脱・工業系で進学校を目指す新教育構想…日工大駒場

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 日本工業大学駒場中学校・高等学校(東京都目黒区)は、大塚勝之校長の下、中高一貫コースで「普通科専一」を掲げ「日駒教育構想」を進めてきた。さらに、3年制の高校部でもこれまでの工学科系2コースの募集を停止し、2021年から「普通科文理未来コース」を新設する。進学校を目指す同校の教育の取り組みや、目指す生徒像について、大塚校長に聞いた。

毎日の「ファイトノート」で国語力をアップ

「日駒教育構想」を進めてきた大塚勝之校長
「日駒教育構想」を進めてきた大塚勝之校長

 大塚校長は、もともと技術者として電話交換機のソフトウェア開発を手掛けていた経歴を持つ。「教員免許は取得していたので、大学卒業時には教職か就職か迷いましたが、当時はバブル最盛期で、ビジネスの方に魅力を感じて就職を選びました」

 30歳を過ぎた時に「教員になる最後のチャンス」と一念発起。以来25年間、同校の数学教師として教鞭(きょうべん)を執ってきた。2008年に中学を共学化し、高校に普通科を設置したのを機に、進学校へと(かじ)を切った。

 「進学校を目指した背景の一つには、特に私立中高において大学進学を希望する生徒が増加してきたという現状がありました。さらに、新しい大学入試制度改革も見据え、本校としても学力の向上に積極的に取り組まなくてはならないと考えました」と振り返る。

 中高一貫コースの副教頭を経て、2017年に校長に就任。「国語教育」「理数教育」「創造力の育成(ものづくり教育)」「英語教育」「キャリア教育」の五つの柱からなる新しい教育構想を立ち上げた。

 中でも、校長が最も重視しているのが「国語教育」だ。「日本語を磨くことは、理数に不可欠な論理的思考力や、英語力の向上につながります。また、国語力は教養を深め、人間力を高める基になります」と、その理由を強調する。

中学1、2年で使う独自の学習ノート「ファイトノート」
中学1、2年で使う独自の学習ノート「ファイトノート」

 新しい教育構想に基づく取り組みの一つが、中学1、2年生で使う独自の学習ノート「ファイトノート」だ。「国語・日誌」「英語」「数学」の3種類ある。「英語」と「数学」のファイトノートは主に授業の復習・定着のために使われるが、「国語・日誌」ノートは性格が異なる。

 漢字練習と百人一首の書き取りをする国語ページと、1日の生活や世の中のニュース、それに対する感想などを書き込む日誌ページで構成されていて、生徒は毎日家で記入し、保護者のコメントをもらって翌日提出する。担任がチェックし、帰りまでにコメントを書いて生徒に戻す。

 「毎日、日誌や漢字を書くことで、自分のその日を振り返りながらに国語力を鍛え、自分の考えを記述する力を身に付けます。さらに、保護者と教員がこのノートを通じ、生徒の心の変化や日々の成長を把握し、共有しています」と大塚校長は語る。

職業への多角的な視点を養うキャリア教育

中2の「職場取材」では、伝統的なものづくりをしている小規模企業の生業を体験的に学習する
中2の「職場取材」では、伝統的なものづくりをしている小規模企業の生業を体験的に学習する
中3の「企業訪問」では、大企業を訪問する機会を設けている
中3の「企業訪問」では、大企業を訪問する機会を設けている

 大塚校長が力を入れている、もう一つの重要な取り組みはキャリア教育だ。さまざまな職業に対して多角的な視点を養う体験を用意している。

 中2の「職場取材」という授業では、東京・台東区の浅草橋にある中小企業を実際に取材し、ポスターを制作する。浅草橋はノートや、ボタン、人形などものづくりの会社や、佃煮(つくだに)の店など伝統的な会社が軒を連ねるエリアだ。ポスター作りを通して、小規模企業の生業(なりわい)を体験的に学習する。

 中3の「企業訪問」では、テレビ局やヤフー、キヤノンや日立といった大企業を訪問する機会が設けられている。「職場取材」で知った中小企業と大企業との違いやそれぞれの良さを、実際に目で見て体感することで、仕事に対する自分なりの価値観を養い、将来を考えるきっかけとしてもらう。

 「これらのキャリア教育の時間では、発表をする機会がたくさんあります。グループワークやプレゼン力、コミュニケーション力など、社会に出てから必要となるソーシャルスキルを磨くことに重点を置いています」と大塚校長は話す。

 入試方法についても大きな改革を進めた。従来の2科・3科・4科入試や得意2科の教科型入試に加え、4年前から適性検査型入試、3年前から自己アピール型入試を採用し、間口を広げた。

 自己アピール型入試は、国語・算数・英語から1教科の学科試験と、自己アピールの作文、面接で、生徒の得意なことや考え方を評価するという試験方法だ。教科の学力だけでは測れない、さまざまな能力や興味を持っている生徒を幅広く集める狙いがあるという。「書道や作品制作、レスリングなど、いろんな得意を持った生徒が集まってきます。個々が持つ力を引き出し、それぞれの得意や役割を生かしてほしい。そうした生徒は学習でも伸びていくと思いますし、いろんな生徒がいることでお互いに刺激し合い、相乗効果をもたらすのでは」と大塚校長は、期待をにじませる。

学校と生徒・親の間に信頼関係を築く

 新しい教育構想に基づく取り組みの成果は、入学者数にも表れてきた。現高3生は45人だが、現中1生は108人にまで増加している。入学者にアンケートを取ると、「校長先生の人柄に引かれた」「教育への考え方に共感した」という声が多いという。

 その根底には、一連の取り組みを通して築かれた学校と生徒・保護者との信頼関係がある。「ファイトノートや普段のコミュニケーションを通して、生徒は先生を信頼していきます。アンテナを張っていれば、問題や悩みがある生徒は必ず分かります。常に生徒たちに声を掛け、コミュニケーションを取ることで、心配の種を早く取り除く努力をしています」と大塚校長は語る。「そうした先生たちの面倒見の良さや、生徒や保護者と向き合う真摯(しんし)な姿勢が、本校らしさだと思っています」

 教員の採用と人材育成にも力を入れてきた。「学校をつくるために大切なのは、教員の『熱』です。特に中学生は手をかけてあげることが大事なので、保護者と連携しながら、『熱』を持って子供たちに対して真剣に向き合ってきました。こうした思いを、本校の先生たちと共有できたことがよかったと思います」

 今後の方針について大塚校長は、こう語る。「工業科を廃止し、進学校として認知してもらうためには、まずは進学実績をきちんと出したい。年々、入学希望者は増えていますが、これまでやってきた取り組みを積み上げていけば、必ず評価していただけると考えています。工業系の学校の教育運営で培ってきた教員の『熱』『面倒見の良さ』を土台にして日駒らしく変わっていきたいですね」

 (文・写真:石井りえ 一部写真提供:日本工業大学駒場中学校・高等学校)

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931360 0 日本工業大学駒場中学校・高等学校 2019/12/04 12:02:00 2019/12/04 12:02:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191203-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

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