「恐れずに進め」モットーに、自由な学問追究…ドルトン東京

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 ドルトン東京学園中等部・高等部(東京都調布市)は昨年4月、米国の教育家ヘレン・パーカーストが提唱した教育法「ドルトンプラン」を実践する場として開校した。生徒たちに自主的な学習計画を立てさせ、それぞれの興味を追求させる独特の学習手法によって、生徒たちは学力を高め、校外のコンテストで優勝を果たすなどの成果を上げているという。荒木貴之校長らに学校作りの今について聞いた。

「学習者中心主義のドルトンプランにほれた」

ドルトンプランについて話す荒木校長
ドルトンプランについて話す荒木校長

 「こんな教育法が100年も前からあったことは、私にも驚きでした」と、荒木校長は話した。ドルトンプランは米国で、詰め込み教育の弊害に対する試みとして教育家ヘレン・パーカーストが提唱した教育法だ。一人一人の能力や要求に応じて学習課題と場所を選び、自主的に学習することに特徴がある。今で言うアクティブラーニングの元祖のような存在だ。

 荒木校長はアクティブラーニングを長年追究してきた。教頭、副校長と歴任した立命館小学校ではロボティクス科を創設し、ICT教育を取り入れた。前任の武蔵野大学附属千代田高等学院では校長として、国際バカロレアの認定取得などに取り組んだこともあり、「日本アクティブ・ラーニング学会」の副会長でもある。

 荒木校長がドルトンプランの教育を目の当たりにしたのは2013年4月、河合塾新教育事業推進室の主席研究員となり、就任3日目でニューヨークのザ・ドルトンスクールを視察した時のことだ。「一番素晴らしいのは、学習者中心主義ということです。一斉指導をするこれまでの学校ではできません。そこにほれてしまったのです」と微笑(ほほえ)む。

 「ドルトンプランの理念は『自由』と『協働』です。ニューヨークで視察した学校は『チルドレンズ・ユニバーシティ』と呼ばれ、子供を子供扱いしません。子供だからこの程度教えればいい、というのではなく、自由に学問を追究させる。すると子供は、学びの楽しさを知る、できることがうれしい、没頭する、という体験をします。これらを通して、主体的に学び、探究・挑戦し続ける姿勢を育むのです」

 ドルトンプランが初めて日本に伝わったのは大正時代だ。「大正新教育運動の時代、1924年にはパーカーストが来日して、熱狂的に受け入れられました。ドルトンプランの学校は現在世界に400校以上あり、今も色あせない有用なメソッドなのです」。日本でも当時、私立成城小学校(現在の成城学園初等学校)などが取り入れた例がある。

 しかし、昭和時代に入ると、第2次世界大戦を挟んで長らく埋もれてしまう。あらためてドルトンプランに着目したのが幼児教育を研究していた河合塾で、1970年代から幼児・児童教育に取り入れ始め、さらに中等教育への展開を長年の目標としていた。

 一方、ドルトン東京の前身となった「東京学園」は、国内最古の商業学校の流れを()む伝統校だったが、新しい時代に合った教育改革を進めようとしていたことから、河合塾が経営に参画。ドルトンプランに基づく共学の中高一貫校を設校する運びとなり、荒木校長が開校準備を進めていた。

主体的に学ぶ姿勢を育むドルトンプラン

 同校は、こうした学びを進めるため、1クラス25人程度の少人数制を実施している。生徒一人一人が教師と「アサインメント」と呼ぶ取り決めをして、各教科の学習目的や到達目標、学習方法、課題などを設定して学習を進める。生徒はクラウド上のプラットフォームを通じて、いつでも「アサインメント」を確認し、自主的な学習計画を立てることができる。

理科室にはウーパールーパーを飼育する水槽が置かれていた
理科室にはウーパールーパーを飼育する水槽が置かれていた

 この「アサインメント」に沿って計画した自主的な学習を深めていく時間を「ラボラトリー」と呼んでいる。週2~4コマあるこの時間では、教員からのアドバイスを受けながら、各自が興味ある学習をとことん追究できる。そのために高度な実験装置を備えた理科室や、機能性と安全性を両立させたアリーナなどの施設も充実させているという。取材に訪れた5月22日も、理科室にはウーパールーパーを飼育している水槽や、難しい化学式などがびっしり書かれたホワイトボードがあり、ラボラトリーの時間の充実が(うかが)えた。

 「いくらでも学問を深掘りできるのです。英語で数学を学んだり、英語でヨガをやったり、生徒のさまざまな興味関心に沿って、深く学んでいきます」と荒木校長は語る。

 「アサインメント」「ラボラトリー」に並ぶドルトンプランのもう一つの特徴が「ハウス」だ。荒木校長は「これからの社会では、文化的背景や国籍が異なる人たちと『協働』していくことが求められます。その資質を育むために、生徒はクラスのほかに、異学年のコミュニティーである『ハウス』にそれぞれ属して、学年を超えた活動を展開していきます」と話す。

図書館と協働学習の場が一体化したラーニングコモンズ
図書館と協働学習の場が一体化したラーニングコモンズ

 「現在は新型コロナウイルス対策のため、オンラインでの学びになっていますが、校舎も全体が、『いつでもどこでも誰とでも学べる空間』というコンセプトになっています」。校舎の中央の「ラーニングコモンズ」は、図書館と協働学習の場が一体化した大きな吹き抜けのスペースだ。いつでも読書や調べもの、友達と一緒の学びができ、プレゼンテーションの場としても活用できるという。

 「協働」の理念を生かすために英語教育にも力を入れている。アカデミックにもビジネスにも、どちらでも使える英語を目指し、中1は3レベル、中2は最大4レベルに分かれて習熟度別授業を行う。英語科の教師13人のうち7人がネイティブで、全ての授業で日本人とネイティブの教師がチームティーチングを行っている。

 高野淳一入試・広報室長は、「こうした学習を行った結果、全員が受検したケンブリッジ英検の結果が総じて良く、特にスピーキングとリスニングが高得点で、恐れずに表現する態度が身に付いています」と話す。

東京都科学コンテストで優勝、早くも成果が表れる

校舎を背に立つ荒木校長
校舎を背に立つ荒木校長

 「ラボラトリー」などで興味をとことん追究するドルトンプランの学びは、早くも校外のコンテストなどで成果を表わしているという。昨年、都の「中学生科学コンテスト」では、多くの強豪校を抑えて優勝し、「科学の甲子園ジュニア全国大会」に出場した。「教員はできる限り何もしないように我慢しました」と高野室長は話す。「与えられた事前課題に生徒たちが取り組んだことが力になり、当日課題で1位となりました。出場した生徒たちは自分の興味に対し、自由に学習しています。それを見た周りの生徒たちもその輪に加わりつつあります」

 また、次世代の研究者を養成するため、企業・大学が協賛して国内・アジアで開催する中高生のための学会「サイエンスキャッスル」の関東大会では、「洗剤による透明骨格標本の作成-マジカよ!すげ~-」と題した研究が慶応大学薬学部賞を受賞した。透明骨格標本の制作費用の削減と簡易化を目指し、メンバー全員の協働作業で価格の高い高純度グリセリンを市販の台所用洗剤で代替する手法に行きついた。高野室長は、「受賞した生徒たちが自信を付けただけでなく、ほかの生徒も受賞を身近に感じ、今年の発表に向けた取り組みを始める生徒や、自分のテーマを明確に持って取り組み始めた生徒もいます」と話す。

 生徒たちの活躍に目を細めながら荒木校長は、「スクールモットーは『恐れずに進め』です」と語る。「4月の校長就任から、休校の影響でまだ生徒に会えていませんが、オンラインでクラスごとにあいさつをしたところ、生徒からすぐにダイレクトメッセージが来て、驚きました。生徒も先生もスクールモットーの通りに動いてくれて、オンライン授業もスムーズに始まり、頼もしく感じています」

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:ドルトン東京学園中等部・高等部)

 ドルトン東京学園中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1256023 0 ドルトン東京学園中等部・高等部 2020/06/03 05:21:00 2020/06/03 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200602-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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