「学び合い」通してクラス全員で課題達成…追手門学院大手前

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 追手門学院大手前中学校・高等学校(大阪市)は、中学2年生の数学の授業で、生徒同士が一緒に考え、教え合って学びを深めるアクティブラーニング型授業の「学び合い」を実践している。「クラスの仲間を1人も見捨てず、課題の全員達成」を目指す中で、成績の向上だけでなく集団作りにも役立っているという。教室風景をリポートし、この授業を担当する福島哲也教諭にその特色などを聞いた。

活気あふれる「学び合い」の数学授業

「学び合い」で進められる授業風景
「学び合い」で進められる授業風景

 同校では2年生の数学の授業に『学び合い』というアクティブラーニングの手法を使った「協働型の学び」を実践している。この手法では、教師は授業の冒頭にその日の課題を提示し、後は生徒が自分たちで解法を調べ、考え、教え合ったりする。教師はその間、生徒からの質問を受けたり、ヒントを出したりするだけだ。従来型の授業のように教科書に書かれた授業のポイントを読み上げたり、板書したりということはしないという。

 2学期の期末考査試験が近い昨年11月30日、同校を訪ね、この授業を実践している福島哲也教諭の「図形」に関する授業を見てきた。この日の課題は「平行四辺形の定義と定理を正しく理解しているか」「その定理を使って三角形の合同の証明ができるか」など。試験範囲でもあり、生徒一人一人が自分にとって必要な課題を考えて授業に取り組む。

 最初の10分間は、これまでの授業内容を確認するテストを行い、答案用紙を回収した後、「学び合い」がスタートした。福島教諭が「それでは今から自分が何をするべきか、自分で判断してから始めて下さい」と声をかけた。

 1人で黙々と鉛筆を走らせる生徒がいれば、隣の席同士で互いに相談し、教科書を見ながら問題を解く生徒たちもいる。4、5人でグループになって議論したり、教え合ったりする姿もあった。教卓に用意された解答を見る生徒もいた。

教卓に用意されたファイルで解法を確認する生徒たち
教卓に用意されたファイルで解法を確認する生徒たち

 もちろん、生徒同士では解決できない場合もある。その時は教卓に置いてある解説ファイルを閲覧して解法のヒントを得たり、手を挙げて「先生、ちょっとここ教えて」と質問したりもする。演習問題に取り組む間、教室は生徒たちの声や立ち歩く姿で活気に満ちていた。

 授業終了の5分前に、福島教諭はクラス全員にこう呼びかけた。「定期考査までに自分がやらなければならないことをメモしてください。質問があれば先生に何回でも聞きに来てください。友達に聞く方が分かりやすい人もいるでしょうから、自分にとって一番やりやすい方法で課題解決に取り組みましょう。たった一人の例外もなく全員ができるために、自分ができることを考えながら行動してください」

 生徒たちは、この授業スタイルをどう考えているのか。ペアで課題に取り組んでいた男子生徒は「先生が1人で授業を進める形だと、途中で分からないことがあっても手を挙げて質問しにくい。友だちの方が聞きやすい」と肯定的だ。ペアの相手の男子生徒も「先生の話を聞いているだけでは本当に自分が理解したのかどうか自信がないけれど、友だちに自分の言葉で教えることで自分の弱い点が発見できることもある」と話す。グループで取り組んでいた女子生徒は「やり方は人それぞれだけど、みんなが同じ目標に向かって進んでいるという実感があり、クラスの一体感も高まっているような気がする」と笑顔を見せた。

「教師はすべてを教えない」「生徒が授業の主役」

「分かるとは、人に説明できること」と話す福島教諭
「分かるとは、人に説明できること」と話す福島教諭

 福島教諭が同校に赴任したのは3年前。それ以前は大阪府東大阪市内の公立中学校で教えていたが、「私自身、新人教師時代は『聞け!』『注目!』式の一斉授業をやっていて、次第に『自分が主役のこのやり方』で、生徒全員がついてきているのかと疑問を感じるようになりました」という。「生徒一人一人、分からないところは違う。分かり方も、持っている知識も違う。そんな多様性を前提に考えるならば、一斉講義形式は極めて非効率であることに気が付いたのです」

 授業の工夫を重ねる中で、たどりついた結論は「教師はすべてを教えない」「生徒が授業の主役」ということだった。「ですから、教師である私がある課題を示し、それについて生徒一人一人が自分にとって必要な解決方法を自分で決めるような授業方式に切り替えたのです」

 「1時間ごとの目標は『クラスの仲間を1人も見捨てず、課題の全員達成をみんなで目指していく』。これに尽きます。『分かる』とは『人に説明できること』なのです。一斉授業では友達同士で教え合うことはありません。教師は『分かったつもり』にさせることはできますが、人に解説できるレベルまで分からせたのかどうかは検証できません。一方、『学び合い』は1人も見捨てないことを実現するための授業実践であり、結果として成績が上がります。同時に、仲間のことを互いにおもんぱかることができる集団作りにも大きな教育効果があると思っています」

「独立自彊・社会有為」を体現する人間の育成へ

授業の最後まで、板書は行われなかった
授業の最後まで、板書は行われなかった

 アクティブラーニング型の授業でしばしば問題となるのは、生徒の学力をどう評価するかという点だ。福島教諭は、年5回の定期テストと2週間に1回の確認テストで、理解が定着しているかどうかを確認している。評価の基となるのはこれらのテスト結果が8割、残りの2割は平常点だという。

 「『ノート点』を評価に入れる場合もあるかと思いますが、私はノートを回収しません。教師が板書したことをノートにきちんと書くことより、『ちゃんと理解したか・していないか』を見ます。そのためにこまめに確認テストをしているのです。間違った理解のまま進んでいくことを防ぎ、もしそうであることが発見されたらすぐに修正するためです」

 同校では、数学以外の他の教科でも、「学び合い」の授業を徐々に取り入れている段階だという。英語科の担当で入試広報部長の藤井寿教諭はこう語る。「協働型の学びは理科実験や英語、国語では比較的取り入れやすく、すでに実践している教師もいます。その他の教科でも工夫をすれば導入可能です。例えば探究の授業のオリエンテーションでは『タイムスリップするとしたら縄文・弥生時代どちらで暮らしたい?』というテーマで歴史に取り組んだところ、グループに分かれて活発に情報収集し、議論を交わしながら価値観をすり合わせる姿が見られました。今後はこの新しい学びのスタイルに移行していく方向です」

 また、「学び合い」は、同校の教育理念「独立自彊(じきょう)・社会有為」を体現する人材の育成にもつながっているという。藤井教諭は「目の前の状況を自分で判断し、行動を自分で決断する。そして、その結果には自分で責任を持つことが『独立自彊』の精神です。さらに、自分の学んだことや身に付けたことを他人のため、社会のために役立てることができるのが『社会有為』です。そんな人材を育てるのに、協働型の学びは大きな意義があると思います」と力を込めた。

 (文・写真:櫨本恭子)

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1013510 0 追手門学院大手前中学校・高等学校 2020/01/23 05:23:00 2020/01/23 05:23:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200122-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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