世界との主体的「出会い」を開くICT教育…神奈川大附

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 神奈川大学附属中・高等学校(横浜市)は、約30年前にパソコンを使った情報科授業を開始し、一貫してICT教育に力を入れてきた。同校のICT教育は、論理的思考力や英語力の養成だけでなく、コンピューターを「表現のツール」として活用することで、生徒の主体性の育成に役立てている点に特徴がある。生徒1人1台のタブレットPC導入も果たし、今春からコロナ対策でリモート授業も始まった。同校のICT教育を長年主導している小林道夫副校長に話を聞いた。

「表現するツール」としてのコンピューターに着目

 小林副校長は、1997年に同校に赴任して以来、情報科カリキュラムの作成や運営に携わり、教科書執筆なども手がけてきた。現在は同校の「ICT教育推進委員会」を統括している。

 ――コンピューター教育に力を入れ始めたのは、どうしてですか。

ICT教育について語る小林副校長
ICT教育について語る小林副校長

 本校は1984年の開校当時から、現在日本の教育にあらためて求められている「主体性」や「多様な人々との協働」を重視し、グローバルな視野を養う英語教育や、理系科目への注力による思考力の育成に力を入れていました。そうした教育方針に、当時の最新技術であるコンピューターを活用した教育が合致すると考え、89年にパソコンを備えたコンピューター教室を整備し、情報科の授業を開始しました。

 ――どのようにコンピューター教育を行っていましたか。

 当初は現在のように多様なアプリはなく、一からプログラムを組んで動作させるのが基本でした。本校としては、論理的思考力や情報活用能力の育成に加え、コンピューターの「表現するツール」としての側面が生徒の主体性を育てると考え、簡単な言語を使った絵作りやゲーム作成などにも取り組んでいました。その後、90年代にWebページの制作、2010年代にはロボットを教材に取り入れるなど、技術進化に応じて内容を充実させてきました。

 ――時代とともに教育内容が進化してきたということですね。

 はい。ICTを通じた表現活動の幅は広がり、個性発揮の舞台にもなっています。また、インターネットを活用して海外を含めた他校や外部の団体などとの交流も可能になります。自校の閉じた場を越え、自ら作品を世の中に発表して評価を受けたり、批判やアドバイスにも接したりすることができる。通常の授業による到達度を超える収穫があると考えています。

1人1台のタブレットPCを使用して授業を行う
1人1台のタブレットPCを使用して授業を行う

 2016年度には「効率的かつ深い学びを展開する」「生徒一人一人の学力を向上させる」「新大学入試制度に対応」という目標を定め、最新のICTを踏まえた授業デザインの見直しに着手しました。まず17年度から全教員にタブレットPCを持たせ、使い方の研修や授業法の研究を進めました。18年度からは中3を手始めに1人1台のタブレットPC導入を始め、Wi―Fi環境の整備も行いました。

 現在使用している主なソフトは「Classi」や「ロイロノート」「スタディサプリ」のほか、eラーニングシステム「College Pathway」や「Microsoft Office365」です。来年度には、6学年全員の1人1台体制が整います。

生活にも授業にも活用し、リテラシーを磨く

 ――具体的にICTをどのように活用していますか。

 まず生活面では、生徒は朝、「Classi」で担任からの連絡やその日の予定に目を通し、宿題などの提出もクラウドを通して行います。やるべきことを自分で確認する習慣が、主体性を育てると考えています。

 その上で、担任が朝のホームルームを行います。連絡や確認などの時間が省ける分、生徒一人一人の状況把握やコミュニケーションに注力できるのです。

 ――授業ではどのように取り入れていますか。

 教材や生徒の解答をクラウド上でやりとりし、解説を行うのが授業の基本的な流れです。配布・回収の手間も省けますが、もっと大きなメリットは、40人のクラスでも少人数教育に近いやりとりができる点です。

 従来の授業では、挙手や指名によって数人の生徒に答えさせるため、生徒の性格の違いが発言の量を左右しかねません。その点、ICT環境では生徒全員の答えや疑問が一覧でき、良い発想を拾い上げたり、つまずいている生徒を見つけたりするのも容易になります。生徒もクラスメートの多様な考えを知ることで、意見交換や切磋琢磨(せっさたくま)につながります。

 授業の最後には「振り返り」を書かせ、自分の理解を再確認させます。これも生徒の主体的な学びを促す一方、教員の授業力向上にも役立ちます。「ここが分からなかった」などの感想を踏まえ、分かりやすい授業、興味を喚起する授業を検討できるからです。

新型コロナで休校中も、オンラインツールで授業を行う
新型コロナで休校中も、オンラインツールで授業を行う

 英語4技能の鍛錬にもICTを活用しています。「College Pathway」で読む・聞く力を伸ばし、従来実施しているネイティブの講師による英会話授業に加え、フィリピン・セブ島の学校と提携したオンライン英会話を高1の授業に導入し、話す力を鍛えます。また、英語技能検定「GTEC」も中学1年生から受検しています。

 さらに、AO入試、推薦入試対策としてe―ポートフォリオの作成も行っています。

 大きなメリットとして「出会い」があります。学校で網羅できない良い教材や考え方、本や資料など、まさに多様な世界に主体的にアクセスできるわけです。そのことを意識して教員は「教え過ぎない」ことに留意し、「ここから先は、各自調べてリポートしなさい」という課題をよく出します。

 もちろんネット上の情報は玉石混交なので、教員が有用なサイトを生徒に紹介します。リンク1行で示せるし、生徒もワンクリックで見られるので非常に便利です。

 ――ICT環境をうまく活用するためのスキルやリテラシーも必要ですね。

 中高の6学年を3段階に分け、技術科や情報科の授業を活用して順次習得するカリキュラムを組んでいます。

プログラミングの授業でロボットを操作する生徒たち
プログラミングの授業でロボットを操作する生徒たち

 中1・中2では技術科の授業でタッチタイピングの習得や情報モラル教育を行い、中3・高1ではオフィスソフトの習得や、簡単なロボットをJavaScriptで動かすプログラミング学習。最後の2年間はプログラミング言語「Python」やWebに不可欠なHTML、スタイルシート、デザインソフトの「Illustrator」などを学び、Webサイトやムービーなどのコンテンツ制作も行います。

コロナ対策のリモート授業で課題を再認識

 ――ICT教育の手応えはいかがですか。

 タブレットの1人1台活用を始めた学年から、模擬試験の成績が全体的に上がりました。また、授業で意見を述べる生徒が多くなるなど、学習態度が変わってきた印象もあります。

 1人1台を始めて丸2年たった今、成果をきちんと評価し、カリキュラムと授業内容のグレードアップを行いたいと考えています。ICT教育に対する生徒や保護者の意識は年々高くなっており、学校としても応えなければなりません。

 ――今後も取り組むべき多くの課題がありそうですね。

 それを痛感させてくれたのが、コロナウイルスによる休校を受けて4月14日から始めたリモート授業です。

 Microsoft Office365の動画共有サービスを利用し、現在(4月22日)までに6学年で計500本の動画をアップしました。これらの授業動画の作成を通して、多くの教員が「授業をもっとシェイプアップできる」と感じたようです。例えば内容の重複や脱線、言葉の詰まりなど、編集でカットできる部分をなくしていけば、もっと密度の高い授業ができるはずです。この状況を糧とし、今後につなげたいと思っています。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

 神奈川大学附属中・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1239789 0 神奈川大学附属中・高等学校 2020/05/26 05:21:00 2020/05/26 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200525-OYT8I50014-T.jpg?type=thumbnail

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