【特集】半世紀の理数科教育から新たな一歩を踏み出す…日大豊山女子

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 日本大学豊山女子中学校・高等学校(東京都板橋区)は、都内で数少ない理数科を高校に置く女子校である。1971年に「理数Sクラス」を創設して以来、大学の医学部や薬学部、理工学部などへ多くの進学者を送り出してきた。さらに、約10年前に開始した同クラスの「課題研究」を通して高大連携を広げる一方、来年は、算数1科の中学入試を導入して、理数系に適性のある生徒を広く迎える構えだ。加速する同校の理数教育を取材した。

理数系のスペシャリスト養成を目指すクラス

「理数Sクラス」の半世紀の歩みについて語る柳澤校長
「理数Sクラス」の半世紀の歩みについて語る柳澤校長

 同校では、高校から普通科の「A特進クラス」「N進学クラス」と理数科の「理数Sクラス」という三つのクラスに分かれる。「理数科を開設したのは、1971年のことです。今は理数科を置いている高校は全国にありますが、都内の女子校の理数科となると、やはり本校は貴重な存在だと言えるでしょう。50年以上かけて日本大学医学部などへの進学実績を積み重ね、『女子で日大医学部を目指すなら、日大豊山女子へ』という評判を得るようになりました」と、柳澤一恵校長は話す。

 「A特進」は国公立大、難関私立大、難関学部への進学を目指すクラス。「N進学」は主に日大への推薦入学を目指す。「理数S」は、理数系のスペシャリスト養成を目指していて、日大の医学部、薬学部、歯学部などへの内部進学を志す生徒が多い。

 「最近は、理工系の学部に進んでエンジニアを目指すといった例も増えてきました。日大は、工学部、理工学部、生産工学部と、工学系の学部が充実していて、内部推薦の場合も自分のやりたいことを学ぶチャンスが幅広くあります」

 「理数Sクラス」は定員40人。同校は、併設型中高一貫校であり、理系女子の育成に注力している点を評価して、高校入試で「理数S」を志望する受験生が多いが、中学入試段階で早くも「高校で理数科があるから」と、同校を志す受験生も少なくないそうだ。

3年間の「課題研究」で研究者の姿勢を身に付ける

「課題研究では、理系の研究者に必要とされる一連の流れを体験する」と話す伊原先生
「課題研究では、理系の研究者に必要とされる一連の流れを体験する」と話す伊原先生

 「理数Sクラス」のカリキュラムの特徴は、普通科の2クラスと比べて数学、物理、化学、生物といった理系科目が多めに組み込まれていることと、内容も高度なものとなっていることだ。加えて、日大内部推薦に必要な「基礎学力到達度テスト」への対策として、現代国語や古典の授業も一定数含まれている。

 もう一つの大きな特徴は、10年ほど前から始まった「課題研究」だ。この授業では、生徒は3、4人ずつのグループに分かれ、数学、物理、化学、生物のいずれかの分野についてグループごとのテーマを決めて研究し、数回の中間発表を経て高3で最後の発表を行う。現在は、土曜日に2時間、この課題研究を行うための時間が設けられている。

 理数科教育研究推進委員会主任の伊原佳子先生は、「課題研究」についてこう説明する。「自分たちで研究テーマを決め、実験や検証を重ねてその成果を発表し、最後には一人一人が論文を執筆するという、理系の研究者に必要とされる一連の流れを体験するものです。グループでの話し合いや試行錯誤を経ることにより、総合的な課題解決力が養われます」

課題研究の発表をする生徒たち
課題研究の発表をする生徒たち

 1年ではまず理系の研究者としての心構えを学び、グループを作って教師のアドバイスを受けながら研究テーマを決める。2学期から実際に研究活動に入り、12月に学年でテーマ発表会を行ったのち、2月にスライド上映またはポスターセッションでそれまでの成果を発表する。

 2年では日大の教授陣の指導を受けつつ内容をブラッシュアップし、7月に後輩や教師、大学教授陣や保護者相手にプレゼンテーションを実施する。その際の講評を研究に反映させ、2月に仕上げのプレゼンテーションを行う。そして3年で、各自が自分の研究内容を日本語と英語で論文にまとめ、発表を行う。

 毎年、「課題研究」では、女子ならではの視点が生かされた研究テーマが並ぶという。これまでに、人間の顔の黄金比について数学を用いて分析した「人々が思う本当に美しい顔とは」や、せっけんの性能について化学の面から考える「油脂から作る 石鹸(せっけん) の汚れの落ちやすさ」などがあったそうだ。

 ちなみに中学の生徒にも、高校「理数Sクラス」のプレゼンテーションを見学するチャンスがある。高校の先輩たちの活躍を目の当たりにした経験から、自分も「理数Sクラス」に進んで研究活動をしてみたいという意欲が高まるという。例年十数人程度が中学から「理数S」に進んでいる。

 「生徒たちにとっては、上級生や卒業生たちが身近な目標、自分の理想の姿となります。『理数Sクラス』から医学部や薬学部に進学した大学生や、企業のエンジニアとして研究開発に携わっている卒業生などが講演に来てくれることもあり、将来の進路がさらに明確にイメージできるようになるようです」

高大連携の広がりと中学入試の新たな取り組み

高3生が日本語と英語で研究内容をまとめた論文
高3生が日本語と英語で研究内容をまとめた論文

 「課題研究」を糸口に、さまざまな高大連携の取り組みも広がってきている。「課題研究」の内容について日大の教授らにオンラインで指導を受けるほか、教授陣が来校して講義を行うこともある。ここ数年は、日大医学部の木下浩作教授が、専門とする救急救命医療についてワークショップ形式の講座を開催している。生徒たちにとって、「いざという場面で、自分ならどう行動するか」を真剣に考える機会になっているという。

 また、2月に行われた高1、高2の発表会には、日大のほかに、お茶の水女子大の教授やドローン関連会社の社長も招かれ、生徒たちの発表に対する講評に加わった。柳澤校長は、「今後も各界の方の協力を得て幅広く意見を仰ぎたい」と意欲を見せる。

 「理数Sクラス」を軸とする理系教育の新しい取り組みは、中学入試にも及ぶ。これまではオーソドックスな4科・2科型を中心として実施してきたが、2023年2月の入試から、算数1科入試が加わることになった。理数系への関心、適性、能力のある生徒を広く迎えたいという考えからだ。

 「理系の分野で活躍する女性を増やすべきであると、社会で広く言われるようになりましたが、本校は、50年以上前からそのための教育を実践してきました。今後、女子が得意とする医療、看護、生物などの分野だけでなく、建築やAI、ロボットなどさまざまな分野で、『理数S』の生徒たちが一層活躍してくれることを願っています」と、柳澤校長は語った。

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:日本大学豊山女子中学校・高等学校)

 日本大学豊山女子中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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