日本人学校にもグローバル教育の新風…立教英国学院

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 イギリス南部の田園地帯にある立教英国学院(西サセックス州ラジウィック)は、全寮制で共学の日本人学校だ。もともと海外駐在員の子女に「日本の教育」を行う目的で設立されたが、日本の教育そのものが大きく変化してきたことを受け、イギリスにあるメリットを生かした独自のグローバル教育へと(かじ)を切った。岡野透校長に同校の教育改革について聞いた。

「日本の教育」からグローバル教育への転換

「今後もさらに国際交流に力を入れる」と話す岡野校長
「今後もさらに国際交流に力を入れる」と話す岡野校長

 同校は1972年、文部科学省が認可する日本の在外教育施設として創立された。全寮制を採用し、日本の小中高校と同等の教育課程で小学5年生から高校3年生までの児童・生徒を教育している。対象は主に、企業の海外駐在員の子女だった。

 「創立当時は、日本の高水準の教育を海外にいても受けられることが重視されていました。しかし、バブル崩壊からリーマン・ショックを経て、海外に駐在員を出す企業も減り、生徒数も一時、減ってしまいました」

 さらに、求められる教育の質も変化した。知識を重視した従来の「日本の教育」から、国際交流やアクティブラーニング、探究教育などのグローバル教育が求められるようになってきた。進学先も日本の大学に限らず、海外大学も選択肢の一つになりつつある。

 そこで、学校の魅力を高めるために同校が取り組んできたのが、国際交流や短期留学を大幅に増やすなどの国際教育と、理科を中心として英国式のカリキュラムを取り入れた探究教育の充実だ。「今の時代にふさわしく、大きな転換を図りました。こうした改革が評価され、近年は両親が日本にいて、日本から本校へ入学する生徒も増えています」と岡野校長は改革の効果を話す。

イギリスという立地を生かした国際教育プログラム

 改革の柱である国際教育の取り組みとして、まず留学プログラムの充実がある。それまでもイギリス国内で数週間の短期留学は行っていたが、2019年から新たに3~4か月の学期留学をメニューに加え、提携校も3校から5校に増やした。「イギリス人家庭にホームステイし、バディと家でも学校でも一緒に過ごし、心の交流、文化交流をする中で、思うことがたくさんあるのでしょう。帰ってくると、さらに勉強するようになります」と岡野校長は話す。

 また、ケンブリッジ大学での研修を新たに企画し、年4回の研修を行う予定である。英語を使うアクティブな体験研修であり、夏は野外で上演するシェイクスピア劇を鑑賞し、自分たち自身でも上演する。冬はクリスマス劇の鑑賞やクリスマスクッキングなどを行っている。

選抜された高校生が参加する「日英ヤング・サイエンティスト・ワークショップ」
選抜された高校生が参加する「日英ヤング・サイエンティスト・ワークショップ」

 夏休みには毎年、高校生たちを選抜して、英国クリフトン科学財団が主催する「日英ヤング・サイエンティスト・ワークショップ」に参加させている。このワークショップはケンブリッジ大学で毎年、日本の京都大学と東北大学でも隔年開催されていて、日英の高校生がチームを組んで科学・エンジニアリング分野の最先端研究を学び、オープンエンドなプロジェクトに取り組む。また、ロンドン大学(UCL)が主催する「UCL Japan Young Challenge」に参加し、世界が抱える諸問題を日英高校生がディベートするプログラムに取り組んでいる。

 こうした特別プログラムだけでなく、普段の授業でも日常的に国際交流の機会がある。「英語の授業で2週間に1回は、町へ出て地元の人にインタビューをしますし、日曜日には現地の教会で礼拝をします。オープンデイ(文化祭)では、地元の方々を招待して日本の文化を紹介するなど、頻繁に交流する機会を設けています」

 岡野校長は「このように、多くの国際交流プログラムを用意して、日頃からイギリス人と交流させているので、本校の生徒は物おじせず、主体的に行動し、英語でコミュニケーションを取ることに大きな自信を持っていきます」と胸を張る。

探究教育でクリティカルシンキングを身に付ける

 国際交流プログラムの充実と並ぶもう一つの改革の柱は、英語を使った探究教育だ。

 理科教諭だった岡野校長は、日英の理科教育を比較研究した結果、約20年前から理科の授業に探究学習を取り入れ、発展させてきた。

 「日本では実験結果が教科書と同じかどうか、正解を求められますが、イギリスでは、実験結果が正しい場合も正しくない場合も、それにどうアプローチしていくかが評価されるのです。テストや受験のためではないサイエンスを学んでほしいと思い、自ら学ぶ『探究実験』を行ってきました」

 この探究教育を発展させるために同校が1995年から導入したのが、GCSE サイエンスのカリキュラムだ。この授業は、イギリスの中等教育終了の資格試験であり、イギリス人教師が受け持ち、実験と英語によるリポートの提出を中心に進められる。

 この探究教育は現在、理科だけでなく、高2・高3の歴史の授業にも導入されているという。「例えば、2度の世界大戦の中で民主主義をどう守ってきたか、というテーマで、当時の報道や写真のメッセージの信頼性を検証したりします。物の考え方、クリティカルシンキング(批判的思考)を身に付けるのが狙いです。試験のためではなく、社会課題の解決のための学びになっています」

 2019年9月から始まった「Collyer’s College」との教育連携でも、高2・高3を対象とする探究学習が行われる。大学でも通用するリサーチの仕方を学ぶ目的で、約5000語の英語研究論文を作成し、プレゼンテーションを行う。「戦没者に対する思いの日英比較や、日本とイギリスの給食の比較など、生徒が興味深い研究論文を作成しています」

 これらの教育改革に伴い、生徒の進路にも変化が生じている。従来は、系列の立教大学のほか、指定校推薦枠のある早稲田大学、国際基督教大学など、日本の大学に進む生徒がほとんどだったが、近年は、イギリスなど海外の大学を目指す生徒が増えているという。

 この進路傾向に対応して同校は、2015年からは英国大学進学コースを設置した。このコースではイギリスの大学へ進学するのに必要な英語資格IELTS対策や、欧米の高等教育で必須となるクリティカルシンキングや歴史、文学などの教科を、イギリス人教師が教えている。

豊かな自然環境のなかに建つ立教英国学院
豊かな自然環境のなかに建つ立教英国学院

 また、ロンドン大学(UCL)及びサリー大学と進学協定を結び、一定以上の成績を取れば、両大学の1年間の学士入学準備コースに入学できるようになった。その後、大学課程3年間を履修すれば、4年間で卒業できる。さらにサセックス大学やレディング大学、キングスカレッジとも進学協定を結ぶ準備を進めているという。

 もちろん、これまで通り、日本の大学受験のための指導も高学年を対象として行っている。「高3は夜12時まで自習でき、質問などにも細かく対応しています」

 こうした変化の反面、同校が変わらずに大切にしているものもある。「それは、食事の時間です」と岡野校長は力を込める。同校の生徒たちは共同の寮生活を送っている。その生活を充実させるには、生徒と教員が大家族のように全員一緒に食事をすることが大切だという。

 「1日3回の食事を生徒と共にしています。15人ほどの生徒が着席したテーブルに、親代わりの先生が1人つき、食事を取り分けます。その時に、『元気がないな』とか『はしゃぎすぎだな』とか、生徒の様子を見て、ケアしていきます。職員一人一人が大家族の親として、精いっぱいの配慮をし、生徒一人一人を人間として大きく育てようと努めています」

 東京ドーム23個分という学院の広大な敷地には、リスやキツネ、鹿なども生息しているそうだ。こんな豊かな自然環境と、新しい時代に対応した手厚い教育は、生徒一人一人が将来の夢をかなえる大きな支えとなることだろう。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:立教英国学院)

 立教英国学院について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1082469 0 RIKKYO SCHOOL IN ENGLAND 立教英国学院 2020/03/03 05:21:00 2020/03/03 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200302-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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