会との関わり」を意識した新しい「探究」について語る海老名教諭

 自修館が開校したのは1999年。「総合的な学習の時間」は、その前年に告示された学習指導要領に盛り込まれた。同校はこの新しい教育の機運を受けて開校当初から「探究(総合学習)」を必修科目として教育の柱に据えたという。

 「探究」を担当している海老名豊昭教諭によると、「探究」は1年生から4年生を対象とし、校外の自然環境を調査したり、大学・研究施設などを訪問して取材したりする「フィールドワーク」と、教員や生徒間の対話を通して思考を深めるゼミ形式をベースとしてきた。

 当初のプログラムでは、1年から3年までの学年縦割りで少人数ゼミを作り、「歴史」「生物」「恐竜」など生徒の興味を引くテーマで学び、4年では生徒個人が自分で決めたテーマに沿って論文を執筆する内容だったという。その後、プレゼンテーションの基礎を習得させるために、1年ではクラス単位の調べ学習を行うように改変し、2、3年でゼミ活動、4年で論文という構成にして昨年まで続いてきた。

 その活動は一定の成果を上げてきた。海老名教諭は「生徒からは『調べた結果を人に伝えたい気持ちが生まれた』『興味のあることの探究を通して自分の核ができ、自信につながった』など、成長がうかがえる声が聞かれました」と話す。「進学後も役立っているようです。研究活動の基礎が身に付いているので、大学2、3年で行うレベルの活動に1年から取り組むことができます。タイムマシンについて探究した生徒が物理学の研究職に進んだり、犬の飼い方を探究した生徒が獣医師になったり、進路に結びついた例も少なくありません」

「社会との関わり」を意識した新しい「探究」

 ただ、これまでのプログラムには課題があったという。成果の個人差が大きかったことだ。全体をレベルアップさせるためには、生徒一人一人がもっと意欲を持って取り組めるようにする必要があった。

 そこで、海老名教諭ら「探究」の担当教諭たちは今回のリニューアルで、「社会との関わり」という方向性を定めた。フィールドワークと少人数のゼミ形式という手法は生かしながらも、「『自分は社会と深く関わる存在であり、自分の活動が社会を変える可能性もある』という意識を持つことで、より自律的に取り組めると考えた」という。また、「その意識が卒業後にもつながるように」との願いを込めて、5、6年にも「探究」活動を拡大した。

 この新しい探究プログラムは、「変化と共存を志向し、社会の課題を自ら引き受ける探究者」の育成を目標としている。同校では、その英訳の頭文字から、新しい探究プログラムを「C-AIR(シー・エア)プログラム」と呼んでいる。

 1年と2年の活動では、まず「社会の見方を知る」を目標に、地元の市役所や研究所、大学などの協力を得て、課題を出してもらい、グループ学習を通して解決法を考えていく。

伊勢原市役所で取材をする中学1年生
伊勢原市役所で取材をする中学1年生

 1年では人文・社会系の分野に取り組む。伊勢原市に取材し、都市政策課からは「空き家の多い街の活性化」、商工観光課からは「地元・大山の観光客増加」などの課題をもらって研究中だ。2年では理工・生物系の分野にスポットを当てる。神奈川県自然環境保全センターから「丹沢のブナ林再生保全」、横浜薬科大学から「人とウイルスとの安全な共存への施策」などの課題をもらっているという。

 3年、4年は一歩進んで「社会とつながる」が活動目標となる。「言語・文学」「地理・歴史学」「数理科学」「物理学」など12分野に再編したゼミに分かれ、個人で設定したテーマで探究活動を行う。3年では、先輩たちが残した「探究修論」などを調べ、自分のテーマと社会とのかかわりを考えながら研究の方向性を探る。そのうえで4年では、最終的に社会への提案につながるようにテーマの考察を進め、8000字から1万字の学術論文を執筆する。この間、大学や研究機関、企業などへのフィールドワークも随時行う。

 5年ではゼミ形式から離れ、自由テーマで探究活動を行う。活動目標もさらに進んで「社会に働きかける」となり、テーマを踏まえた社会活動の実践や、研究を基にした社会への提言発表などを目指す。活動の形は単独でもグループでもよく、発表形式も論文、動画、活動報告など自由だ。「異なる研究分野の生徒によるコラボレーションも期待しています」と海老名教諭は話す。

探究文化発表会で個人発表する中学3年生
探究文化発表会で個人発表する中学3年生

 選択科目となる6年では、「社会の今後を見通す」を活動目標に個人研究を行う予定だ。「社会が今後どう変化するか、また自分の将来がどうなるかという観点から、大学などでの学習・研究につながる活動を行ってほしいと思っています」

 今年度は1、2、3年に「C-AIRプログラム」を導入しており、順次上の学年へ広げていく。活動の成果は、10月の行事「探究文化発表会・自修祭」を始め、いくつかの機会で発表していく予定だ。

 「従来の学校教育は、社会と少なからぬギャップがありました。これからは10代のうちから社会と結びつく意識を持ち、変化し続ける社会の課題を見つけ、考え、周囲を巻き込み、社会を良い方向へ導く人が必要です。そんな成長のステップに『C-AIR』がなれればいいと思っています」と海老名教諭は抱負を語った。

生徒が「活躍できる場所」として刷新された図書館

リニューアルされ「com+com」と名付けられた図書館
リニューアルされ「com+com」と名付けられた図書館

 「C-AIRプログラム」を本格化させるに先立って同校は、「探究」活動を後押ししようと2018年に、学校設立20周年事業の一環として図書館をリニューアルし、「com+com(コムコム)」と名付けた。

「生徒がくつろいで交流できるサードプレイスを目指しました」と図書館について話す勝田教諭
「生徒がくつろいで交流できるサードプレイスを目指しました」と図書館について話す勝田教諭

 司書の勝田理香教諭は「『com』は、コミュニケーション、カンパニー、コンビネーション、コミュニティーなどの接頭語で『共に』とか『強く』という意味です。静かに過ごすのではなく、生徒がくつろいで交流できるサードプレイスを目指しました」と話す。

 広さは従来の5倍となり、蔵書が充実しただけでなく、生徒へのアンケートを受けて、自主活動や交流を後押しするさまざまな機能を持たせたのが特徴だ。

 授業やグループワークに使えるオープンスペース「ラーニングコモンズ」があり、教員の授業準備や生徒の打ち合わせに使える大テーブル付きの部屋「ラーニングラボ」も新設した。また、「活躍できる場所が欲しい」という生徒の要望に応え、イベントスペースも作った。ここには展示品を置くテーブルや掲示板、ホワイトボードなどが備わっている。「昆虫や鉄道模型、文学作品をモチーフにした創作フィギュアなど、生徒が趣味の世界を披露しています。もとよりオタク大歓迎の学校ですし、探究活動でプレゼン力も磨いているので面白いです。同好の仲間と出会う機会にもなっています」

 同校を取材した6月3日は、新型コロナ感染への対策で、分散登校と自宅学習が続いていた。「C-AIR」で予定していた1、2年生のフィールドワークは延期され、生徒たちは市役所や研究所などからの課題を動画で受け取ってアイデアを練っていた。3年生は所属ゼミが決定して、ようやく探究活動の指導が始まったところだ。

 それでも新しい「探究」のプログラムはすでに始動し、活動の基地となる図書館も刷新されて生徒たちを待っている。皆で顔を合わせて「探究」に夢中になれる日はもうすぐだ。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

 自修館中等教育学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1338848 0 自修館中等教育学校 2020/07/15 05:21:00 2020/10/21 16:13:31 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200713-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

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