【特集】デザイン思考でイノベーション起こせる人材を育てる…常翔啓光学園

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 常翔啓光学園中学校・高等学校(大阪府枚方市)は2016年から、大阪工業大学と連携して「デザイン思考講座」を中1生向けに実施している。生徒たちは講座で5段階のユニークな思考プロセスを身に付ける一方、さまざまな企業とコラボしての商品開発やモノづくりにそれを応用している。この講座を通して生徒には柔軟な発想や主体性が育まれているといい、同校は実施対象学年を高1までの4学年に広げる考えだ。

先入観のない中1の段階で「デザイン思考」を養う

「作業に熱中する生徒たちを見ると、ひしひしと可能性を感じます」と話す岩村教頭
「作業に熱中する生徒たちを見ると、ひしひしと可能性を感じます」と話す岩村教頭

 同校が、大阪工業大学と連携した「デザイン思考講座」を中1生向けに開講したのは2016年。この授業のきっかけとなったのは、その前年に岩村聡教頭が大阪工業大学の大宮キャンパスで開催された市民講座に参加したことだった。同大とトヨタ自動車が連携して開いた「2040年のパーソナルモビリティをデザインする」というタイトルの講座で、その場でデザイン思考についてのワークショップが行われた。

 「参加者は企業経営者や技術者がほとんどで、教員は私だけでした。私の出した自動車デザインのアイデアは『魚と一体化する』というもので、とっぴな発想で受け入れられないかという不安もありましたが、プロトタイプ(模型)を作ってプレゼンテーションすることができました。とても興味深い内容で、大人よりも先入観や社会通念に影響されない中学生なら、豊かな発想が出るのではと思い、実施することにしました」

 初年度の「デザイン思考講座」は、岩村教頭が参加した市民講座と同じテーマ・内容で、土曜日の午後に同大梅田キャンパスで開かれた。中学1~3年生から参加者を募ったところ、27人が応募した。「生徒からは『走れば走るほどマイルがたまる』『認知症で 徘徊(はいかい) する高齢者を探す』など、自由なアイデアがたくさん出ました」。この講座で確かな手応えを感じ、同校は翌年からは中1生の必修授業にした。

付箋を使ってアイデアを出し合う生徒たち
付箋を使ってアイデアを出し合う生徒たち

 同校のデザイン思考は、課題について共感してありのままを受け入れる「観察分析」、目標を定めて達成に向けてアイデアを出す「アイデア創出」、アイデアの実現性を確認するためのプロトタイプを作る「プロトタイピング(具現化)」、さらに「まとめ・検証」と「発表」の五つのステップで構成されている。

 講座での実際の作業では、生徒たちはまずグループをつくり、縦横の軸を書いて四つのスペースに分けた模造紙などに、自由に開発商品などのアイデアを書き出した付箋を貼り分けていく。次にそれを基に粘土などを使って作品を試作し、作品のコンセプトがニーズに合っているかなどを検証したうえで、発表する。最後に、それに対する意見をもらって改善を加えるという流れになっている。

企業や大学とコラボして商品開発に取り組む

 デザイン思考はもともと、デザイナーがデザインを行う際に用いる考え方や発想の手法を発展させた思考法であり、主にビジネスの世界で、顧客のニーズを満たす製品・サービス開発、人材研修などに使われてきた。この講座でも、早い段階から商品開発やモノづくりを体験させ、社会課題に向き合う力やものの見方を育むことを目的に、企業や大学とのコラボレーションを実践してきた。

 開講2年目の2017年は、先端技術機器サービス企業「iPresence」(神戸市)と連携し、「未来のテレプレゼンスロボットをデザインする!」というテーマに取り組んだ。19年度は、機械・自動車部品製造会社「ジェイテクト」と連携し、「自動運転車の中でしたいこと、ほしいものやサービス」というテーマで実施。この年、夏休み中に中学1~3年の希望者を対象として、校内で実施する徳島大学との連携講座もスタートした。

 20年度もコロナ禍のなか、ITソリューション事業の「アサヒビジネスソリューションズ」と連携して、「冷蔵庫の中のソリューション」というテーマでリモート開催した。組織系設計事務所の「類設計室」の協力を得て開かれている「未来の学び場を創る!」というテーマの講座は、18年以降毎年続いており、今年も例年通り10月に実施される予定だ。

 「『未来の学び場を創る!』という課題では、100個以上のアイデアを出すグループもありました。3時間に及ぶ作業に熱中する生徒たちを見ると、ひしひしと可能性を感じます」と岩村教頭は言う。

 また、これらの講座を通して生徒からは「将来は福祉ロボットを開発したい」「普段何げなく使っている製品にも、いろいろなアイデアが詰まっていることが分かった」「グループワークで意見交換できて楽しかった」「コミュニケーションが大切だと感じた」などの声が上がっているという。

柔軟な発想と主体性を発揮する生徒たち

高3生に向けた応援メッセージ入りのちょうちんを作る中学生
高3生に向けた応援メッセージ入りのちょうちんを作る中学生

 岩村教頭は、これまでのデザイン思考講座を通じて、生徒の中に既存の枠組みにとらわれない「柔軟な発想」や、自ら考え行動する「主体性」が育ってきたと感じている。

 「昨年は、コロナ禍で文化祭が中止になりました。すると、『高3生がこのまま受験に向かうのはかわいそうだ』と、高2の生徒会長が中心となり、10月の土曜日に高3生を応援するイベントを開きたいと言ってきました」

 感染予防対策もしっかり考えていたため実施を許可したところ、高2生はダンスなどの動画、高1生は世界旅行を疑似体験できる展示物を制作し、中学生はちょうちんにメッセージを書いて校内に飾り付けたという。

 「励ましを受けて高3生は喜んでいましたよ。それで今度は、『中学・高校・大学入試に挑む全国の受験生を応援したい』と提案してきました。新型コロナウイルス感染予防対策に一緒に取り組みましょうという主旨のチラシを作成して、駅前で配り始めたんです。枚方市や教育委員会も巻き込み、多くの人から好意的な反響が得られました。成長する生徒たちを見て誇らしく思いました」

 こうしたデザイン思考講座を通しての生徒の成長ぶりを受けて、同校は今後、デザイン思考講座を中1から高1までの4学年に拡大することを検討している。

 岩村教頭は「デザイン思考講座では、相手の意見を否定しないことを徹底しています」と言う。「アクティブラーニングでも同様で、相手の立場に立ち、人の話を聞くことが大事です。協働するためのコミュニケーション能力を身に付けて、将来、イノベーションを起こせる人材に育ってくれればと願っています」

 (文・写真:石上元 一部写真提供:常翔啓光学園中学校・高等学校)

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2397534 0 常翔啓光学園中学校・高等学校 2021/10/01 05:01:00 2021/10/01 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210927-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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