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【特集】「探究」で自分のからを破り、主体的な学びを身に付ける…神奈川大附

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 神奈川大学附属中・高等学校(横浜市)は今年度、中3と高1の生徒を対象に「総合的な探究の時間」を開始した。生徒は、広範な分野をカバーする23のゼミから、興味関心に合わせて選択し、個人あるいはグループで研究課題を決め1年間かけて取り組む。探究力を磨く取り組みは中高6年間に拡大する考えで、思考力・判断力・表現力などを培っていくという。小林道夫副校長と担当教諭に、この授業について聞いた。

「主体的に考え、判断し、行動する生徒」を育てる

探究の時間委員会副委員長の大場愛美教諭
探究の時間委員会副委員長の大場愛美教諭

 同校は2022年度から高校で全面的に「総合的な探究の時間」が導入されるのに先立ち、今年度、独自の授業をスタートさせた。

 探究の時間委員会の副委員長で、国語科の大場愛美教諭は、この授業を導入した背景についてこう説明する。「本校では以前から、『主体的に考え、判断し、行動する』という生徒目標を掲げ、論文やリポートを書いたり、パネルディスカッションをしたりしていました。しかし、いずれも学年単位の学びであったため、6年間を通して伸ばしたい生徒の能力について3年前から議論を重ね、『探究力』を中心に据えることにしました」

 「『探究力』は、基礎学力、自己理解力と並ぶとても重要な力と考えています。これらの力が総合的にできあがることで人間力が高まります。探究の授業では、課題を設定し、情報収集やプレゼンテーション、論文作成などの活動を通して、思考力・判断力・表現力、さらに共感力と協働的態度を養うことを目指しています」

 同校の「総合的な探究の時間」は、中3と高1の2学年合同で、毎週火曜日に23のゼミに分かれて行われる。ゼミの主なテーマは心理学、哲学、数学・物理、医学、歴史、国際経済、法律、言語などから、環境、ジェンダー、貧困、さらには漫画・グラフィック、映画、アニメ、美容、体育など、極めて多彩だ。

 「図書館で使われている日本十進分類法をもとに、どの分野に興味があるか中3、高1の生徒全員にアンケートを取り、その結果になるべく近いテーマでくくって23の教室に分けました。生徒は、その中で1人、もしくは2~5人のグループをつくり、1年間掘り下げられる研究課題を決めて考えていきます」

 生徒たちはそれぞれの研究課題に合わせて、夏休み中に文献調査や実験、フィールドワークなどを行う。11月に中間発表を行い、仲間や教員から指摘を受けて修正を加える。その後、本格的に論文執筆に入り、翌年2月に提出する予定となっている。

 「論文は、ルーブリックに基づいて自己評価と生徒同士の他者評価、さらに教員の審査を経て、優秀作品を2本選び、全校生徒の前でプレゼンテーションしてもらう予定です」

 この取り組みは中3、高1にとどまらず、6年間を通しての能力育成を目指しているという。「中1、中2の国語の授業では、今年から問いの立て方、論文の書き方などの基本スキルを学ぶカリキュラムを開始しました。生徒たちが中3で探究に取り組む時には、もっとスムーズに課題に入れると思います。 語彙(ごい) 力、論理的思考力など、探究力の基礎を培ううえで、国語科が担うものはかなり多いと感じています」

 提出した論文は、高校の情報の授業でホームページを作る時の題材にしたり、英語の授業で論文の要約を翻訳したりといった活用も考えているそうだ。

時代を反映した問題意識が並ぶ研究課題

リサーチクエスチョンの決定に向けて話し合う生徒たち
リサーチクエスチョンの決定に向けて話し合う生徒たち

 1学期最後の授業が行われた6月29日、ゼミが開かれているいくつかの教室を訪ねた。
この日はそれぞれがリサーチクエスチョン(研究課題)を決める日だった。

 上がってきたリサーチクエスチョンの数は膨大だが、そのうちいくつかを紹介すると、2050年の脱炭素社会に向けての「CO2ゼロのスポーツカーをつくろう」、模擬国連への出場を目指しての「世界の平和構築に対し、各国の核保有撤廃は有効策なのか」、医療政策の課題として「高齢社会に在宅医療が普及しない理由は何か」、生物利用の再生可能エネルギーの可能性を探る「どのような構造の微生物発電機をつくれば一人の人間が生活できる電気を発電できるか」、ビーチやマリーナの持続可能な発展に役立つ「日本の海岸がブルーフラッグを獲得するには何をすればよいか」など。

 内容はさまざまだが、いずれも時代を反映した課題であり、社会問題への答えを探ろうとする意欲が感じられる。大場教諭は「生徒たちは想像した以上に主体的に取り組んでいて、受け身の授業とは違う姿が見られたことがうれしい」と話した。

 これらの多岐にわたる研究を教員はどうサポートするのか。「総合的な探究の時間では、正解のない問いに主体的に取り組めるよう、教員はコーチやファシリテーターとしてかかわります。担当教員向けの研修でも『どっちかな?』『どうしてそう思うの?』と、生徒と同じ目線で考えてほしいと伝えています」と大場教諭は答えた。ゼミは先生が教える場ではなく、生徒が探究する場なのだ。

自主性に任された授業の魅力

地震に強い構造を確かめるために高1のグループが設計した構造模型
地震に強い構造を確かめるために高1のグループが設計した構造模型

 授業後、二つのグループに話を聞いた。菅原翼君(高1)、牛島梨沙さん(中3)、村田恵麻さん(中3)の3人でつくるグループは、「ミャンマーとカンボジアの経済格差を埋めるにはどうすればよいか」という研究課題を立てた。

 グループ内で、映画やニュース、授業で触れた経済の話題に話が及び、国際的な問題の理解を深めたいという共通した問題意識を持ってテーマを絞り込んだという。探究の授業について菅原君は「探究は自分たちで作っていく授業。難しいけれどやりがいがあります。先生はほとんど干渉せず、自主性に任されているので責任も感じます」と言う。牛島さんは「部活の先輩後輩や、同級生以外の人と話し合うことが刺激になります。テーマを決める中で発見があることもうれしいです」と話す。村田さんは「先輩には、自分とは違う視点があって勉強になります」と学年を超えたグループ構成のメリットを語った。

 柘植一希君、鈴木壮矢君、田中悠大君、稲生翔太君(全員高1)の4人でつくるグループは、「住宅の構造の違いや地盤の違い、揺れの方向と強さが耐震性にどう影響するか」を研究課題に決めた。地震に強い構造を模型による実験で確かめる予定だ。

 4人はみな小さい頃から建築に興味があったそうだ。柘植君は「将来建築の仕事に就くとしたら、この経験が役立つと思う」と進路も意識した話ぶり。鈴木君は「構造模型を設計する際、中学で学んだ三角関数を使いました。数学が実用の学問だと実感した」と言う。田中君は「建築に興味がある同士が集まっているので、深い話ができるのが面白い」と授業の魅力に触れ、稲生君は「日本に住んでいる以上、地震は避けられない課題」と、問題意識を語った。

「教わる勉強から主体的な学びに進むには、からを破ることが必要」と話す小林副校長
「教わる勉強から主体的な学びに進むには、からを破ることが必要」と話す小林副校長

 これから生徒たちは、1年かけて1本の論文作成にとりかかる。中3生は翌年も「探究」の授業があり、2年間で2本の論文を書くことになる。大場教諭は「2回経験することの効果を期待しています」と語る。「中3では満足のいく論文にならなかったとしても、高1ではその経験を生かして内容を高めることができますし、上級生としてグループをリードしてくれれば、より生徒主体の運営ができるでしょう」

 小林副校長も探究の時間が生徒に与える影響に期待を寄せる。「当校の生徒はみな真面目ですが、力を出し切っていないようにも感じます。教わる勉強から、主体的な学びに進むには、からを破ることが必要でしょう。『探究』がそのブレイクスルーになると思います」

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート)

 神奈川大学附属中・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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