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【特集】「本物」に触れて関心の幅広げるフィールドワーク…武南

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 武南中学校・武南高等学校(埼玉県蕨市)は「本物に触れる」教育を重んじ、毎年、中学の各学年でフィールドワークを実施している。プログラムの幅は芸術鑑賞から自然調査、企業・大学訪問、2年生のアジア研修旅行までと幅広い。さらに事前学習と事後学習を徹底することで体験を深め、知識の定着化を図っているという。この活動の内容や成果について取材した。

芸術・理科・社会・国際理解の4分野で校外学習

埼玉県の長瀞を訪問し、荒川の水質や岸壁の地層などについて学ぶ
埼玉県の長瀞を訪問し、荒川の水質や岸壁の地層などについて学ぶ

 同校は体験型の学習を重視し、中学では年間を通じて、さまざまなフィールドワークを実施している。その数は1学年で最低4回、3年間合計では12、13回に及ぶという。

 中学教務主任の津島亜沙子先生は、その狙いについてこう説明する。「今はインターネットで知識が得られる時代ですが、実際に自分の目で見て、体験して得る知識はまた違うものです。生徒たちも『本物に触れる』ことで、より興味や関心を持つでしょうし、学びの理解を深めることもできます。また本校が目指しているグローバルリーダーの育成にも、豊かな教養が必要であると考え、生徒がいろいろな分野の知識を身に付けられるよう、幅広くプログラムを設定しました」

 実施しているフィールドワークは、「芸術科」「理科」「社会科」「国際理解」の四つに大別される。

 「芸術科」では、芸術力を磨くために美術、音楽、日本の古典芸能の鑑賞を行っている。美術分野では、例年全学年で文化施設の集まる上野恩賜公園(東京・台東区)を訪れる。午前中は全員で東京国立博物館を見学し、午後は学年ごとに国立西洋美術館や東京都美術館などを見学する。

 音楽分野では毎年、全学年でオペラ鑑賞をしている。日生劇場(東京・千代田区)のオペラ鑑賞教室などに参加し、2018年はモーツァルトの「魔笛」、19年はプッチーニの「トスカ」、20年はドニゼッティの「ランメルモールのルチア」を鑑賞した。

能楽師に、すり足などを学ぶ生徒たち
能楽師に、すり足などを学ぶ生徒たち

 古典芸能分野では、1年生が歌舞伎、2年生が文楽、3年生が能と狂言を鑑賞する。3年生は事前に能楽師を学校に招き、講義を受けた後に、本物の能面を着けて、すり足で歩くなどの体験も行っている。

 「理科」では、1年生が「日本の地質学発祥の地」と呼ばれる埼玉県の長瀞を訪問し、現地の学芸員から荒川の水質や岸壁の地層などについて学ぶ。「埼玉県立自然の博物館」(長瀞町)にも足を運び、地質学や生物学についてグループで調べ学習をする。

 「社会科」では、1年生は鎌倉の散策を行う。事前にグループで計画した見学場所を、生徒だけで巡る。2年生はJICA地球ひろば(東京・新宿区)やユニセフハウス(東京・港区)を訪れ、発展途上国や紛争地域で行われている活動について説明を聞くなどしている。3年生は、キャリア教育を兼ねて民間企業や大学などを訪問し、「自分の将来・社会とのかかわり方を考えること」などをテーマに研究する。行き先は年によって変わり、これまでにパナソニックセンター東京(東京・江東区)や東京証券取引所、東京大学の研究室などを訪れ、講義を受けたり、ワークショップに参加したりしてきた。

 「国際理解」は、8日間のアジア研修旅行に参加する2年生が対象となる。訪問地はカンボジアとベトナムで、カンボジアではアンコールワットの見学や、遺跡の修復作業の体験をする。また、日本のNPO法人による支援活動や、日本ユネスコ協会連盟による「世界寺子屋運動」を視察する。ベトナムでは、ホーチミン市の国立レクイドン中学校を訪れて、授業に参加し、交流会を開くなどしている。

徹底した事前学習と事後学習

アジア研修でアンコールワットを見学する生徒たち
アジア研修でアンコールワットを見学する生徒たち

 これらのさまざまなフィールドワークに共通している特徴は、事前・事後学習を徹底していることだ。「生徒たちは、事前学習・フィールドワーク・事後学習という一連のプロセスを踏むことで、知識が確実に定着します」と、津島先生は話す。「たとえば芸術鑑賞の事前学習では、作者に関することや当時の文化、社会情勢などを調べ、それらを踏まえて、『自分はどういうところを中心に鑑賞するか』を、タブレットでまとめて発表しています」

 事前学習で自分なりの課題を明確にしておくことで、フィールドワークでの体験が深まり、その知識・体験が事後学習で定着するという考えだ。フィールドワークの中でも最もスケールが大きいアジア研修旅行では、約1年かけて事前学習を行う。「社会科」フィールドワークでのJICAやユニセフの訪問もその一環に位置づけられており、両国の経済、文化、歴史について調べ学習をする以外に、留学生を招いて言葉や文化を学ぶ機会を設けるなど、さまざまな角度から事前学習が進められる。

 事後学習では、作品の感想や自分が学んだことなど、フィールドワークの体験で得たものをタブレットでまとめて発表する。2019年のオペラ鑑賞ではさらに、「見ていない人が見たくなるような宣伝広告」を目標としてポスター制作にも取り組み、表現力の向上を図った。

 アジア研修旅行の事後学習は、期間中の活動記録報告とリポートの作成だ。事前学習の成果に、旅行中の体験を合わせてリポートにまとめ、保護者に中1生も交えた報告会でプレゼンテーションをする。

 2018年度は、「人や社会の『幸せ』とは何か。そして、自分の置かれている『幸せ』とは」というリポートテーマが出された。その時の研修旅行に参加した高2の角谷 栄玲花(えれか) さんは、「アジアを訪れる前は、人の幸せとは恵まれた環境にいることだと思っていましたが、充実した生活を送ることが幸せなのだと、考えが変化しました」とリポートに書いたそうだ。「カンボジアの寺子屋にいる子供たちは、つらい生活を送っていると想像していましたが、みな生き生きとして希望を持っていました。世の中には実際に見なければ分からないことがたくさんあり、事実を見て判断することの大切さを学びました」

現実を体験するから現実的に進路を考えられる

「実際に自分の目で見て、体験して得る知識はまた違うものです」と話す津島先生
「実際に自分の目で見て、体験して得る知識はまた違うものです」と話す津島先生

 津島先生は、「フィールドワークを通じて、生徒たちの興味関心の幅が広がっています」と話す。「これまで気に留めていなかった古典芸能のニュースに注目するようになったという話も、よく耳にします」

 また、「国際的な活動をしてみたい」と口にする生徒が増えるなど、将来の進路選択にも影響を与えている。「それまでグローバルな活躍ということに、国連や商社に勤めるといった限定的なイメージしか持てなかった生徒が、アジア研修や高1のアメリカ研修を通して、いろいろな活動の形を知ることができる。現実を見てきたからこそ、将来の進路も現実的に考えることができます。『世界で通用するには、これくらいの英語力が必要だ』ということも、実際に体験することで分かるのだと思います」

 今後のフィールドワーク活動について、津島先生は「事前・事後学習をさらに深化させたい」と話す。「調べ学習をする時に、『なぜこうなっているのだろう』『本当はどうなのだろうか』という疑問を、もっと突き詰めるように指導していきたいと思います。そこから出発して検証する中で、クリティカル・シンキングも養われていきます。事後学習では、プレゼンテーションのバリエーションが広がるとよいですね。そのためにも発表の機会を増やし、経験を重ねることで、表現力の向上を目指していきたいと考えています」

 (文:北野知美 写真:中学受験サポート 一部写真提供:武南中学校・武南高等学校)

 武南中学校・武南高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2122886 0 武南中学校・武南高等学校 2021/06/15 05:01:00 2021/06/17 09:36:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210614-OYT8I50005-T.jpg?type=thumbnail

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