【特集】教科になった「探究」学習で自己肯定感を養う…追手門学院

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 追手門学院中学校・高等学校(大阪府茨木市)は今年度、中学、高校で「探究」を正式な教科とした。昨年は、すでに指導方法を吟味した本格的な探究学習を展開しただけでなく、アメリカの実験的な私立中学校「ミレニアムスクール」と日本で初めての提携を結び、「探究」学習に新たな推進力を加えた。探究科の教諭らに授業の概要と今後の展望を聞いた。

「学びの型」から入る探究学習

学院の探究教育をけん引する探究科主任の池谷教諭
学院の探究教育をけん引する探究科主任の池谷教諭

 同校は2019年度の1年間、中学高校ともに「総合的な学習の時間」と国語や社会などの時間で探究学習に取り組み、今年度は中学・高校ともに「探究」を週2時間の正式な教科に定めた。

 学習指導要領の改定により高等学校の「総合的な学習の時間」は2022年度から「総合的な探究の時間」に変わることから、一部の高校で「探究」を授業に取り入れ始めているが、中学・高校ともに「探究」を教科とするのは先駆け的な試みとなる。

 この「探究」教育をけん引しているのが探究科主任の池谷陽平たいそん教諭だ。池谷教諭は、以前から公立高校で勤務しながら理想の教育方法を模索した結果、探究学習に着目し、その理論や手法を学んできた。2019年度に同校に赴任して、この年からそれまでの蓄積を「探究」の授業の中で展開してきた。

 池谷教諭によると、探究学習では一般に、例えば「歴史上の人物を1人選んで調べよう」とか、「動植物の中から一つ選んで観察しよう」とかの問いかけから始まる調べ学習のプログラムが多いという。しかし、同校の探究学習では「いきなり調べ学習に入るのでなく、学びの型から学ぶ。それも楽しく学ぶことを重視している」という。

 たとえば探究の初期の授業では、まずクラス全員で「目に見えないもの」を100個挙げるということから始まった。生徒たちは想像を巡らせて、さまざまな意見を出す。生徒同士で相談し合い、他の生徒の意見に刺激を受けながら、なんとか100個を挙げる。今どきの子供らしく、Wi-Fiといった例も挙がったそうだ。

 次に「この100個の中から自分の好きなものを一つ選び、レゴブロックを使って人に伝えていこう」と教員が指示する。すると生徒たちは再び頭をフル回転し、どのブロックを選び、どういう形にするか、その形で「目に見えないもの」が他の人に伝わるのかを必死に考える。実際にブロックを手に取り、手を動かし始め、ときには他の生徒に意見を聞き、議論したりしながら自分の考えを形にしていく。完成したところで今度は、何を考えてどういう形にしたかについて発表を行う。

 この授業を通じて生徒は、探究学習の「型」を学ぶことができ、過程と手法を一通り経験して自信を得る。ここから、さらに複雑な課題や抽象的な課題にも躊躇(ちゅうちょ)なく取り組んでいく姿勢ができるという。

 池谷教諭は、この授業の注意点として「生徒たちには質問や議論の対象が、ブロックであることをしっかり伝えます」と話す。作品に関する議論が、その作品を作った生徒個人についての議論ではないことをはっきりさせておくことによって、なんとなく人格を否定されているような、あるいは否定するような気持ちにならないようにするためだ。この注意を理解することによって、生徒は安心して他の生徒と意見を交わせるのだという。

 「これはマインドセット(物事の見方や考え方)の形成と呼ばれるものです」と池谷教諭は説明する。

 同校の探究科では、このほかにクリティカル・シンキング(批判的思考)、クリエイティブ・シンキング(拡散思考)、コラボレーション、コミュニケーションを加えた四つのスキルセットや、ブレーンストーミング、アート的手法、デザイン思考、ファシリテーションなど、さまざまな手法を駆使して授業を進める考えだ。

 「指導方法を吟味し、本校の生徒にとって必要なものをふさわしい形にして取り入れ、教科としての授業を作っていきます」と池谷教諭は話した。

アメリカのミレニアムスクールと協定

アメリカの「ミレニアムスクール」との提携を推進した阿部教諭
アメリカの「ミレニアムスクール」との提携を推進した阿部教諭

 昨年、同校の「探究」教育を推し進めるうえで、大きな力になる提携が実現した。アメリカのサンフランシスコに2016年に開校した「ミレニアムスクール」との提携だ。この学校は、カリフォルニア大学バークレー校の研究室やスタンフォード大学と連携し、思春期の発達理論に基づき、プログレッシブ教育に取り組んでいる実験的な私立中学校だという。

 英語科の阿部(つかさ)教諭が昨年春、新しい教育を模索する中でこの学校の存在を知り、校内で報告をすると、校長から視察許可が出された。始めに昨年8月に同校を訪問して、実際の教育の取り組みを確認。今年1月に系列校の追手門学院大手前とともに現地を再訪して教育連携協定を結び、日本で初めて教育提携を実現した。

 「本校がお預かりしている中学生は、人間関係が難しい時期にあります。ミレニアムスクールのPersonal(自分は何者なのか)、Social(他者とどう関係を築くのか)、Real world(実生活でどう行動するのか)を前向きに考える学びは、本校の探究と親和性があり、大きな推進力として期待しています」と阿部教諭は話す。

「探究科」の活動を公開している専用サイト「O-DRIVE」
「探究科」の活動を公開している専用サイト「O-DRIVE」

 池谷教諭は、「探究学習の大きな目的の一つは、自己肯定感の醸成です。たとえばテストの点が振るわなくて自分に自信を持てなくなるのは、そこにしか自己評価の基準がないからです。本校では探究学習という種類の異なる学びで自信を付けていきます。困難にも粘り強く立ち向かえるレジリエンスの力も思春期に獲得してほしい」と力強く語った。

 「O-DRIVE」と命名した「探究科」の専用サイトでは、教諭らの提案する学びの成果について広く公開している。昨年完成した新校舎に次いで今年は教科にも新たな学びの場ができた。同校の「探究」学習が今後どういう展開を見せるか注目されるところだ。

 (文・写真:水崎真智子 一部写真提供:追手門学院中学校・高等学校)

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