「心のケア」でコロナの危機から生徒を守る…品川翔英

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 今春、共学校として船出した品川翔英中学校・高等学校(東京都品川区)は、コロナ感染拡大に伴う休校期間を「心のケア」重視の指導で乗り切った。併せて「学びを途切らせない」ためのオンラインによる学習方法も次々と導入し、学校再開後の学習指導にもさまざまな選択肢を広げたという。今春、副校長から校長に就任した柴田哲彦校長に、この間の対応や今後の展望を聞いた。

コロナ対策では生徒の心のケアを優先

「休校期間中は生徒との信頼関係を築くことを優先した」と話す柴田校長
「休校期間中は生徒との信頼関係を築くことを優先した」と話す柴田校長

 品川翔英は今年度から共学校となり、校名も新たにスタートを切った。しかし、直後に新型コロナウイルスの感染拡大というアクシデントに見舞われ、4月7日から自宅学習期間に入った。

 「学校によっては、すぐに休学中の学力保証へと突き進むところもありますが、私たちは、『勉強の遅れは取り戻せるけれども、気持ちが離れてしまったら、学校生活に戻ることが難しくなる』という認識のもと、信頼関係を築くことを優先しました」と、柴田哲彦校長は話す。

 「本校のような新しい学校に入学した生徒は、これからの生活が思い描けず、不安でいっぱいです。中には小学校で、成績が伸びずに自信をなくしたり、学びを諦めてしまったりした生徒もいるかも知れない。ですから『心のケア』が大切なのです」

 真っ先に手を着けたのは、授業支援アプリ「ロイロノート スクール(以下ロイロノート)」を使用し、教員と生徒とのつながりを確保することだった。教員たちは全員、ロイロノートの講習を受け、4月8日には、ロイロノートを使うのに必要なIDや教材を生徒の自宅に発送した。「カード」の機能を使ってコミュニケーションが取れるようになると、14日には最初のオンラインホームルームを実施し、その翌日から時間割に沿った授業が始まった。

 このアプリは、当初、4月から準備する1人1台のiPadで使う予定だったが、コロナ禍の混乱で納入が遅れたため、生徒自身が自宅にある端末にロイロノートのアプリをインストールすることから準備が始まった。

 「接続ができない時は、学校に電話をいただき、教員が説明に当たりました。『うまくできなくても、学校がサポートするから大丈夫だよ』というメッセージを送り、自分でやり抜くことで、自信を持ってもらいたかった。ある意味、攻めのケアです」と柴田校長は話す。

 これと並行して学校は、リモート相談室や保健室を開設し、カウンセラーや養護教員が、電話とメール、オンラインの三つの方法で対応した。

 また、柴田校長自身も、6月の学校再開直前まで、36回にわたって「こんにちは。」と題したブログを掲載し、休校中の先生たちの活動の様子や、自らの教育に対する思いなどをつづり、生徒や保護者にエールを送り続けた。

ICTを活用した学習方法を段階的に導入

登校再開後もオンラインで行われている英会話学習
登校再開後もオンラインで行われている英会話学習

 同校が「心のケア」と並行して力を注いだのが、生徒たちの「学びを途切らせない」工夫だ。ロイロノートによる自宅学習に加えて4月22日からは、授業動画サービスの「スタディサプリ」を併用した学習に移り、5月に入ると、各教科の教員が授業動画を配信したり、ビデオ会議アプリ「Google Meet」を使った双方向オンライン授業を行ったりと、ICTを活用した学習をステップアップさせていった。

 自宅学習期間は、朝に時間割に沿った課題をロイロノートで配信し、生徒は決められた時間内に課題を提出する。教員はそれを添削して、次の授業までに返却するという流れで学習が行われた。「返却する時も生徒の頑張りを認める言葉を添えました。また、課題を出さない生徒がいても、決して追及することなく、提出を諦めないように促す指導を心がけました」と柴田校長は話す。

 課題の提出率は予想外に良かったという。「意外にも、生徒たちはリモートの方がやりやすかったようです。また、対面のコミュニケーションは苦手だが、文字や音声なら積極的に表現できる生徒がいることにも気付きました。学びのスタイルが変われば、学ぶ姿勢も変わるのですね」

 中には、高3の文系選択の生徒がロイロノートで理数教科を選択し、課題提出していたケースもあったという。ICTによって対面授業では不可能な学び方が開け、生徒の知的好奇心を刺激している様子がうかがわれる。

 今回のオンライン授業は、先生にとっても、教え方を見直す良いきっかけになったようだ。「ある教員は、これまで自分がやっていた授業が、『いかにノンバーバル(非言語)・コミュニケーションに頼っていたか、分かった』と言っていました。また、通常の授業と違い、リモートの授業は、1回1回の振り返りをしなくてはなりません。よって、先生たちの意識も自然と高まり、互いの授業動画を見て参考にするなど、先生同士で授業の研究をしていました」

オンラインで広がる学び方の選択肢

オンラインで実施された職員会議
オンラインで実施された職員会議

 緊急事態宣言が解除され、同校は6月から分散、時差登校を開始した。クラスを少人数に分け、毎日の授業は、登校してのオフラインと、Google Meetを使った自宅でのオンラインを併用して実施され、6月29日以降は通常登校が行われている。

 今回のオンライン授業の経験について柴田校長は、「オンラインシステムを基盤とした教育活動は、もともとの構想にありましたが、コロナをきっかけに教員も生徒もICT活用のトレーニングをしっかり積むことができました。むしろ休校期間があったのは幸運でした」と振り返った。

 また、今後の教育活動へのオンラインの活用については、「教室から離れたところで、自由に授業を実施したいと考えています。例えば、本校は山中湖にセミナーハウスを持っているのですが、そこでネイティブの教師がイングリッシュ・キャンプを企画し、同時に品川で行っている学校の授業をオンラインで受講する。語学研修などは長期休暇で行われるイメージですが、オンラインシステムがあれば、いつでも実施することができます」と語る。

 「この先、コロナ禍以前と同じように授業を行うのは難しいでしょう。しかし現在は、オンライン授業も確立してきたので、その時々に応じた学び方を選択することができます。これこそが、私の目指している学校の在り方です」

 同校はコロナのピンチを、新しい学校作りのチャンスに変えた。「品川から世界へ、未来へ、英知が飛翔する」というキャッチフレーズ通り、新しい前進が始まる。

 (文・写真:北野知美 一部写真提供:品川翔英中学校・高等学校)

 品川翔英中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1404292 0 品川翔英中学・高等学校 2020/08/14 05:22:00 2020/08/14 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200812-OYT8I50061-T.jpg?type=thumbnail

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