【特集】来年度、科学的思考を育む「サイエンスコース」設置…横浜創英

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 横浜創英中学・高等学校(横浜市)は来年4月、新たに「サイエンスコース」を設置する。同校初の6年間中高一貫コースであり、「科学で社会に貢献する」ことを目標に、中1から高2までの5学年合同の混合グループで、研究所や企業から提示されたテーマを5年間かけて研究するという。昨年度、校長に就任して以来、宿題や固定担任制の廃止など、さまざまな改革を行ってきた工藤勇一校長に、新コースの意図や教育内容について聞いた。

目的は科学的思考力と自律性・主体性の育成

  ――「サイエンスコース」を新設する意図は何ですか。

サイエンスコース設置の意図や教育内容について話す工藤校長
サイエンスコース設置の意図や教育内容について話す工藤校長

 これからの社会をつくっていく子供たちは、これまで以上に変化が激しい未来を生きていかなければなりません。そこで求められるのは、自分で物事を考え、判断し、決定し、行動する力です。横浜創英のサイエンスコースは、次世代で活躍する子供たちに必要不可欠な「自律性・主体性」と、文理融合した科学的思考力の育成を目指しています。

  ――コース設立には社会的な背景もあるのでしょうか。

 人口爆発、気候変動や環境破壊、エネルギーや食糧問題など、人類は存続の危機に立たされています。これをいかに乗り越えるかが世界共通の課題です。そのことは世界が教育に求めることにも表れています。例えば「OECD Learning Framework 2030」においては「Agencyの醸成」、すなわち子供たちに当事者意識を持って問題を主体的に解決していく力を育てていくことが重視されています。

 一方で、日本の子供の当事者意識は、世界でも突出して低い。2019年に日本財団が欧米や中国、インドなど9か国を対象に行った「18歳意識調査」の結果を見ると、「自分を大人だと思う」と答えた日本の生徒は29・1%であり、「自分で国や社会を変えられると思う」は18・3%でした。どちらも他国より格段に低く、これは教育に携わる者にとって大きな衝撃でした。

 地球規模の課題解決に取り組み、持続可能な社会をつくるためには、私たち大人も含めて、すべての人が当事者であるべきです。当事者意識を持ち、組織や社会を変えるのは自分自身だと思える人を育てるために、学校は「与える教育」から「自ら学ぶ教育」に転換していく必要があります。

 また、さまざまな社会課題を解決するためには、科学技術を利用する力や大量の情報の真偽を見定める力も必要になるでしょう。これからの社会には科学リテラシーを必要とする場面がますます増えていくはずです。

 新しく始めるサイエンスコースは、横浜創英がそうした教育を実践する第一歩だと考えています。

「科学で社会に貢献する」というポリシー

  ――具体的にはどんな教育を行う計画ですか。

今春完成した新校舎1号館
今春完成した新校舎1号館

 「考えて行動のできる人の育成」という建学の精神のもと、サイエンスコースは「科学で社会に貢献する」というポリシーを立てました。

 生徒は、興味関心に応じて「自然科学ラボ」「社会科学ラボ」「人文科学ラボ」に分かれ、物理・化学・生物・地学・医学・データサイエンス・プログラミング、あるいは環境問題・メディア・福祉・介護・経済・政治・ジャーナリズム・商品開発、さらに心理学・語学・演劇・スポーツなど幅広いテーマに取り組みます。

 授業は、中1から高2までの5年間、週2時間行い、5学年混合の縦割りで研究グループを構成します。今春には新校舎も完成し、図書館やホールなど、調べ学習、グループワーク、プレゼンテーションなどの活動の場も整いました。

 新コースで研究する課題やミッションは、私の考えに賛同してくださった専門家の方々から提示していただきます。

 例えば、東京大学先端科学技術研究センターの准教授で障害と社会の関係について研究する熊谷晋一郎さんや、宇宙開発に挑戦し続けている植松電機の植松努さん、10年ほど前にプラスチックゴミを資源に変える技術を開発した日本環境設計会長の岩元美智彦さん、演劇界からは鴻上尚史さんらが参加してくださっています。そのほかにも企業や大学教授、メディアなどの著名人が、ほぼボランティアとして快く引き受けてくださいました。

 専門家のみなさんが提示するミッションに対して、興味がある生徒が集まってグループをつくり、中1の5月に研究テーマを決定します。中3の2月頃には一人一人が中間報告と口頭試問を行い、研究の集大成として高2の秋に最終発表のプレゼンテーションをする計画です。また、毎年2月頃にその年の活動報告を行うほか、外部の各種研究大会にも随時、エントリーしていく予定です。

 生徒は5年間かけてテーマに取り組むことになります。もちろん、途中でテーマが移り変わることもあるでしょうが、じっくりテーマを追うことで、研究レベルを高めることができるでしょう。また、社会への利活用も目指しており、在学中から実際に企業や自治体と組んでアクションを起こそうと考えています。

 教員は伴走者として生徒の目線でサポートします。いずれは上級生を中心に生徒主体でラボを運営することになるでしょう。新入生を勧誘するための説明会では、上級生がラボの魅力をアピールしたり、一方で後輩が研究を引き継いだりというケースも出てくるかもしれません。

キーワードは「自律・対話・創造」

  ――今後、横浜創英をどんな学校にしていきたいと考えていますか。

ホールで講義を受ける生徒たち
ホールで講義を受ける生徒たち

 学校本来の役割は、生徒一人一人が社会でより良く生きていけるようにすること、そして、より良い未来の社会をつくることにあります。そのために本校は「自律・対話・創造」を最上位の目標に掲げています。自律の一歩は、与えられるのに慣れないこと。生徒自ら、何をどう学ぶかを自己決定できるようにしたいと考えています。

 来年度の新入生が中3になる年には、高校のカリキュラムも再編します。必修を圧縮し、自律型学習の時間に充てることで、大学や企業と連携して研究や商品開発に挑戦したり、部活や受験勉強に打ち込んだり、一人一人が自分の可能性を伸ばすことに集中できるようになります。

 SDGs(持続可能な開発目標)にうたう「誰一人取り残すことのない社会」をつくるためには、当然、利害の対立やジレンマが生じますが、その時に大切なのが対話する力です。生徒には、グループワークや学校運営の場で、全員が合意できるまで徹底して対話する経験を積んでほしいと思っています。そうした対話には、感情と考え方を切り分けるスキルが必要ですから、そういうトレーニングの時間も設けます。

 その先にあるのは、持続可能な社会を担える自律型の人材を一人でも多く育てることです。自分がどう社会に貢献できるか、その方法を考え、主体的に進路を選べる人になってほしい。学校もそこに向けて変革を続けていきます。

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート 一部写真提供:横浜創英中学・高等学校)

 横浜創英中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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