創造と伝統の精神で生徒がつくる創立100周年記念…甲南女子

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 今年、創立100周年を迎えた甲南女子中学校・高等学校(神戸市)で、生徒有志が「100周年委員」として記念冊子や動画の制作に取り組んでいる。これらの記念事業は、あえて学校が主導することなく、生徒のアイデアと主体性を生かし、教師は相談相手と見守りに徹しているという。同校のユニークな伝統となっている「第二校歌」とともに、この取り組みを貫く同校の創造と伝統の精神を紹介する。

生徒が主導する100周年の記念企画

創立100周年記念冊子の「つながる tsunagirl」
創立100周年記念冊子の「つながる tsunagirl」

 甲南女子学園は今年、創立100周年を迎えた。3年前からこの節目の年を祝おうと「記念式典・祝賀会」や「記念音楽会」などが学園全体で準備されてきたという。こうした学園主催の行事と並んで、中学高校も独自の取り組みで創立100周年を祝おうと、同じく3年前に全校生徒からアイデアを募った。学校主導でなく生徒たちのアイデアを生かそうとしたことについて入試広報室部長の松尾由起子教頭は「教職員が事前に青写真を描くことをせず、まっさらな状態から生徒たちの声に耳を傾け、行動力を引き出すきっかけにしたかったからです」と語る。

 記念グッズの制作やバスのラッピングなど数々のアイデアが寄せられたが、その中から予算やスケジュール、生徒の安全面などを考慮して、早くから始まったメインの取り組みが記念冊子の制作だ。「つながる tsunagirl」と名付けられたこの記念冊子は、有志の生徒が企画を考え、取材し、作成した記事からなる。

 不測のコロナ禍によって学園行事の開催は来年度に繰り延べられたが、生徒たちの記念冊子作りは着々と進んでいる。2018年に第1号、2019年に第2号が発行され、2020年に発行予定の第3号の制作に取りかかっているところだ。

 この記念冊子作りを始めとする記念企画は、有志の生徒からなる「100周年委員」が進めている。「いつでも誰でも委員になれます。あえて自由度の高い委員会にしました」と松尾教頭は説明する。「こんなことできるでしょうか」「こんなことがしたい」という生徒からの相談を教員が受け止め、アドバイスを与えて生徒の背中を押すスタイルで企画は進められる。委員会の担当教員もあえて固定せず、教員同士で情報を共有しながら、生徒のアイデアや意欲を受け止め、周囲と調整しながら徐々に形にしていく。松尾教頭は「生徒の個性と主体性を重視し、教職員は徹底的に生徒を見守る役に徹しました」と話す。

 記念冊子第2号の中身を見ると、「1980年代の甲南女子へタイムスリップ」という記事があった。当時の再現写真を添えて、体操服や髪形の規則など今の学校生活との違いを分かりやすく示す構成になっている。編集にかかわった生徒は「1980年代から今への甲南女子の変化を知ることができ、100周年を迎える上でのつながりを感じることができてうれしかったです。もっと甲南女子を知りたくなりました」と話す。

 先輩たちとのつながりをテーマにした企画もある。ある生徒は2019年7月に神戸市内のホテルで行われた同窓会「清友会」の総会をリポートした。「先輩たちは、私たちの制服姿を見て、懐かしい気持ちになれたと喜んでくださいました。私たちがこうして卒業生の方々とつながることができたように、未来の甲南女子につなげていきたいと思います」

「自慢のOG紹介」に登場する卒業生の画家、古賀陽子さん
「自慢のOG紹介」に登場する卒業生の画家、古賀陽子さん

 「自慢のOG紹介」という企画もある。その中に登場する画家の古賀陽子さん(57回生)は、卒業後イギリスの美術大学に進学し、プロの画家になった。2017年に公開された、ポーランド・イギリスの国際共同制作油絵アニメーション映画「ゴッホ~最期の手紙~」の制作に参加した125人の画家の1人だ。「映画制作の画家を公募していると知り、すぐにポーランドに渡りました。採用試験に合格し、私と同じように世界中から集まってきた画家と一緒に4か月間の制作期間を過ごしました。なりたい自分になるための決断力、行動力は、甲南女子で学んだおかげだと思います」と振り返っている。

コロナ休校で感じた日常への感謝を動画に

 生徒たちの「100周年委員会」は、新型コロナウイルスの流行という状況にも敏感に反応して、ユニークな記念企画を生んだ。生徒会長の丸野莉彩子(りさこ)さん(高2)たちが進める「ありがとうを伝える動画」の制作だ。

 「この春、コロナの影響で休校となり、2か月間ずっと家にいるという特別な体験をしました。気付いたのは、当たり前だと思っていた日常はみんなのおかげだったということです。当たり前の日常に感謝を込め、『ありがとう』の言葉とともに生徒のメッセージを発信したいと先生に話しました」と丸野さんは企画の動機を話す。

 丸野さんは母親も甲南女子中高の卒業生だ。第2号冊子を母親に見せたところ、旧校舎の様子について「私が通っていた時と同じ」と懐かしそうに話すのを聞き、うれしかったという。また、動画制作に参加してくれた同級生は、母も祖母も卒業生だと知って、創立から100年という歴史の重みを感じたそうだ。

協働して新しいものを創造する

伝統の「第二校歌」について話す後田尚宏副校長
伝統の「第二校歌」について話す後田尚宏副校長

 後田尚宏副校長は「本校の生徒は、協働して企画を進めることや、新しいものを創造することを楽しみにしています」と話す。中学と高校の総合学習では10年以上前から、グループ単位でさまざまな課題に向き合う授業を展開しているという。

 また、新しいものを創造するという意味で象徴的なのは、同校の「第二校歌」の伝統だ。式典などで歌う「第一校歌」とは別の校歌で、毎年卒業を控えた高校3年生が作詞作曲し、卒業式で披露する。在校生たちは翌年の1年間、まさに第2の校歌として折々の学校行事などで歌い継ぐ。戦前は「甲南の乙女」という歌詞がよく使われたり、戦時中は軍歌調であったり、平成の時代にはJポップのような楽曲だったりと、時代の空気が反映されているという。後田副校長は「第二校歌は常に新しく生まれ変わりながら今に伝わる本校の伝統です」と語る。

 創立100周年の節目に、生徒たちは自分たちでアイデアを出し合い、ともに新しいものを創り上げ、それを後輩たちに受け継いでいく。「第二校歌」同様に、創造と伝統の精神が日々の学校生活をつくり上げているのを感じた。

 (文・写真:水崎真智子)

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1495753 0 甲南女子中学校・高等学校 2020/09/24 05:01:00 2020/09/24 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200923-OYT8I50014-T.jpg?type=thumbnail

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