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【特集】生徒を自らの興味や可能性に気付かせる体験学習…獨協埼玉

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 獨協埼玉中学高等学校(埼玉県越谷市)は、今年度就任した尾花信行校長のもと、体験を重視したさまざまな教育活動を加速化している。中学開設当時から尾花校長が提案してきた中学1~3年をステージに分けた体験プログラムに加え、高校での環境学習、平和学習、さらに今年度からは系列の獨協医科大学と連携した医療現場の見学なども始まる。これらの体験学習の意義や取り組みについて、尾花校長に聞いた。

中学では稲作、国内留学、職業、福祉を体験

体験学習の意義や取り組みについて語る尾花校長(左)と酒井副教頭
体験学習の意義や取り組みについて語る尾花校長(左)と酒井副教頭

 同校は、2001年の中学開設当初から、総合的な学習の時間で、さまざまな体験学習を実施してきた。学年ごとにテーマを設け、1年は「ネイチャーステージ」をテーマに稲作を体験、2年の「コミュニケーションステージ」は国内留学と職業体験、3年の「ボランティアステージ」は福祉体験をする。

 これらのプログラムを提案したのは、今年4月に校長に就任した尾花先生だ。尾花校長は、中学開設に携わったメンバーの一人で、カリキュラムの構築にも関わっていた。「体験型の学習は高校でも取り入れていましたが、中学ではもっと明確に打ち出したかった。多種多様な体験の機会を用意して、生徒の好奇心を引き出し、『もっと知りたい、理解を深めたい』と思える授業を作る。そして、生徒が自発的に学ぶことで、本物の知識を獲得してほしいと思いました」と、尾花校長は話す。

 「本校は、『自ら考え判断することのできる若者を育てる』ことを教育理念としています。それを実現するには、教員が一方的に『こうすれば、結果はこうなる』と教えるのではなく、生徒自らが『なぜそうなるのか』『どうしてこの結果になるのだろうか』と思考し、答えを導いていくことが大切です。そのプロセスの中で、体験はとても重要な役割を果たすと考えています」

近隣の農家の指導のもと、田植えを経験する中1生
近隣の農家の指導のもと、田植えを経験する中1生

 1年の稲作体験は、学校に隣接する田んぼを約1反(約992平方メートル)借りて、近隣の農家の指導のもと、田植えから稲刈りまで行う。「日本人の主食である米がどのように作られているのか、生徒に伝えたいと思いました。すべて手作業なので、大変ではあるけれども、生徒たちはカエルやザリガニなど生き物との触れ合いを楽しみながら、生き生きと活動していますね。さらに米作りを通して、生態系や環境問題、日本の農業政策について考えたり、食育を行ったり、幅広い学びを展開しています」

 収穫した米は、自分たちで炊いて試食する。また、「獨協米」と名付け、毎年入学式で、新入生にお祝いとして渡しているそうだ。

 2年の国内留学体験では、山梨県の河口湖畔のホテルで、2泊3日の「アメリカンサマーキャンプ」を実施している。期間中は朝から夜まで、アメリカ人のスタッフと行動を共にする。全員でアクティビティーを楽しんだり、6、7人のグループに分かれて英語のレッスンを受けたり、自分たちで劇を作ってステージで発表したりと、アメリカ文化と英語にどっぷりと浸かる。

社会福祉協議会の協力で白杖体験をする中3生
社会福祉協議会の協力で白杖体験をする中3生

 同じく2年の職業体験は、社会で活躍している人物を学校に招いて話を聞く会や、職場訪問などを行う。年によってプログラムはさまざまで、2019年は、「東京国立博物館」(東京都台東区)を訪れ、学芸員から具体的な仕事の内容や、仕事に対する思いなどを聞いた。同校の卒業生の縁で、東京・上野のアメヤ横丁の商店街で販売体験などを行っていた時期もあった。

 3年の福祉体験は、越谷市の社会福祉協議会の協力のもと、福祉やボランティアに関する講義を受けた後、障害スポーツの体験を行う。また、重りの付いたベストを着用する高齢者疑似体験や 白杖(はくじょう) 体験なども行ってきた。さらに毎年夏休みには、3年生全員が福祉施設などでのボランティア活動に参加している。

 教科の授業でも体験学習を重視しており、理科では年間数十回の実験授業がある。また、校内に設けたビオトープを活用し、定期的に生物や植物の観察も行っている。

今年度から獨協医大との連携や校内国際交流のプログラムも

現地の人たちから戦争体験などを聞く高2の沖縄修学旅行
現地の人たちから戦争体験などを聞く高2の沖縄修学旅行

 体験学習は高校でも、さまざまな形で実施している。1年の総合学習の授業では、年間を通して環境学習に取り組み、獨協大学に出向いて教授の講義を受けたり、環境をテーマに探究学習して発表したりしている。

 2年の沖縄修学旅行では、平和学習として、事前の調べ学習をもとに、現地の人たちから戦争の体験や平和活動について話を聞くなどしている。

 このほかに、今年度は二つの新しい取り組みが始まる。一つは、獨協医科大学と連携した学習プログラムだ。「今年度から獨協大学に加えて、獨協医科大学とも本格的な高大連携をスタートさせました。まず進学面では、2022年度の入試から、系列校推薦枠が新設されます。教育活動の具体的な連携は、現在、話し合いをしているところですが、大学の教授による講演会や、医療現場の見学や体験をすることは、ほぼ確定しています」と尾花校長は話す。

 もう一つは校内国際交流。全高1生約300人を対象に、日本に留学している大学生70~80人を招き、5日間にわたって英語を使って交流するプログラムを実施する予定だ。

一人一人に芽生えた可能性をくみ取り、サポートする

 体験学習は生徒の好奇心を引き出し、「本物の知識」の習得につながるばかりでなく、進路選択にも影響を与えているという。酒井直樹副教頭によると、例年の特徴として、中学から入学した生徒は、高校から入学した生徒と比べて理系を選択する割合が高いという。これについて酒井副教頭は「稲作体験や理科実験の多さなども関係しているのではないか」とみている。

 また、生徒の中には、体験学習が将来の職業に直結するケースもある。たとえば福祉体験が元で、理学療法士や介護士などを目指す生徒が毎年、一定数いるそうだ。尾花校長は「これから始まる獨協医科大学と連携したプログラムも、医学部を志望する生徒たちにとって、目標の明確化や勉強のモチベーションにつながればよいと考えています」と期待している。

 「さらに体験学習は、生徒が自分の興味や可能性に気付くきっかけにもなります。店の販売体験をして、『商売の仕組みを知りたい』『接客業に向いているかもしれない』と話す生徒もいます。また、外国人との交流を通して、ストレートに英語に刺激を受ける生徒もいれば、日本と環境の異なる人の考え方や、相手の国の文化に興味を持つ生徒もいるでしょう。このように生徒の興味の対象も、また、可能性が芽生えるタイミングも一人一人違います。だからこそ、こちらから『○○をしなさい』と押し付けるのではなく、いろいろな種まきをしてあげる。そして、教員がそれぞれの生徒に芽生えたものをくみ取り、サポートをして伸ばしていく。これが私たちの目指している体験学習のあり方です」

 (文:北野知美 写真:中学受験サポート 一部写真提供:獨協埼玉中学高等学校)

 獨協埼玉中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2145653 0 獨協埼玉中学高等学校 2021/06/24 05:01:00 2021/06/24 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210622-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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