「考えて行動のできる人の育成」を実現する中学改革…横浜創英

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 横浜創英中学・高等学校(横浜市)は、来年の創立80周年を期して現在、「中学改革」を推進している。問題解決能力を身に付ける「プロジェクト型学習」などを柱に、同校の建学の精神「考えて行動のできる人の育成」を実践したい考えだ。授業、校外学習、学校行事と次々に着手している改革の中身や展望について下山田伸一郎校長に聞いた。

内部進学生の存在が学校の意識を変えた

「中高の6年間でいかに生徒を成長させるか」と考える下山田校長
「中高の6年間でいかに生徒を成長させるか」と考える下山田校長

 「平易な言葉のようですが、『考えて行動のできる人を育てる』という理念は、含蓄が深い。令和という新しい時代を迎え、社会の変化がさらに進むなか、自分の頭で深く考える力と、他の人と協働して実践する力の両方を育てることがあらためて必要だと考えます」。そう下山田伸一郎校長は語る。

 横浜創英中学・高等学校の前身である京浜高等女学校は1940年に開校した。87年に京浜横浜高等学校となり、2002年に共学化、校名も横浜創英高等学校に。さらに翌03年に中学部を開設し、現在の姿になった。

 「そもそも本校は中学と高校を併設する学校です。中学から内部進学し、6年間で大きく成長していく生徒たちの姿に接するうちに、中高6年を見通した教育を行う学校としてのさらなる発展を意識するようになりました。私が着任した2013年に中学に入った生徒たちが今春、高校を卒業していきました。その中には、進学実績もさることながら、生徒会長を務めたり、部活動で部長として活躍したりするなど、リーダーシップの取れる子がたくさんいました」

 中高6年間を貫く教育の重要性を感じ取った下山田校長は、来年の創立80周年を迎えるにあたり、「考えて行動のできる人を育成する」という開学からの精神に立ち戻り、今春から「中学改革」に着手した。

 「中学高校の6年間でいかに子供たちを成長させるか。新たな教育の方法を導入したいと考えました。それが「プロジェクト型学習」(Project Based Learning、以下PBL)です。これを今春入学した中1から試行的に実施しています」

 PBLでは、課題発見、リサーチや討議、仮説の構築、発表、振り返り・まとめ、といったサイクルで学習を進める。自ら発見した課題の解決を通して生徒は、自律的に多様な学びができるようになるという。

 入学してすぐに行う1泊2日の「ラーニングキャンプ」でもPBLの取り組みが行われた。「マシュマロチャレンジ」というゲームでは、チームごとにパスタの乾麺とテープ、ひも、マシュマロを使ってタワーを作り、高さを競う。新入生たちの協働意識を育てるとともに、自由にアイデアを出す面白さや失敗の経験を次に生かすことを体感してもらう狙いからだ。

 6月の体育祭でもPBLの考え方が生かされた。当日の参加者は生徒のほかに、応援に来た保護者や家族を合わせると1000人を上回ったが、生徒たちは役割を決め、進行を考えて主体的に運営にあたり、にぎやかな中にも整然とした体育祭を作りあげたという。

 「大きな会場で、これだけの集団になると、プログラム通りに進行するのはなかなか難しいものです。どうすれば集団を動かせるか、ルールや時間を守っていけるかを考えなくてはなりません。これからも体育祭や創英祭などの学校行事の運営、そして教科活動にもPBLの方法を生かしていきたい」と下山田校長は話す。

「教えない授業」の山本氏をアドバイザーに

早朝や放課後も、校内のあちこちで熱心な指導が行われている
早朝や放課後も、校内のあちこちで熱心な指導が行われている

 授業では、2016年度からアクティブラーニングを目標に定めて実施してきた。下山田校長自ら、教員の授業を観察し、振り返りを行って一歩ずつ「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指してきたという。

 今年度はさらに、「『教えない授業』」の始め方」(アルク刊)などの著者で元都立両国高校教諭の山本崇雄氏を教育アドバイザーとして招き、週1日、中学の英語の授業で、担当教員とチームティーチングをしてもらったり、アドバイスを受けたりしている。

 「生徒自身が課題や疑問を見つけ、それを教員が一緒に考え導く双方向の授業によって、主体的に学ぶ意欲が育ち、学んだ知識を活用できるようになります。これからはそのような授業が大切になると思います」と下山田校長はアクティブラーニング型授業の意義を強調する。

 昨年8月の夏期特別講座でも、PBLやアクティブラーニングの手法に注目した学習として、中学1、2年生を対象に「ワールド・ピース・ゲーム」というシミュレーションゲームを行った。アメリカの小学校教師、ジョン・ハンター氏が考案したもので、参加者は4チームに分かれて「交渉」と「対話」を進め、世界平和などグローバルな諸課題の解決を目指す。ゲームを通じて生徒たちは「答えのない問い」について自分の頭で考え、チームで協働して一つの目的を達成することを学ぶ。

 「初めて導入したゲームですが、1日3時間半、5日間かけて行いました。生徒たちは各国首相や国連事務総長、武器商人などの役になり、経済、軍事、自然環境などあらゆるミッションに挑戦します。参加した25人は真剣に、また楽しんで取り組んでいました。ゲームが完成した時には大きな達成感を感じ取ってもらえたと思います」

校外学習を積み上げてカナダ語学研修に備える

2020年7月に完成を予定する新校舎の図
2020年7月に完成を予定する新校舎の図

 このほか、中学の各年次で実施している校外学習も、生徒たちの主体的な学びを育てる大きな教育機会だ。

 中1生は全員、夏休み初日から3泊4日で長野・新潟県境の斑尾(まだらお)高原に行き、「アドベンチャースクール」に参加する。ジップラインやラフティングなどを体験するほか「ブルーシートと竹ひご、竹竿(ざお)、ガムテープくらいの材料で班ごとに手作りのテントを作らせます。この中で夕方から夜にかけてミーティングをするのですが、晴れていれば満天の星が望めます」。また、11月の「鎌倉校外学習」でも古都鎌倉の歴史、文化、自然の調べ学習とプレゼンテーションを行う。

 中2生は、京都・奈良の世界文化遺産を巡る関西歴史研修旅行に出かける。最終日には、京都に留学している外国人学生に協力してもらい、英語で京都市内の名所について解説したり、案内したりするというミッションがある。「これは中学3年で実施するカナダ語学研修への布石なのです」と下山田校長は説明する。

 そして、中3の10月には、3年間の集大成とも言える11日間のカナダ語学研修旅行がある。期間中は初日だけホテルに宿泊して、翌日からは生徒1人につき1ホストファミリーという条件で、異文化体験・英語体験の日々を送るという。昼間は現地の学校で「バディ」と一緒に授業を受けたり、ランチを食べたりする。「生徒にとってはどきどきするような語学研修ですが、中身の濃いプログラムで得難い体験の機会になっています。中高6年間の中で一番印象に残る行事だったという生徒が多いですね」

 今春の大学入試で同校には注目すべき成果があった。「本校初の現役東京大学合格者(理科1類)が1人出ました。さらにMARCH合格者が72人となるなど、過去最高の進学実績です」

 「今年の進学実績が伸びたのは、新しく編成したチャレンジクラスの存在が大きかった」と下山田校長は話す。「一般入試希望の生徒だけを集めたクラスなので、受験へのモチベーションを高く持ち続けることができました」

 創立80周年に合わせて現在、地下1階・地上3階立ての新校舎も建築中だ。来年7月に完成し、2学期から利用が始まる予定だ。図書室の機能を拡張した「メディアセンター」がその目玉となる施設。「蔵書数を誇るよりも、パソコンを導入してここで思う存分リサーチしたり、課題について討論し合ったりする空間にしたい」と下山田校長は語る。

 新設されるメディアセンターが「中学改革」の拠点になり、PBLの熱き舞台になることだろう。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート 一部写真:横浜創英中学・高等学校提供)

 横浜創英中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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710212 0 横浜創英中学・高等学校 2019/07/31 05:21:00 2019/07/31 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190726-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

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