【特集】新校長に聞く「0to1」発想の人材育成…成蹊

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 成蹊中学・高等学校(東京都武蔵野市)で今年度、仙田直人氏が新校長に就任した。自らも成蹊の卒業生である仙田校長は、母校に赴任して、新たなものを創造する「0to1」(ゼロトゥワン)の発想を持つ人材の育成を目標に掲げた。企業との連携企画や国際交流イベントへの参加を推進しており、生徒たちに発想を試す場を与えることで、発信力やコミュニケーション力を伸ばしていきたいという。具体的な取り組みについて仙田校長に聞いた。

何もないところから新しいことを始める発想力

「生徒たちには自ら成すべきことを見つけ、21世紀の社会に貢献する人材となってほしい」と話す仙田校長
「生徒たちには自ら成すべきことを見つけ、21世紀の社会に貢献する人材となってほしい」と話す仙田校長

 同校ではコロナ禍をきっかけに、中学・高校でそれぞれの朝礼を校内テレビで行っている。その際、仙田校長は手作りのフリップを使ったユニークなスタイルで生徒に話しかける。このフリップには標語を書いたり、絵本の表紙を拡大したコピーを貼り付けたりして、本の内容を基に物事の多角的な見方などを伝えているそうだ。

 「おかげで生徒は私の言ったことをよく覚えてくれています。親しみやすく感じるのか、校長室に直接、質問をしに来る生徒もいます。人に何かを伝える時には、内容の良さだけでなく、話し方や見せ方も大切です。私のフリップはその一つの実践例です」

仙田校長が校内テレビでの朝礼で使っているユニークな手作りフリップ
仙田校長が校内テレビでの朝礼で使っているユニークな手作りフリップ

 こうしたユニークな発想を持つ仙田校長が、母校・成蹊へ赴任した際に打ち出したのが「0to1」の発想力を持つ人材の育成だ。「将来、多くの職業がAIに取って代わられると言いますが、AIは既存の問題を解決することはできても、何もないところから新しいことを始めることはできません。課題を解決する力だけでなく、自ら課題を発見する力、それが『0to1』の発想力です。生徒たちには自ら成すべきことを見つけ、21世紀の社会に貢献する人材となってほしいと思います」

 仙田校長は、小中高と通った成蹊の卒業生だ。静岡大学で日本史を専攻したのち、1年間企業に勤め、その後36年間、都立高校の教員として勤務。さらに都立中高一貫校の校長を5年経験した。成蹊に赴任する前は、私学の女子校でも4年間、校長を務めている。

 「成蹊学園は小学校から大学までが同じ敷地の中に集まった学校です。先輩は後輩の面倒を見て、後輩は先輩を見ながら育つ。この環境は、私が生徒であった頃から変わっていないと感じています。また、企業との連携など、公立では困難なプロジェクトも、私立であれば積極的に進めることが可能です。成蹊ならではの伝統と私立校の良さを、最大限に生かしていきたいと考えています」

企業と連携した探究学習を実践

大正製薬と連携した特別課外授業で行われた校内プレゼンテーション
大正製薬と連携した特別課外授業で行われた校内プレゼンテーション

 この「新しい発想」を育てるプロジェクトの一つとして、昨年から引き続き実施しているのが、企業と連携した探究学習だ。卒業生が会長を務めている大正製薬(東京都豊島区)と連携し、今年は高1と高2を対象に、同社の主力商品である栄養ドリンクの新パッケージを提案するという特別課外授業を実施した。

 「仮説を立てて調査研究を行い、ブレーンストーミングを繰り返して試作品を作り、実証実験を重ねた上でプレゼンテーションを行う活動です。6月に校内で行った最終プレゼンには私も出席し、生徒たちの努力の成果を実感することができました」

 同校は1912年の創立以来、「個性の尊重」「品性の 陶冶(とうや) 」「勤労の実践」という建学の精神を受け継いできた。企業との連携企画は、中でも「勤労の実践」に直結する活動となっている。

 「この企画に限らず、授業でグループワークを盛んに行うことで、自分の個性を伸ばすとともに他者の個性を理解し、尊重することを学びます。また、受験勉強に取り組みつつも、幅広い教養を身に付けるリベラルアーツを重視し、『品性の陶冶』を実践します。そのように本物との出会いを重視し、そこから『琴線に触れる』経験をすることで、成蹊学園全体の教育の柱である『人を創る』学びを実現しているのです」

 また今年度は、エストニアの首都タリンでIT企業を設立した、卒業生の熊谷宏人氏を講師として招き、オンラインで「スタートアップ」をテーマとした課外授業を実施している。熊谷氏は成蹊高校を卒業後、エストニアの大学に進学してITを専攻し、現地で起業した。

 「スタートアップはまさに、私が提唱する『0to1』の発想を具現化するものです。本校には自らチャレンジする精神を持った生徒が多く、生徒の側から私たち教員に『調べたいことがあるので、専門家を教えてほしい』と依頼してくることもあります。そういう生徒たちの熱意に応える機会を増やしていきたいと考えています」

伝統ある国際理解教育を推し進める

留学生と英語でワークショップを行う「エンパワーメントプログラム」
留学生と英語でワークショップを行う「エンパワーメントプログラム」

 生徒の発想力を磨く探究教育以外に、仙田校長は国際理解教育にも力を注ぐ考えだ。「本校は、アメリカの全寮制名門私立高校セントポールズ校と70年以上の交流の歴史があります。今回、私が校長に就任するに当たり、セントポールズ校の校長先生にオンラインであいさつをさせていただきました。生徒の意思を尊重しつつ、伝統を絶やすことなく交流を継続していきたいと考えています」

 同校は、海外の高校への長期留学も長年、実施している。この夏も5人の生徒が、アメリカを含む海外の学校への長期留学に出発した。留学生の受け入れにも積極的で、現在、ラオスから来た高校生1人が同校で学んでいる。7月には、日本に来ている留学生と英語でワークショップを行う「エンパワーメント・プログラム」を5日間、同校で実施した。中3生7人、高校生10人が参加し、生徒の英語による発表に、仙田校長自身も耳を傾けたそうだ。

 また、同校は、国際理解教育の実験的な試みを行うネットワーク「ユネスコスクール」の加盟校でもある。8月7日に開催された、成蹊大学の主催する「ユネスコスクール関東ブロック大会」に成蹊の中学生や高校生も参加し、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマとして動画発表やポスターセッションを行っている。

 「コロナ禍により学校行事が制限されることがあっても、生徒たちの新しい発想を養っていくのは重要なことです。本校の生徒たちは非常に良い発想を持っていて、自分のやりたいことを実現したいというチャレンジ精神も備えています。本校の持つ国内外のネットワークを生かし、オンラインでも対面でもコンテストや大会に参加するなどして、『発信力』や『コミュニケーション力』といった非認知能力を伸ばす取り組みを続けていきたい。それが、私が校長としてこれから成すべきことだと考えています」

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:成蹊中学・高等学校)

 成蹊中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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