フィールドワーク中心の探究学習で「自覚」を学ぶ…上野学園

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 上野学園中学校・高等学校(東京都台東区)は、地元の上野恩賜公園を活用した「フィールドワーク」を中心にさまざまな探究学習を展開している。グループワークを重視しているのが特徴で、他者との関わり合いの中で自分を知り、建学の精神である「自覚」を身に付けることができるという。中1、2生の「フィールドワーク」を中心に、同校の探究学習について紹介する。

中1、2生は上野公園で毎週フィールドワーク

探究学習の取り組みについて話す探究科主任の竹澤陽介先生
探究学習の取り組みについて話す探究科主任の竹澤陽介先生

 同校は、学校から徒歩10分とほど近い上野恩賜公園の諸施設を生かし、中学1、2年を対象に毎週「フィールドワーク」を実施している。さらに中3では中1、中2での学習経験を生かし、1年がかりで「卒業研究」に取り組んで、リポート提出やスライド発表を行う流れとなっている。

 探究科主任の竹澤陽介先生によると、探究学習が本格的に導入されたきっかけは、創立110周年を迎えた2014年に、教員たちが教育のあり方についてあらためて話し合ったことだ。

 さまざまな意見が出された中で、「探究心や思考力を養うためには何が必要か」「校外学習を増やすべきでは」「近くの上野恩賜公園には、国立科学博物館や上野動物園など好奇心を刺激する施設が多い」「外国人観光客が多いから英会話のトレーニングにもなるはず」などの声もあり、同校の立地を生かした「フィールドワーク」を柱として探究学習を展開することが決まった。

 この「上野公園フィールドワーク」は、中1の理科と中2の社会の授業で週1回行われているアクティブラーニング型授業だ。中1の「フィールドワーク」は、理科教員と担任教諭が担当する「サイエンスプログラム」であり、物事をよく観察して疑問を持つ姿勢を身に付けることが目標となっている。生徒たちはグループに分かれてそれぞれにテーマを決め、上野恩賜公園内に位置する国立科学博物館や上野動物園で観察をしながら疑問の解決に取り組む。

上野動物園でのフィールドワークで、観察して疑問を持つ姿勢を身に付ける
上野動物園でのフィールドワークで、観察して疑問を持つ姿勢を身に付ける

 上野動物園を訪れたあるグループは、「パンダの手指が多いのはどうしてか」と疑問を持ち、「主食の竹をうまくつかんで効率よく食べるためではないか」と仮説を立て、飼育員に確認して仮説を検証したという。

 中2の「フィールドワーク」は、社会科の教員と担任教諭が担当する「ソーシャルプログラム」で、地域社会の課題を見つけて解決策を考えることが狙いだ。中1同様、生徒たちはグループに分かれてテーマを決め、探求していく。

 1学期は、上野恩賜公園を利用する人々の中から、お年寄りや外国人、乳幼児を抱えた母親など社会的弱者に目を向け、それぞれの立場から地域社会の課題を考える。立場を変えることで、多角的な視点を養うのが狙いだ。2学期には、11月の鎌倉遠足で「フィールドワーク」を行う。

 社会の課題を見つけ、根拠のある仮説を立てて解決策を考えていくことは、もちろん簡単ではない。生徒たちは何度もダメ出しを受けながら1か月かけて仮説を立てるという。竹澤先生は「2年生以降は、仮説の立て方を厳しく指導します。情報には事実と意見があることを教え、主観や思い込みを排した根拠のある仮説を立てられるよう努めています」と話す。

 上野動物園での「フィールドワーク」では、園の入り口付近で、乳幼児を連れた家族連れを見つけたグループが、ベビーカー置き場が整備されればより快適に利用できるのではと仮説を立てて、園側に提案することができたという。

 鎌倉での「フィールドワーク」では、上野恩賜公園のように近くはないので、鎌倉の街の課題について、仮説の根拠となる事実、検証の方法などを2か月かけて慎重に準備する。

 あるグループは、起伏の多い鎌倉の地形に注目し、お年寄りの立場から災害時の避難について考えた。鎌倉市の広域避難所に指定されている源氏山公園に続く化粧坂(けわいざか)は、傾斜のきつい切り通しだ。生徒たちはiPadを使って傾斜を測り、動画を撮りながら実際に坂を駆け上り、所要時間を計って検証。そのうえで「お年寄りには厳しい。別にスロープを設置するなどの対策が必要ではないか」と鎌倉市に提案したという。

他者との関わり合いの中で自分を見いだす

鎌倉でのフィールドワークで、地域社会の課題を見つけて解決策を考える
鎌倉でのフィールドワークで、地域社会の課題を見つけて解決策を考える

 これらの「フィールドワーク」に限らず、中1から高3までの探究型の授業は、すべてグループワークの視点から組み立てられているのが特徴だ。それは、同校の建学の精神である「自覚」を実現するためだという。竹澤先生によると、「自覚」とは、自分の魅力や可能性、役割を知ることであり、「個々の魅力や役割は、他者との関わり合いの中で見いだされるもの。自分を知るにはグループワークが欠かせません」と語る。

 中1では5人1組で取り組む。「5人グループだと2人くらいさぼりますが、他のメンバーのやることを見るだけでも勉強になるので、1年生のうちは良しとしています」と竹澤先生は説明する。中2、中3では3人程度のグループにする。少人数にすることで、主体的に動くのが苦手な生徒も、活動に参加させるのが狙いだ。3人まで減ると、全員動かざるを得なくなるという。

 また、1、2年生はグループ分けの後にテーマを決めるが、3年生の「卒業研究」では先に各人でテーマを決め、それから同じテーマの生徒同士でグループを組むという。同じテーマでも研究方法や対象が異なるため、グループ内で意見の衝突が起こる。それがかえって自覚と調和を促すという。また、他者との違いによって自分を知り、自分と違う意見や価値観を受け入れることも覚えていく。「わがままや逃げたい気持ちなど、人間的な弱さが露呈します。でもここを乗り越えることで、生徒たちは大きく成長します」と竹澤先生は語る。

中学のフィールドワーク体験が高校でも生きる

 竹澤先生は、中学でフィールドワークを学んだ高校生から「あの経験から、グループの時は自分の役割を考えて動くようになりました」「困難があってもすぐには諦めず、仮説を立てて解決の糸口を探るようになりました」といった声を聞くそうだ。「相手の都合を考えたり、他者の意見を受け入れたり、人の立場を考えられるようになるようです。高校から入ってくる生徒とは、その点が大きく違います」と語る。

 今後の探究学習は、もっと地域の人たちと交流できる内容を増やし、中学3学年の縦割り班での活動にも力を入れたいという。「学園祭の発表に向けて3学年合同で取り組んでいる探究学習が、中3生に先輩としての自覚を持たせるのに一役買っているようなんです」と竹澤先生は話す。

 ますます新しい顔を見せる同校の探究学習の広がりに注目だ。

 (文・写真:佐々木志野 一部写真提供:上野学園中学校・高等学校)

 上野学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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958362 0 上野学園中学校・高等学校 2019/12/20 05:21:00 2019/12/20 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191218-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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