【特集】新たな2コースのグローバル教育で未来を切り開く…ノートルダム女学院
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ノートルダム女学院中学高等学校(京都市)は、2021年4月から新たな二つのコース制をスタートさせる。ともにグローバル教育と科学的思考力の養成にウェートを置いている点に特色がある。特に英語教育は到達度別授業とプロジェクト型の学びを組み合わせた独自の手法で、個々の生徒の力を伸ばしていくという。これらの教育の特色や、カトリック校としての人間教育などについて高谷憲弘副校長に話を聞いた。
「グローバルマインド」「英語力」「科学的思考力」を育む
――来年4月からスタートする新コースについて説明してください。

これまでも本校では、グローバル社会で通用するスキルの育成に力を入れてきました。このグローバル教育を中学の全コースに拡大するべく、現在の3コースを新たに「グローバル探究コース」「グローバル総合コース」の2コースに編成して2021年4月からスタートします。どちらのコースも共通して、広い視野や価値観、行動力、他者と関わる力といった「グローバルマインド」「英語力」、知識に基づいて論理的に思考・説明し、活用する「科学的思考力」の三つの力を育てることを教育の狙いとしています。これらの力は、子供たちの将来の可能性を切り開くための礎となるでしょう。
「グローバル探究コース」は、研究テーマを掘り下げてより深く学べるカリキュラムを用意し、主に知的好奇心や探究心、思考力を育むのが特徴です。「グローバル総合コース」の特徴は、演劇教育の手法を用いたプロジェクト型の学びなどを取り入れ、幅広い経験をする中で協働力や課題解決力、思考力を育むことです。
――「英語教育」は、これまでも学習の柱の一つでしたね。

ノートルダム教育のネットワークは世界37か国に広がっており、グローバルな背景を持つ本校の特色として、英語教育を学習の柱の一つに位置付けてきました。目指しているのは、どのレベルの生徒も英語嫌いにさせない、飽きさせない英語教育です。到達度別授業とプロジェクト型の学びを組み合わせた、革新的なメソッドで展開します。学年やコースの垣根を越えた到達度別授業では、生徒それぞれの英語力に合わせて力を伸ばしていきます。中学3年修了時に英検準2級全員合格を目標としていますが、もちろんそれ以上の高いレベルにも対応します。
一方、プロジェクト型授業では、さまざまな英語力のレベルの生徒が混在した通常のクラス単位で、英語に関連する課題に取り組みます。個々が持つ能力を持ち合い、互いに刺激を受けながら能動的に学んでいきます。
まったく異なる教育方法を組み合わせた、このような手間を要する英語教育が実現できるのは少人数校だからこそであり、「読む・書く・話す・聞く」の4技能をバランスよく身に付けることができます。ネイティブの教員による指導、留学・語学研修など、実践的な英語力が身に付く学習環境・カリキュラムも中高6年間で整えています。
――「思考力」を育てる教育にも力を入れていると聞きました。

知識を蓄積することは大切ですが、社会で活躍する未来を考えたとき、知識を使って何ができるのかが問われるでしょう。そこで必要となるのは、自分自身で考える力、すなわち「思考力」です。PBL(課題解決型学習)の授業を中心とし、正解のない課題に取り組み、自分の考えを人に伝え、行動する、この一連の学習を通じて思考力を磨いています。自身で考え、アウトプットする経験を重ねた生徒たちは、自分の意見を人前でしっかりと発信できるように変わっていきます。高校生になると、企業に働きかけて開発途上国の生産者に配慮した紅茶の商品開発を行うなど、多彩なプロジェクトにチャレンジしています。これも中学生から段階的に思考力を磨いてきた成果だと思っています。
カトリックの精神で豊かな人間力を育む
――カトリック校としての教育の特色はどのようなものですか。
キリスト教精神に基づき、人との関わりを大切にし、共感力を持ち、人のために行動できる人に育ってほしい。その思いが本校の教育の根幹にはあります。日々の学校生活の中では折に触れて「誰のために何ができるのか」を考える機会があり、それらの経験を通じて生徒たちは、人を尊重して行動する精神を自分の中に自然と育み、成長してくれているように感じています。環境問題など世界規模でさまざまな問題が起こっている今、このような豊かな人間力を育てることは、カトリック校が担う大切な役割なのではないかという思いを強くしています。
――女子校であることのメリットはどう考えますか。
異性の目を気にすることがなく、個性を発揮しやすいのが女子校の良さだと感じています。生徒の様子を見ていると、明るく行動的な生徒が多いですね。授業で自身の考えを発信する際にも、素直に自己表現できているようです。人を尊重するというカトリック校ならではの精神的土壌と女性の方が高いと言われている共感力が相まって、自由に発信できる雰囲気が作り上げられているのではないでしょうか。
また、四季折々の自然が感じられる校地は、思春期の女生徒がリラックスして過ごすのにふさわしい環境だと思います。書道の時間に近くの南禅寺で俳句を詠むなど、歴史ある京都の地を生かして感性を磨く体験もできます。
非常時の経験を今後の授業に生かしていく
――コロナ禍への対策はどのように実施しましたか。

全クラスで4月13日からはホームルーム、15日からは授業もオンラインでスタートしました。生徒の学びを中断したくないという思いから、教員が一丸となって準備を進めて実現したものです。新入生以外の生徒はタブレット端末をすでに所有しており、ICT機器の導入を進めていたことがオンライン授業をスムーズに始める助けとなりました。教員も大半がテレワークで授業を行いました。オンライン授業を始めたことで生徒と学校のつながりが途切れず、生徒や保護者に安心してもらえて良かったと思います。特に、登校できないまま学校生活が始まってしまった新入生に対しては、ホームルームなどで声をかけ、担任を中心に細かくケアしました。
45分の授業を1日3コマ、体育や音楽などの実技教科も含めて全教科の授業を実施しましたが、オンラインだと集中力が続きにくいため、教員側が一方的に情報を流すのではなく、生徒が意見を出し合う時間を設けるなど、各教員がそれぞれ工夫して授業を行っていました。生徒からは「これまでとは違う授業を受けられて良かった」という感想もあり、新しいスタイルの授業にチャレンジできたことは、今後の通常の授業にも生かしていけるのではないかと今回の出来事を前向きにとらえています。
授業は午前中のみで、午後は部活動や生徒会などの課外活動もオンラインで行っていました。部活のミーティングなどをして交流が図れ、生徒の心の健康を保つために役立ったのではないかと思います。中学生徒会では、新入生に学校の様子を紹介する企画を自主的に実施してくれました。カトリックの精神を実践し、困難な時でも人のことを考えて行動した生徒の姿をうれしく感じました。
(文:溝口葉子 写真:中学受験サポート)
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