【特集】国際理解へ向けて「鎌倉学」で日本を学ぶ…鎌倉女学院

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 鎌倉女学院中学校高等学校(神奈川県鎌倉市)は、中学生を対象に古都鎌倉の歴史、文化、自然などに親しむ活動「鎌倉学」を毎年実施している。国際理解に向けて自国のことをより深く学ぶための第一歩であり、地元の街への誇りと愛着を養う意義もあるという。11月4日、鎌倉市内を歩く「鎌倉学」の活動に同行し、教師や生徒らに話を聞くとともに、(にしき)昭江(あきえ)校長に「鎌倉学」の趣旨を尋ねた。

地図を手に歩き、地域の自然・地理・産業を知る

「将来、『鎌倉学』プログラムは、より有意義なものとなっていきます」と話す錦校長
「将来、『鎌倉学』プログラムは、より有意義なものとなっていきます」と話す錦校長

 1904年に創立した鎌倉女学院は、古くから地元鎌倉の歴史や文化、自然などに親しむための散策活動を行っており、約20年前にそれを「鎌倉学」というプログラムとして確立させた。

 「本校は、1977年から英語教育及び国際交流に力を入れ、『英語の鎌女』という評価を得てきました。さらに、21世紀を目前にした時期に、『本当の国際理解のためには、まず、自国のことを理解することから始めるべきではないか』『日本のことをより深く知るために、古都鎌倉の中央に位置し、自然環境にも恵まれた鎌倉女学院は絶好の環境にある』と考え、本校でなくてはできない特色ある教育プログラムとして、『鎌倉学』をつくったのです」と、錦昭江校長は説明する。

 中1の「鎌倉学」のテーマは「地域の自然・地理・産業を知る」。「地図を持って歩く」と題して、縮尺1万分の1の地図を手に、由比ヶ浜、鶴岡八幡宮の二の鳥居など市内各所を歩いて回りながら、学校周辺の地形や標高を確認し、商店街の様子などを観察する。

「フィールドワークは防災教育にもなっています」と話す石井先生
「フィールドワークは防災教育にもなっています」と話す石井先生

 「このフィールドワークは、社会科の授業の一環として行っています。地図の見方を学び、実際に鎌倉の道を歩いて、標高差を実感としてとらえます。災害が起こった時の避難に役立つよう、学校近くの道路や建物について知る防災教育にもなっています」と、入試広報委員長・教務課課長代理の石井美咲先生は説明する。

 11月4日、1年生の「地図を持って歩く」に同行した。学年の生徒全員が、4人1班に分かれ、別々にチェックポイントを1時間程度かけて巡っていく。チェックポイントには石井先生ら教師が、各教科から交代で出て待機している。

 生徒たちは地図や当日の行程、注意事項などを書いた「鎌倉学ノート」を手に、チェックポイントを目指して元気よく歩いていく。時間管理も生徒に任されていて、グループで規律を守って行動するための訓練にもなっている。

 1年4組の一つの班の大川諒子(りょうこ)さんは、「今まで駅と学校の近くのことしか知りませんでした。鎌倉にもこんなふうに住宅や商店街があることを、初めて知りました」と話す。小笠原友里さんは、「外を歩いてみて、景色が良くて空気もきれいなんだと実感しました」と、梶谷莉央(りお)さんは、「お寺や神社を見ながら、古い歴史のある町なんだとあらためて感じました」と言う。また、山下琴音(ことね)さんは「中学に入って初めての行事で、みんなと一緒に歩けて楽しかった」とうれしそうだった。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、校外行事を予定通り実施できず、今回のフィールドワークは今年初めての課外活動だという。この日はクラスメートとの親交を深める貴重な機会となったようだ。

 同じく今年は中止となったが、例年はこの鎌倉散策のほかに「鎌倉職場体験・職場見学」が実施される。鎌倉市議会や鎌倉野菜を栽培する農家、老舗の商店などを訪れ、鎌倉で働く人々について学び、この街への誇りと愛着を養うという。

鎌倉の歴史を肌で感じる寺院見学

円覚寺を見学する中2生たち
円覚寺を見学する中2生たち

 中2のテーマは、「鎌倉の歴史や文化を学ぶ」。同じ日に社会科の授業の一環として、円覚寺、建長寺、明月院など近隣の寺を約2時間かけて訪ね歩く活動「フィールドワーク鎌倉散策」を行った。生徒たちは事前にそれぞれの寺の歴史や建物について調べており、実際に見学することによって鎌倉の歴史を肌で感じることが目的だ。

 JR北鎌倉駅に近い円覚寺で、境内を見学する生徒たちに同行した。本尊を祭る仏殿を訪れた生徒たちは、天井画の「白龍図」を見上げ、心打たれた様子で「きれいだね」「想像以上だね」などと感想を話し合っていた。また、住職らが通りかかると「おはようございます」「ありがとうございました」と丁寧にあいさつしていた。

 生徒たちの様子を見ていた石井先生は、「生徒たちはただ固まって歩くというのではなく、ルートを確認する生徒、時間を管理する生徒と、それぞれが自分の役割を担って動いています。例年は1班6人程度です。今年は密を避けるため1班4人としたのですが、少人数のほうが主体的に活動できるようです」と話した。

「地図を持って歩く」のチェックポイント、鶴岡八幡宮の二の鳥居
「地図を持って歩く」のチェックポイント、鶴岡八幡宮の二の鳥居

 2年4組の中村有沙(ありさ)さんの班では、一人一人が担当の寺を決め、それぞれの寺で他の生徒のガイド役を務めた。「私は東慶寺を担当しました。世の中との悪い縁を断つ縁切り寺として知られているんです」と話した。また、北条政子の墓がある寿福寺に興味を持ったという、別の班の石谷文乃(あやの)さんは、「授業で習ったことがそのまま目の前に現れたかのようでした」と感嘆の声を上げていた。

 中2はまた別の機会に、川端康成ら鎌倉ゆかりの作家の直筆原稿などを展示する鎌倉文学館を訪れ、近代文学の歴史に触れる。

 中3は、技術家庭科学習の一環として、学校が所有する畑で、サツマイモの収穫体験を行う。自分の手で土を掘るのは初めてという生徒が多く、土の中から虫が出てくることに驚いたりしながら、農業の実際を学ぶ機会となっている。今年は新型コロナウイルス感染に配慮し、調理は中止となったが、例年収穫した芋は家に持ち帰ったり、学校で調理したりするそうだ。

由比ヶ浜で標高を確認する中1生たち
由比ヶ浜で標高を確認する中1生たち

 中3はさらに、「日本文化の特色を理解する」というテーマの下、例年、京都・奈良への研修旅行を行う。中2までに調べてきた鎌倉と比べながら、日本の歴史や文化についての理解をさらに深める。こうして学んだことは学年ごとに1冊作成する「鎌倉学ノート」にまとめると同時に、学内でポスター発表などを行うそうだ。

 鎌倉という地域や日本全体について学ぶ中学の「鎌倉学」は、高校で「国際・環境学」へと発展する。外部から講師を招いて国際問題についての講義を受けたり、日本文化や環境問題について英語でプレゼンテーションを行ったりする中で、日本と世界を比較し、物事をグローバルに捉える力を養う。

 この6年間の総合的な学びを通して、社会の中で自ら問題意識を持つことを学び、将来のキャリア選択に結び付けていくという。

 「グローバル化が進展し、さまざまな国籍や価値観の人々が協働する社会が、近い将来到来します。そのような社会では、これまで以上に自己の基盤が堅固であることが求められるでしょう。その点で、本校の『鎌倉学』プログラムは、より有意義なものとなっていきます。『鎌倉学』のフィールドワークなどを通して得た経験や知識が『つながり』、生徒自身がそれらの価値を『つかい』、さらに新たな価値を『つくりだす』ことができるような教育を、これからも目指していこうと考えています」と、錦校長は抱負を語った。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート)

 鎌倉女学院中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1672265 0 鎌倉女学院中学校高等学校 2020/12/08 06:00:00 2020/12/08 06:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201203-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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