【特集】80年の伝統とリンクした新しい学校づくり…鎌倉女子大

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 鎌倉女子大学中等部・高等部(神奈川県鎌倉市)は今年度から、「国際教養コース」と「プログレスコース」の6年一貫2コース制をスタートさせた。国公立大から難関私大までの進学指導を可能にすることが目的であり、鎌倉女子大併設校としてのメリットと、変化の激しい時代への対応とを調和させる取り組みとなっている。昨年度、部長に着任し、こうした新しい学校づくりを進めている小藤俊樹氏に目指す学校像や展望を聞いた。

生徒はお客さまではなく、一緒に学校を作るキャスト

 小藤部長は、横浜市立では初の小中一貫校である市立西金沢小中学校の副校長として、開校準備からマネジメントに携わり、また、同じく横浜市立初の中高一貫校である市立南高等学校附属中学校でも副校長を務め、教職員7人体制からスタートして、有数の進学校へと育てた実績を持つ。

 ――部長として、どのような教育を目指していますか。

「生徒はお客さまではなく、一緒に学校を作るキャストだと考えて接しています」と話す小藤部長
「生徒はお客さまではなく、一緒に学校を作るキャストだと考えて接しています」と話す小藤部長

 目指す学校像として私は「なりたい自分を見つけられる学校」を掲げています。生徒にはいつも「自分は将来、誰のために、何を通して、何を実現するのか」を思い描きましょうと言っています。それを一言でいうなら「志」です。

 中高生のうちに職業を選ぼうとすれば知っている職種からしか選べず、視野は広がりません。しかし、もし「病気で苦しんでいる人のために、医療を通して、幸せな生活を送る手助けがしたい」という「志」を立てたなら、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などへ選択肢が広がります。もっと言えば仕事は別に持ってボランティアでもいい。志があれば、職業はゴールではなく、誰かのために努力を続ける人になれるはずです。

 ――生徒と接する際に心がけていることはありますか。

 生徒はお客さまではなく、一緒に学校を作るキャストだと考えて接しています。昨年、着任した時には中1から高2まで、各クラスの代表生徒約30人と面談を行いました。おかげで、生徒たちの思いや誇り、困りごとなどを把握でき、その後、思い切った改革を進める原動力にもなりました。

 今年度から「国際教養コース」と「プログレスコース」の2コースを設けました。「国際教養コース」は国公立大や難関私大へ進学するため、高度な知識と教養を備えた国際人を育てるコースで、「プログレスコース」は、幅広い知識や技能を身に付け、難関私大から併設校推薦による鎌倉女子大学への進学までを想定しています。

 生徒はキャストだと述べましたが、学校という組織が成果を上げるためには、その一員である生徒も、学校教育目標や重点的な取り組みを理解し、ビジョンを共有する必要があると考えています。ですから、部長講話や終業式、始業式など、折に触れて本校のマネジメントについてプレゼンテーションをしています。

 幸い生徒も、それを受け止めてくれているようです。例えば、今年の文化祭は、コロナ禍の影響で開催を見送ったのですが、オンラインでできることをやりたいと生徒から提案があったり、先日は、文化祭に向けて「国際教養コース」をPRする動画を作りたいと言ってきたり、非常に意欲的に学校運営に参加してくれるようになりました。

現代に通じる鎌倉女子大の伝統

 ――鎌倉女子大の伝統についてはどう考えますか。

 本校の建学の精神である「感謝と奉仕に生きる人づくり」「ぞうきんと辞書をもって学ぶ」「人・物・時を大切に」は1943年の設立当時に作られたものですが、現代に通じる普遍的な価値を示していると思います。

 例えば、感謝と奉仕は、どちらも相手を必要とします。他者との関係の中で自己を成長させるという意味で、学校という場で、集団で学ぶ意義を語っています。

 ぞうきんをもって学ぶとは身体的な活動を通しての学びであり、辞書をもって学ぶとは頭脳的な活動を示しています。つまり学問の基礎・基本を習得するとともに、体験的な学習や課題解決型・協働型の学習を通した総合的・探究的な学びを意味しています。

 人・物・時を大切にするとは、まさにSDGsの目標を想起させます。人間は一人一人大切なかけがえのない存在であることを知り、資源や時間という限りあるものを大切にする姿勢は持続可能な社会の実現につながると考えています。

 独自の取り組みが、最新の研究で裏付けられた例もあります。本校には創立以来の伝統として、1日3回「修養の鐘」の合図で約1分間黙想する取り組みがありますが、これは自分の考えや言動を振り返り、客観的に分析して、次の行動に移るリフレクションの時間になっています。振り返りは1日の終わりにするものというイメージが強いですが、近年の研究によって日中に行うリフレクションの有効性が示されています。

建学の精神とリンクした新しい学校教育目標

 ――そうした伝統の教育を、これからの時代にどう生かしていきますか。

2021年に完成を予定している中等部・高等部の新校舎の図
2021年に完成を予定している中等部・高等部の新校舎の図

 今、お話しした建学の精神とリンクさせながら、あらためて学校教育目標を明確にしました。それが「豊かな人間性」「確かな学力」「語学力と国際性」「持続可能な社会に参画する力」の育成です。

 それらを実現するのは「知と心の教育」であり、具体的な取り組みとして立案したのが「心の教育プラン」と「学力向上プラン」「英語教育・国際理解教育プログラム」「ESD(Education for Sustainable Development)プログラム」「キャリア教育プログラム」です。これらのプログラムは学校の設計図と言ってもよく、必要な行事とそうでない行事をこれに照らして見極めます。今年度、不要な校外学習を約40%削減しており、代わって新しいプログラムも立ち上げています。

 例えば、ESDプログラムの一環として新設した「鎌倉学習プログラム」では、中2の生徒が12月に、鎌倉国宝館で仏像を運搬する際の特殊な梱包(こんぽう)方法を体験します。それによって、ただ仏像を見るのとは違い、文化財を後世に残す大切さを実感できると思っています。

 同じく12月に、中1と中3は自然をテーマに由比ヶ浜でビーチコーミングを体験します。地域のNPOの人たちと貝殻やシーグラスを探したあと、海岸に打ち寄せられたゴミの問題に目を向けることが狙いです。また、由比ヶ浜は海水浴場の国際環境認証「ブルーフラッグ」をアジアで最初に取得したビーチで、海の家の組合のご協力のもと、浜辺の環境保全、環境教育について講話をしていただき、自然を守ることの大切さを学ぼうと計画しています。

 高1と高2は1月から「鎌倉プロジェクト」に取り組みます。これは鎌倉市内の各地の課題を知り、課題解決の方法を考えて地域の方にプレゼンテーションをするというもので、地域のNPOの方にご協力いただき、採用、不採用の評価をしていただこうと考えています。

 プロジェクトを企画し、実行するためにはスキルが必要ですから、ここでは分析方法や発想法なども学習します。それによって、たとえプロジェクトは採用されなくとも、将来社会に出たときに役立つスキルが身に付くはずです。

 2021年度は新校舎も完成し、夏休み明けから利用を開始する予定です。ICT環境も充実し、コミュニケーションしやすい施設ですから、今まで以上に多様な教育活動を実現できると楽しみにしています。

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート 一部写真提供:鎌倉女子大学中等部・高等部)

 鎌倉女子大学中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1630327 0 鎌倉女子大学中等部・高等部 2020/11/19 06:00:00 2020/11/19 06:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201116-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

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