【特集】ICT教育と礼節ある校風の調和を求めて…貞静学園

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 貞静学園中学校・高等学校(東京都文京区)は、コロナ禍に伴う休校明けからオンライン授業と対面授業を併用した新しい授業を展開している。授業以外でも、教師からの提案を受けて、生徒たちもオンラインで生徒会選挙を実現するなど、校内でICT(情報通信技術)の受容と活用が急速に進んでいるという。こうした動きの背景について佐藤好次校長と、ICT教育の担当教諭らに話を聞いた。

受験対策講座や通常授業の解説もオンラインで

オンライン授業の早期実施に取り組んだICT推進委員の久保教諭
オンライン授業の早期実施に取り組んだICT推進委員の久保教諭

 4、5月は同校でもコロナ禍に伴う休校措置が取られた。6月から分散登校が始まり、7月には一斉登校に切り替わったが、現在も新規感染者数が増減している状況であるため、1コマ40分、6コマの短縮授業を続けている。ICT推進委員で教務部長の久保良一教諭は「下校時間が帰宅ラッシュ時間と重ならないようにするための配慮です」と説明する。

 また、休校期間中に学習が遅れた生徒もいることを考慮し、放課後の受験対策講座の動画を配信しているという。「たとえば、毎週火曜日は日本史と世界史の受験用講座を動画配信しています。Office365のTeamsの機能で動画がストックされていくので、生徒は自分のペースで勉強できるという利点があります。さらに通常の授業でも、短縮で授業時間が足りない分、対面授業と動画をうまく併用することで、先に進めやすくなります。たとえば、『演習と解説はTeamsでやるから、あとで見ておいてね』という具合です」

 募集広報部長で体育担当の本間智英教諭は、「対面とICTのいいとこどりです」と話す。「実は当校がICT教育を導入するにあたり、ロールモデルにしたのが足立学園さんです。広報担当者のつながりで、Teamsの使い方や、より具体的なオンライン授業の進め方などを惜しみなくアドバイスいただきました」と明かす。

 足立学園の担当者から教わった中でも、特に役に立ったのが、「Teamsでオンライン授業を始めるとき、みんなが集まるまでに音楽をかけたり、授業のイントロダクションになるような簡単な問いかけを用意したりするとスムーズに授業内容に入っていける」というアドバイスだという。「たとえば、『今夜の金曜ロードショーの映画は何だろう』と問いかけて、そのサウンドトラックをかけてみたりします。おかげでとてもうまくいっています」と本間教諭は感謝する。

 同校では、「コロナ禍はチャンスでもある」と捉えている若手教員が少なくないという。たとえば、生徒会選挙を目前にして、立会演説会も、全校生徒を集めた総会もできないなか、生徒会活動を担当する教員は、生徒たちに『Teamsを使ってオンラインでやってみないか』と投げかけた。生徒たちは、すぐさま立会演説会の代わりに、Teamsで「政見放送」のような動画を制作、配信し、投票までこぎつけたという。

 佐藤校長は「3密を避けるという観点で、体育祭、文化祭も中止せざるを得なくなりました。それでも、実行委員会の生徒たちは、何か別の形でやらせてほしいと積極的に提案してくるのです」と目を細める。

「コロナ禍で教育を止めてはならない」

Office365を活用し、課題配信、動画配信、双方向のオンライン授業を一本化している
Office365を活用し、課題配信、動画配信、双方向のオンライン授業を一本化している

 同校でこのようにICTの受容と活用が進んだのは、やはり休校期間中の教員たちの努力に負うところが大きい。一斉休校措置が取られた4月初旬、佐藤校長が、すべての教職員に向けて「どうか、教育を止めないでもらいたい」と声をかけると、教員たちは久保教諭を中心に、オンライン授業の早期実施に向けて走り出したという。

 同じくオンライン授業に取り組んだ他校の例では、学習配信アプリにアクセスが集中しすぎてサーバーがダウンしたり、処理に時間がかかりすぎたり、と多くの問題があったという。そこで同校が注目したシステムはOffice365だった。「昨年、校内のパソコンをWindows10に買い換えたとき、Office365がインストールされていたのです。たまたまだったのですが、『これは使える。このOffice365のシステムを使えば、課題配信も、動画配信も、双方向のオンライン授業も一本化できる』と、思い至りました。このシステムは、保護者が勤務先などで使っていてなじみがあったことも幸いしました」と久保教諭は話す。

「礼節とは教え込むものではなく、すり込まれ、にじみ出るもの」と話す佐藤校長
「礼節とは教え込むものではなく、すり込まれ、にじみ出るもの」と話す佐藤校長

 4月中には、課題とともにOffice365のIDを各家庭に郵送した。さらに4月30日、Teamsの機能を使い、全教職員が一堂にオンライン上に集まって、会議を開いた。「この時に、教職員のWi-Fi環境や端末機器について聞き取りをしました。そのうえで、翌日の5月1日に“密”を避けるため少人数単位でオンライン授業の研修会を行いました。年長の教員の中には、ICTに苦手意識を持つ先生もいましたが、一つ一つ丁寧に対応するうちに、次第に高度な動画を制作したり、自前でカメラやヘッドセットを購入したりするようにもなりました」と久保教諭は話す。

 教職員たちは準備を整えながら、各家庭に5月11日の週からオンラインで朝礼を始めることを告知した。最初は1クラスに数人でも集まればいいと想定していたが、初日から6割以上がオンライン朝礼に参加した。その状況を見て、翌週5月18日から1コマ50分、1日3コマのオンライン授業をスタートさせたという。

 「久保先生を始め、ICT推進委員は、寝る間も惜しんでシステム構築や対応に追われていました。その熱意のおかげで教育を止めることはなかったと思います」と佐藤校長は振り返る。「コロナ禍は確かに、これまで誰も経験したことがない窮地ですが、ここから学べることはたくさんあります。今年は形にならなくても、この問題に正面から向き合い、考えたという過程は、必ずや、この先に役に立つ。それが教育だと思います」

ICTを通じたきめ細やかな対応

「礼節を重んじる物柔らかな校風と硬質なICT教育をどう結び付けていくかが課題」と話す募集広報部長の本間教諭
「礼節を重んじる物柔らかな校風と硬質なICT教育をどう結び付けていくかが課題」と話す募集広報部長の本間教諭

 スピード感を持ってICT教育が進む反面、同校は、毎朝、登校した生徒たちが、校舎に一礼してから入室するなど、礼節を重んじる物柔らかな校風を特徴としている。本間教諭は「こうした校風と硬質なICT教育をどう結び付けていくか。それがこれからの課題になってくるでしょう」と語る。

 「当校らしいICTスタイルを模索していて、今の時点では、きめ細やかな対応が挙げられるでしょう。たとえば、高3生の3者面談は1学期のうちにTeamsで家庭と職員室、教室を結んで実施しましたし、受験用の面接の練習や志願書の指導なども、オンラインで行っています」

 ある生徒が、「これまでは授業を受けることは当たり前でしたが、この状況となり、授業を受けられることがどんなにありがたいことかが分かりました」と振り返ったそうだ。佐藤校長は「礼節とは教え込むものではなく、すり込まれ、にじみ出るもの」と語る。ICT教育と礼節の教育は、対立するより調和する関係にあるのかもしれない。

 (文・写真:田村幸子 一部写真提供:貞静学園中学校・高等学校)

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1621081 0 貞静学園中学校・高等学校 2020/11/17 05:01:00 2020/11/17 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201112-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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