【特集】生徒の主体性を引き出すICT教育…森村学園

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 森村学園中等部・高等部(横浜市)は昨年度から、ICTの活用で認知能力を高め、生徒の主体性を引き出す試みを始めた。日頃の学習の効率化はもとより、Microsoft認定教育イノベーターである教諭が顧問を務めるサッカー部では、ドローンで撮影した映像の分析などによって生徒たちがプレーの課題を主体的に解決し、試合での実績につなげているという。担当教諭らにICTの活用ぶりと今後の展望を聞いた。

生徒たちの自己管理意識が高まる

「この時代の中でどうICTを使うか、デジタルの中でどう過ごすかということを学んでほしい」と話す入試広報部副部長の江口教諭
「この時代の中でどうICTを使うか、デジタルの中でどう過ごすかということを学んでほしい」と話す入試広報部副部長の江口教諭

 同校は、予測不可能な未来に国際社会で貢献できる人財を育む「未来志向型教育」を推進している。この教育は、言語技術教育を基礎とする「外国語(英語)教育」「PBL(課題解決)型授業」「ICT環境」の3要素から成り立っており、特に「ICT環境」の活用は、双方向的・主体的な学びを実現するうえで重要な要素になっているという。

 Microsoft認定教育イノベーターで入試広報部副部長の江口徹教諭は、「ICTの活用によって、社会で求められていく自己決定力、自己管理能力などを育み、生徒たちの主体性を引き出したい」と話す。「情報リテラシーを高め、単純にテクニカルな部分だけではなく、この時代の中でどうICTを使うか、デジタルの中でどう過ごすかということを学んでほしいのです」

 江口教諭によると、同校は、各教室100人まで同時にインターネット接続ができるようにWi-Fi環境を整えており、現在、Microsoft社のSurface Go(2in1PC)を中等部1年生~高等部2年生の生徒が1人1台所有している。

 昨年4~6月の休校期間中は、MicrosoftのTeamsを活用して朝礼やホームルームを行い、学年単位やクラス単位の連絡や情報交換、アンケートの回収などにもICTが活躍した。現在も、課題の提出の多くはTeamsの機能を使って行われている。これによって教員は、生徒が課題に要した学習時間や 進捗(しんちょく) 状況をチェックすることができるため、一人一人により細やかな指導を行うことができるという。

 また、Teamsを活用する中で、生徒たちの自己管理意識も高まってきたそうだ。同じくMicrosoft認定教育イノベーターである高田昌輝教諭によると、Teams上にはさまざまなチームがあり、その中にいくつものチャンネルがある。そのため、生徒自身がしっかりと情報を管理していないと重要な情報を逃してしまうことになるからだという。「大事な情報をスルーして痛い思いをすることも大事な経験だと思っています。学校でのICT活用が、自分にとって有益な情報を取捨選択する力を身に付けるための訓練の場になればと思っています」

 ICTの活用が浸透してきた現在では、生徒の方から使い方の提案が上がってくるようになった。例えば、自由課題研究でTeamsを使ってクラスメートにアンケートを取りたいとか、平家物語の一場面を劇に仕立てて発表するという国語の授業で、背景用にスライドを作成してBGMを流したいなどの要望も出されているという。

課題を認知させ、練習の質を高める

ドローンでプレーを撮影し、練習の質の向上に役立てているサッカー部
ドローンでプレーを撮影し、練習の質の向上に役立てているサッカー部

 江口教諭は「2in1PCは学校生活をより効率化し、教育成果を出やすくするためのツールです。授業だけでなく、ホームルームや部活動などさまざまな場面で、文房具のように使ってほしい」と話す。

 その江口教諭が、顧問を務めるサッカー部を強化するために、活用しているのがやはりICTだ。「私が顧問に就いた2年前は、生徒たちのやる気は感じられるものの、どう課題を設定し、何を改善したらいいのか分からず、とりあえず練習をしているというような状態でした」と江口教諭は当時を振り返る。

 プレーを上達させるにはどうしたらいいのか。江口教諭は、その糸口としてドローンやタブレットで生徒たちのプレーを動画で撮影・編集し、動画共有サービスの「Microsoft Stream」にアップして、生徒たちが好きな時に繰り返し見ることができるようにした。部員たちそれぞれに自分の課題を認知させるためだ。「生徒たち自身が、理解し納得して課題を見つけることで各自の練習の質は高まっていくからです」と江口教諭は話す。

 生徒たちだけでは理解が及ばない場合は、江口教諭がパワーポイントのスライドと動画を使って解説し、課題の発見を促した。さらにその課題を克服する中で次の課題を見つけ、実践するというサイクルを定着させていった。

 部員の石幡史泰君(高3)は、「動画を使うことによって動きを客観的に見ることができるので、プレーの復習がしっかりできるようになり、自分たちで中長期の課題設定ができるようになりました」と話す。同じく部員の稲葉遼君(高3)は、「最初は自分のプレーばかりを見ていましたが、動画を繰り返し見ているうちにチームメートや相手チームの目線で動画を見たりするようになり、物事を見る視野が広くなりました」と言う。

 ICTを活用した練習の成果は、7月に行われた全国高校サッカー選手権神奈川予選で発揮された。江口教諭を喜ばせたのは、3年ぶりの初戦突破という成果だけでなく、ハーフタイムに指示を出す必要がないほど、生徒たち同士で意見を交わしあう積極姿勢が見られたことだ。

 「模索しながらのICT活用でしたが、私が想像した以上に生徒たちは主体性を身に付けてきています。もっと練習がしたい、限られた時間内でもっと練習の質を高めたい、そういう思いで自ら考え行動できるようになったことはとても価値のあることです。これまで培った手法や考え方をぜひ後輩たちにも伝えていってほしいと思います」

ICTを使って社会ともつながる

ICTの活用によって、生徒一人一人により細やかな指導を行うことが可能になった
ICTの活用によって、生徒一人一人により細やかな指導を行うことが可能になった

 サッカー部での取り組みは、卒業生も見られるように動画などをオンラインで発信しているという。「なかには興味を持って練習を見に来てくれるようになったり、『大学受験で悩みがあれば相談に乗るよ』などと声をかけてくれたりする卒業生も出てきました。こういうこともオンラインを使えば簡単にできます。ICTを使いながら社会ともつながっていき、サッカー部を、生徒一人一人の未来を見据えた教育的価値のあるコミュニティーにしていきたいと思います」と江口教諭は抱負を語る。

 一方、学習面でのICT活用について高田教諭は、「ICTを使ったからといってすぐに学業の成績が伸びたりするわけではありませんが、物事に主体的に取り組み、充実した学校生活を送るためのツールとして大いに活用していってほしいと思っています」と話す。

 取材で見てきたように主体的な活用が続く限り、ICTは、生徒にとって寄りかかる (つえ) でなく、飛躍のバネになってくれることだろう。

 (文:熊谷那美 写真:中学受験サポート 一部写真提供:森村学園中等部・高等部)

 森村学園中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2383489 0 森村学園中等部・高等部 2021/09/28 05:01:00 2021/09/29 09:35:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210921-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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