自主性高める課外活動で国公立大合格者が4倍増…箕面自由学園

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 箕面自由学園中学校・高等学校(大阪府豊中市)は、始業前のフリータイム「朝活」や、放課後の「デザインタイム」など、生徒の自主性を重んじたユニークな課外活動を行っている。「やらされるのでなく、生徒が自分で選び、決めることが大切」という田中良樹校長の教育方針の下、自由に選べるさまざまな課外講座や生徒の意思を尊重した進路指導が実施され、大学合格実績も急上昇を見せているという。課外活動の様子や今春からの中高一貫校化などについて紹介する。

学校文化として根付いた始業前2時間の「朝活」

キャンパスの長い並木道を登校する生徒たち
キャンパスの長い並木道を登校する生徒たち

 「学園坂」と呼ばれる同校キャンパスの長い並木道は、朝7時ごろになると、登校する生徒たちでにぎやかになってくる。高校棟の玄関が開き、図書館脇の自習室や各教室で、教科書やタブレット型端末などを手にした生徒たちが朝の自習を始める。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う約3か月の休校が明け、学校は6月1日から再開した。「学校文化として根付いてきた」と田中校長の言う朝の自習風景が、ようやく戻ってきた。

 朝の自習が本格的に始まったのは2年前。その年の4月から授業開始を20分遅らせて朝9時とし、登校開始の朝7時から始業までの2時間を自由に使えるようにした。このフリータイムを、同校は「朝活」とネーミングしている。生徒たちは自分の考えで、早く登校して自習やクラブ活動をしてもいいし、ゆっくり登校してもいい。

「子供たちが明るく毎日通える学校を目指しています」と話す田中校長
「子供たちが明るく毎日通える学校を目指しています」と話す田中校長

 田中校長は「“朝勉”を続けた先輩たちの背中を見て、黙っていてもやる子がどんどん増えてきました」と話す。この春は、大学入試最終盤の3月になっても、自習する生徒のため校舎には早朝から明かりがともっていたという。生徒に付き添う教師たちの熱心なサポートもあり、国立大の後期入試で18人が合格を勝ち取った。

 同校は全国優勝常連の高校チアリーダー部など、盛んな部活動で知られるが、近年は大学進学の実績でも注目を集めている。国公立大(防衛大学校を含む)の合格者数は2年前に22人だったが、今年は東大や京大、阪大などに89人と約4倍に急増した。関関同立の合格者も95人から141人と、この2年間で大きく伸びた。

 この実績向上について田中校長は、「私たち教師が言ってやらせるのでなく、生徒たちが自分で『こうしたい』と思い、その気になって夢に向かって努力するようになってきた。理由はそれだけでしょう」と話す。「ただ、大学合格の数字はあくまでも結果。一人一人の生徒がどう考えたのか、プロセスを大切にしたい」

放課後、多彩な手作り講座を自由に選べる時間

人気を集める「デザインタイム」の韓国語講座
人気を集める「デザインタイム」の韓国語講座

 この「朝活」に加えて同高は3年前から、放課後にも生徒が自分で過ごし方を選べる「デザインタイム」を設けている。いずれも生徒の自主性を高めるための工夫だ。

 「デザインタイム」は週4、5日。平日は6、7限の授業が終わる午後4時前後から、下校時間の夜7時までの3時間となっている。教師たちが手作りした課外講座が、日替わりで学年ごとに1日5~10講座用意され、生徒たちはその中から好きな講座を選んで、思い思いに放課後の時間を「デザイン」する。

 「もちろん放課後は早く帰って休んでもいいし、習い事や塾に通うのも自由です。クラブ活動と講座を組み合わせる子もいます。いろいろな選択肢を用意し、子供たちに自分で選び取る経験をたくさん積ませてやりたいのです」と田中校長は話す。

 講座の内容はバラエティーに富む。昨年度の高1のメニューを見ると、ネイティブの講師との「オンライン英会話」、難問に挑戦する「難解数学」、英検や数検の受検対策から、作詞作曲をするソングライティング、書評合戦のビブリオバトル、プログラミングによるゲーム作成、基礎韓国語、グローカルリーダー講座などさまざまだ。高3になると、「難関国公立大入試演習物理」「関関同立対策日本史」「数学3実力養成講座」など、受験対策の色彩が濃くなる。

 「自分でやりたい講座を選ぶので、授業ではうとうとしてしまう子も、ここでは居眠りしません」と田中校長は笑みを浮かべる。

 中学校でも今年度、中学版「デザインタイム」として、7月頃から放課後に「Jタイム」を始める予定だ。中学生は、まだ自分で選択する力が十分ではないので、講座の内容は主要教科の基礎と発展が中心になるが、「無理やり子供たちを残して補習させるのはナンセンス。『おもろいなあ、じゃあ、もっとやってみよう』と思わせる時間にしていきたい」と田中校長は話す。

「自分で決めて、努力して、努力して、つかみ取れ」

開いている時間はいつでも進路相談に立ち寄れる「キャリアセンター」
開いている時間はいつでも進路相談に立ち寄れる「キャリアセンター」

 就任5年目となる田中校長を先頭に、同校は「進化がとまらない学校」のキャッチフレーズで改革を続けている。大きな目的は、生徒の自主性を育むことにある。その背景には、田中校長が長年、他の私立中高の教師として歩んできた中で得た教訓があるという。

 校長就任以前、田中校長は地元有数の進学校と大学付属校に合わせて25年勤めた。元気に巣立っていった教え子がいる一方、進学校では「やらされる」受験勉強で燃え尽き、大学で伸び悩む卒業生の姿もあった。大学付属校では成績順で輪切りにされ、「自分で選んでいない」学部に進み、愛着が持てずに中退する多くの教え子を目にしてきた。

 「やらされる」勉強や、「自分で選んでいない」進路では、やがてつまずいてしまう。田中校長がたどり着いたのが、「自分で決めて、努力して、努力して、つかみ取れ」という教育理念だ。

 「人に相談してもいいけれど、まず自分で決めること。お父さんやお母さんに言われても、自分で決めなければいけない。そして、自分で決めたからには、勉強でもクラブでも、それに向かって徹底的に努力して、努力して、自分でつかみとる。失敗しても全然構わないし、やり直しはいくらでもできる。失敗から学ぶこともつかみ取るんです」と、田中校長は力を込めた。

 こうした教育理念を進路指導につなげるため、2年前に進路相談室「キャリアセンター」を開設した。公立高校で長年、進路指導部長を務めた経験を持つセンター長を始め、スタッフは6人。平日は朝8時から夕方5時頃まで開いており、生徒はいつでも立ち寄れる。保護者からの電話相談も受け付ける。

 「偏差値通りに志望校を決めることはしません。一人一人じっくり話を聞き、その子が本当に何をしたいのかをあぶり出す。大学ではなく、学部学科で選んでいきます」

 今春卒業した一人の女子生徒は「キャリアセンター」で相談を重ね、和歌山大学観光学部を志望し、AO入試で合格した。相談の中でスタッフは、女子生徒の両親が長崎県の壱岐島(いきのしま)出身で、今も祖父母が暮らす自分のルーツの島を「元気にしたい」という思いを聞き、調べたところ、同学部に壱岐島の地域振興を研究テーマとしている教授がいることが分かった。女子生徒は同大のオープンキャンパスを訪れ、教授にも会って話を聞き、意思を固めたという。

今春から中高一貫校として新しいスタート

 これまで同学園の中学生は、高校へエスカレーター式に進むのでなく、全員が高校受験をする仕組みだったが、4月から中高一貫校として新たにスタートした。新中1生から原則、全員が同じキャンパスの高校へ進学し、6年間の一貫教育が行われる。

 中学は「理数探究コース」「グローバルコース」の2コースに分かれる。理数探究コースでは、3年間で70テーマ以上の実験を通して、理数的思考力や表現力を中心とする幅広い学力を養う。グローバルコースでは、将来、国際人として通用するように、高い英語力やコミュニケーション力の育成などに力を入れる。

 「私たち大人の知らない世界で、子供たちは生きていきます。自分で決めて、自分で歩んでいく。少々失敗しても、くじけない太い幹の子供に育てないといけません。それでも、嫌なことは長続きしません。勉強も楽しくて面白くて、子供たちが明るく毎日通える。そんな学校を目指しています」と、田中校長は笑顔で抱負を語った。

 (文・写真:武中英夫 一部写真提供:箕面自由学園中学校・高等学校)

 箕面自由学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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