【特集】社会に目を向け、人間力を養う探究学習…雲雀丘学園

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 自らの力で人生を切り開く「自立型人間」の育成を教育目標に掲げる雲雀丘学園中学校・高等学校(兵庫県宝塚市)は、2019年度から三つに分けた新しいカリキュラムで探究学習を実践している。このうち企業や大学との連携で進められる「探究プロジェクト」は、生徒たちが社会に目を向け、人間力を養う上で格好の場になっているという。その一環として生徒たちが取り組む「起業体験プログラム」を取材した。

「自立型人間」の力を付ける「探究プロジェクト」

「探究学習を通じて、社会で生きるための人間力を養ってほしい」と話す奥教諭
「探究学習を通じて、社会で生きるための人間力を養ってほしい」と話す奥教諭

 同校の探究学習は三つに大別される。中2~高1生を対象とし、週2時間の「総合的な学習(探究)の時間」で課題解決力の育成を図る「探究」と、企業や大学と連携して実施する課外授業「探究プロジェクト」及び、昼休み・土曜日や放課後に教員が専門性を生かし、多様なテーマで開講する特別授業「探究ゼミ」だ。このうち「探究プロジェクト」と「探究ゼミ」は、生徒が自由に選択して参加することができる。

 土曜日の7月17日に行われた「起業体験プログラム」は、「探究プロジェクト」の一環だ。企業OBの知識と経験を生かして教育支援を行うNPO「コアネット」の協力で行われているプログラムで、会社に見立てた生徒のグループが、それぞれ3万円の予算を与えられ、オリジナルの商品を企画して商品化し、校内で生徒や教員、保護者に販売するという内容だ。

 担当する社会科の奥修輔教諭によると、プログラムに参加しているのは高1、高2の28人。参加希望者は約50人いたが、それぞれのエントリーシートを読んで、より明確な目標や熱意を持った生徒を選んだという。

 「本校では、自分で人生を切り開いていける『自立型人間』の育成を目指しています。商品づくりをするには、自分たちで考えて行動しなければならず、『自立型人間』に必要な力がこのプログラムを通じて養えると考えています。ものづくりには多くの過程があり、さまざまな人が関わっていること、将来には起業という選択肢もあることなどを知り、視野を広げてほしい」と奥教諭は期待を込める。

活発な議論を通して商品開発のアイデアを練る

商品企画のアイデアを出していくために使われる「マンダラート」
商品企画のアイデアを出していくために使われる「マンダラート」

 このプログラムは全15回の構成で、この日は5回目。参加者は四つのグループに分かれて商品企画に取り組んできた。企画案は前回までにそれぞれ2案に絞られ、「勉強になるカレンダー」や「ジュエルキャンドル」「クリーナー付きストラップ」「ミニゴミ箱」などの商品企画が出そろった。

 この日の課題は、企画書作成と商品試作に向けての検討事項の話し合いだ。企画書作成では、 曼荼羅(まんだら) のようにデザインされた「マンダラート」というワークシートを使用し、そのフォーマットに考えたことを書き込んでいく。意見を出し合い、「商品」「デザイン」「価格」「製造」「宣伝」「販売」といった項目ごとに、関連するワードをワークシートに書き込んで企画内容を深めていく。

タブレット端末を活用して情報を収集し、企画内容を煮詰める
タブレット端末を活用して情報を収集し、企画内容を煮詰める

 一方、試作に向けての材料選び、コストや材料調達方法、試作の委託先なども検討された。生徒たちはタブレット端末を活用して情報を収集しながら細かく議論を進めていく。ときおり講師からアドバイスを受けると、その意見を踏まえてさらに議論は活発になった。

 教室の机に取り付けられる「ミニゴミ箱」の商品化を検討しているグループの辻 宙大(みちひろ) 君(高2)は、「安全性を第一に、ゴミ箱に人が当たらないように配慮した設置場所、ゴミが飛び出さない仕様を考えました。素材は何度も洗って使えるプラスチックにする予定です」と話す。

 「クリーナー付きストラップ」の商品化を検討しているグループの森上結衣さん(高2)は、「講師の先生から、『すでにある商品と差別化するアイデアが必要だ』というお話がありました。確かに、差別化できなければ自分たちで商品を作る意味がないと思ったので、これからもっと商品について突き詰めていきたいです」と意欲を見せた。

探究学習の体験が大学進学にもつながる

講師のアドバイスを受けながら、商品開発に向けての議論を深める生徒たち
講師のアドバイスを受けながら、商品開発に向けての議論を深める生徒たち

 この日のプログラムでは最後に、各グループの代表者が議論の成果と今後の課題について発表した。「校内放送で呼びかけて宣伝し、複数購入してくれた人には割引をして売り上げ向上につなげたい」「既製の商品よりもコストを低くできるように商品化を進めたい」「商品の特徴から、女子生徒向けのデザインを増やそうと考えている」などの発表があり、各グループでの議論の深まりを感じさせた。

 「起業体験プログラム」について辻君は、「社会での豊富な経験を持つ講師の方々には、販売時期を考慮しての商品企画、使う側の視点に立ってどんな機能があればよいか、安全面の配慮など、とても参考になるアドバイスをもらえました」と話す。 森上さんは「良い商品を作るために、いろんな意見をすり合わせて進めていく大切さが分かりました。私は意見をはっきり主張する方ですが、チームとして動く時は周りのことも考えなければならないと気付きました。他のメンバーからの意見を促すなど、活発な議論のために働きかけられるようになりました」と話した。

 奥教諭は、「しっかりとコミュニケーションして協働することを学ぶのも、このプログラムの目標の一つです。そのため、学年、クラス、コースも異なる生徒を組み合わせてグループを構成しました。今、まったく接点のなかった生徒同士でも、積極的に意見交換できている姿をうれしく思っています。前向きにプログラムに取り組みたいという生徒の気持ちの表れでしょう」と、目を細める。

 奥教諭は生徒に対して、このプログラムに限らず、興味のある探究プログラムに積極的に参加してほしいと望んでいる。探究学習を通して、自身の将来の目標を見つけた生徒や、体験を生かして大学進学につなげた生徒の姿を見てきたからだ。「『企業での研究体験や即興英語ディベートなどにチャレンジしたからこそ、現役で大阪大学の推薦入試に合格できた』と話してくれた卒業生もいます」

 「本校の生徒は真面目で、きちんと教科の学習をする生徒が多いです。ただ、学力に加えて、社会で生きるための人間力も養ってほしいのです。探究学習は、そうした力を身に付けるためにあります。本校では幅広い分野のプログラムを提供しているので、いろんなことを体験して学んで、将来に生かしてもらいたいですね」

 (文・写真:溝口葉子 一部写真提供:雲雀丘学園中学校・高等学校)

 雲雀丘学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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