完了しました
駒込中学校高等学校(東京都文京区)は、中高6年間を見通した独自のカリキュラム編成が特徴だ。2018年には中学に「国際先進コース」を設置し、高校の「理系先進コース」「国際教養コース」へと接続する文理融合型のカリキュラムを展開している。特に個性的な理数教育について本田靖教頭に聞くとともに、埼玉大学ステム教育研究センターと共同で行っているSTEM特別講座の様子を紹介する。
もはや点数や偏差値で分ける時代ではない

「人工知能の進化や、それに伴う社会の変化によって現在と大きく異なる未来を生きる子供たちに、今、どのような教育が必要なのか。これは保護者にとって大きな関心事です」と本田靖教頭は指摘する。
偏差値にとらわれず、時代の先を見据えた人間育成のため何ができるかを模索した結果、高校は2017年に「理系先進コース」「国際教養コース」「Sコース」の3コースとし、中学は18年から「国際先進コース」と「本科コース」の2コースとして新たな教育の取り組みをスタートした。
中学の「国際先進コース」は、英検準2級以上を対象者とする少人数の英語取り出し授業や、イマージョン授業、オンライン英会話など英語力を重視したグローバル教育とともに、STEM講座、希望制のプログラミング講座など理数教育を充実させた文理融合のカリキュラムとなっている。
「現在の大学入試制度は文理で特徴が明確なので、これに対応するため高校ではコースを分けています。しかし、大学入試においてもいずれ文理の別はなくなっていくでしょう」と本田教頭は予想する。また、中高いずれのコースも能力別ではないと言う。「点数や偏差値で分ける時代ではありません」
埼玉大学ステム教育研究センターとの共同によるSTEM教育

同校が高校の「理系先進コース」の設立を構想していく段階で、担当教員たちは最初に作成した理数教育カリキュラムが「何か違う」「面白くない」と感じたという。
その違和感から、理系に強く、大学に合格できる学力を付けることだけが目的ではないことを再確認し、未来を生きる子供たちのための理数教育を模索し直した。その過程で知ったのが埼玉大学ステム教育研究センターだった。科学・技術・工学・数学の4領域を総合的に学ぶセンターの
高校の「理系先進コース」では、3年間を通し、センターとの共同授業でSTEM教育を行う。科学・技術・工学・数学で横断的に学んだ知識を生かし、明確な答えのない問題を多角的に考え、解決する力を養うという。
中学生向けには、センターによる年複数回の特別講座が開かれる。本田教頭は「中学は興味・関心を広げる時期。楽しい経験をたくさんしてほしいですね。基礎的なことであっても経験することで、将来、その分野に再び出会うとき、自信を持って取り組めます。中学でできるだけ多くのチャンスを作ってあげたいと思っています」と話す。

期末試験が終わった翌日の7月10日、中学生を対象としたセンターのSTEM特別講座が開かれた。
中学1年の教室では、レゴのパーツとモーターで電気自動車を作る実習が行われていた。2人1組となった生徒たちが、10分間の制限時間内で相談しながらパーツを組み立て、走る車を作っていく。特別講師の野村泰朗・埼玉大学准教授が作った見本を参考に素早く形にしていくペアもいれば、車輪があって、車軸を作ってと、車の定義から議論するペアもいた。林悠惺君は「僕も一から考えていたのですが、先生から『
授業の後半に野村准教授は、自ら参加していたという、オーストラリアのシドニーで7月8日まで行われていたロボカップ世界大会の様子をスクリーンに映して見せた。「国際的なロボットコンテストはたくさんあります。そして挑戦している生徒が世界にはいっぱいいます」と紹介した。さらに、「指示されたことをするのは人よりロボットの方が得意です。それにロボットは疲れません。これからの社会は、どの大学に入学できたかということより、何ができるか、アイデアが出せるかが評価されます」。野村准教授がそう語ると、生徒たちはうなずきながら聞き入っていた。
特別講座を受講した萩原一惺君は「人間とサッカーができるロボットの開発を目指すロボカップのことは知ってはいましたが、今回、詳しく知ることができ、刺激になりました」と話した。
自分のペースで学べる放課後のプログラミング講座

「国際先進コース」の理数教育の特色は、このSTEM特別講座のほか、放課後に実施しているプログラミング講座がある。オンラインのビジュアルプログラミングソフト「スクラッチ」を使い、生徒が自分のペースで学んでいけるようにしている。この「スクラッチ」で迷路脱出ゲームをプログラムしていた中1の林悠惺君は「このソフトは動画の使い方の説明があるので、分かりやすく、しっかり理解しながら次の段階に挑戦していけます」と話す。
同様に「スクラッチ」でアニメーションを作成している中2の上妻美香さんも「今まで習ってきたことを生かして、もっとステップアップしたい」と意欲的だ。
中2の小林詩苑さんは「自分は文系タイプだと思っていたのですが、入学式にペッパーというロボットが迎えてくれて、中1の夏休みの特別講座でペッパーのプログラミングを体験したのをきっかけに自然科学部に入って活動しています。学校で体験したさまざまなことで自分自身を知ることができました」と振り返った。
同校は、次代を見据えたカリキュラムを創造する学校である一方、17世紀に
今春、同校は、従来の教科型試験に加え、英語入試や、公立中高一貫校を想定した適性検査型入試、自己表現型入試、STEM入試を実施した。本田教頭によると、これらの新しい特色入試は、単なる受験改革ではなく、大学入試改革に連動した先取りの対応だという。それぞれの入試の日程や詳細は学校説明会などで知ることができるが、STEM入試、自己表現型入試の体験会も実施される。同校の特色ある教育を知るためにも、受験を考えている小学生や保護者は実際に体験してはどうだろうか。
(文・写真:水崎真智子 写真提供:駒込中学校高等学校)
駒込中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら。