【特集】グローバル教育の新機軸で教室にワクワク感を…三田学園

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 三田学園中学校・高等学校(兵庫県三田市)は、創立110年を迎える来年度、ロボット製作を軸とする独自の「STREAM(ストリーム)教育」と、国際社会で対応できる能力を育成する「GCP(グローバル・コンピテンス・プログラム)」を始動させる。グローバル化への対応であるだけでなく、ワクワク感を取り入れたプログラムで生徒に勉強の楽しさを感じてもらう狙いだ。卒業生でもある丸泉琢也理事長に改革の具体策などを聞いた。

創立者の理念からくんだ教育のグローバル化

グローバル化に対応した教育について語る丸泉理事長
グローバル化に対応した教育について語る丸泉理事長

 現職に就任した2019年、丸泉理事長はトップダウンで「将来構想委員会」を設置し、若手の教員も交えて学校改革への具体的な道筋を探ってきた。その結果、出てきた改革のキーワードが、「世界標準の教育・人づくり」「グローバルリーダーの育成」だ。グローバル化、国際化が進む時代・社会に対応した人材育成の必要性を打ち出した。

 「教育改革の核であるグローバル化は、校祖の小寺謙吉先生が建学時に考えられたことを私なりに ()(しゃく) したものです。校祖自身が欧米で10年間学び、イギリスのパブリックスクールであるイートン校を模範に学園を建学しました。当時、最先端のシステムを取り入れ、世界標準の教育を進めようとしたのです」

 グローバル化への信念は自身の経験からも来ている。東京大学大学院で博士号を取得したあと、日立製作所の研究所に勤めた。企業研究員として、1985年4月から翌年12月まで、ノーベル賞受賞者を多数輩出しているスイス連邦工科大学で客員研究員として過ごした。世界一流の豊かな教養を身に付けたグローバルな人材と接することができたのは大きな財産になったという。

世界標準の教育を唱えたという創立者の小寺謙吉
世界標準の教育を唱えたという創立者の小寺謙吉

 「当時、私は35、6歳でした。感受性の強い中学生や高校生の時なら、もっと強い刺激が得られるはずです。グローバル化というのは、中高の教育でこそ非常に重要なことだと理解したのです」

 その後、武蔵工業大(現・東京都市大)の教授を経て、2020年12月まで6年間、同大の副学長として大学教員の視点から教育に携わったことも、グローバル化の必要性への確信を深めた。

 「今や、世界の大学は国際的なスペックを評価され、ランキング化が進んでいます。大学で行われていることは、近々に中学・高校にも及びます。三田学園も国際的な視点での教育を目指していくことが重要なのです」

ワクワク感が受験で燃え尽きた生徒を救う

 グローバル化は、受験で苦しむ生徒を救うためでもあるという。同校が習熟度別コースを導入した15年度に入学した生徒について、卒業までの6年間を検証した結果、中学受験で疲弊し、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥った生徒の多いことが分かった。そうした生徒はその後の6年間も勉強の成績が伸び悩んでいたという。この検証結果から、学校に欠けているのは、「学校に来て楽しい」「ワクワク感」という結論になった。

 「バーンアウトの生徒をどうすれば変えていけるのか。まず、中学1年の時にワクワク感とか、やってできるという自己効力感を持ってもらうのが大事です。『勉強は楽しい』と思わないと後が続かない。そこで、ワクワク感へのアプローチにしたいと考えたのが、『STEAM教育』とGCPだったのです」

 「STEAM教育」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)に、Art(アート・教養)の各分野を横断する学びだ。海外で導入が進むとともに、日本の教育現場でも広がっている。三田学園では、この学びの核にロボット(Robot)製作を据える方針であるため、「R」を加えて独自に「STREAM(ストリーム)」と呼んでいる。

自作ロボットを操作する物理部の生徒たち
自作ロボットを操作する物理部の生徒たち

 STREAM教育を進めるにあたっては、ロボット競技の強豪で全国大会3度の優勝経験がある物理部のノウハウを活用する。物理部の顧問教諭の指導で、デザイン、3Dプリンターでのパーツ作成、プログラミング、組み立てなど一連の製作過程を通し、数学・工学・美術などさまざまな学習要素を学ぶ。中1の1学期では、生徒一人一人が羽ばたき飛行機を製作する予定だ。遊びながら試行錯誤することによってワクワク感を高める。

 「ロボット作りには、数学の積分とかいろいろな概念を盛り込めるはずです。STREAMの中での先取り学習というのがあってもよく、新しいことを知るというワクワク感が出るんじゃないでしょうか」

 一方、GCPのGC(グローバル・コンピテンス)は、グローバルコミュニケーション力、文化横断的・相互的なものの考え方、多様性の尊重などから成り、これからのグローバル社会で生きる能力を指す。経済協力開発機構(OECD)が指標を定めて、3年に1度の国際学習到達度調査(PISA)で調べている。

 GCPについては、学校に経験がないため、外部の協力を仰ぎ授業をスタートさせる。まずは自分、家族、日本、世界などのテーマを、生徒主体で議論させ、まとめの発表はすべて英語で行う。これを数年続けていくことで、他者との意見の違いを知り、多様な物の見方、共感できる力を身に付けるとともに、自然に英語だけで議論できるようにしたい考えだ。

 STREAMとGCPの教科枠としては、来年度から中高に「総合科」を新設し、中学では「総合学習」、高校では「総合探究」の科目を設ける。中学1、2年では週3コマとし、STREAMとGCPに各1コマを、残り1コマにSDGs(持続可能な開発目標)を中心とした学習などを充てる。中3では週2コマとし、1コマでGCP、もう1コマでPBL(課題解決型学習)やキャリア教育などを実施する。高校1、2年では週1コマとし、GCPをメインに学ぶ。

校内の池に設けるビオトープでSDGs学ぶ

SDGs教育の教材として活用が考えられている校内の炭焼池
SDGs教育の教材として活用が考えられている校内の炭焼池

 「三田学園にいた頃、物事のとらえ方を教えてもらっていたら、大学、大学院ではもっと楽に過ごせたのではないかという思いがあります。今回の教育改革で生徒たちには、単に答えを聞く『ask』ではなく、いろんな情報を収集して統合する『inquire』の姿勢を身に付けてほしいです。これは、IB(国際バカロレア)の考え方でもあります」

 IBは、国際バカロレア機構が提供・認定する国際的な教育プログラムであり、このプログラムを修了すれば、国際的に通用する大学入学資格が得られる。同校は、IB認定校を目指すわけではないが、考え方に共感しており、16~19歳を対象とするIBのDP(ディプロマ・プログラム)を指導する資格を持つ教員を来春、採用する。

 この教員にはSDGs教育を担当してもらう予定だといい、その教材として活用を考えているのが、16万平方メートルの自然豊かな学校敷地内にある農業用水「炭焼池」だ。「炭焼池に自然のビオトープと人工のビオトープを作り、その違いで生物多様性について考えてもらいたいと思います」

 さらに、生徒のダイバーシティー(多様性)の面でもグローバル水準を目指すという。同校は09年に共学化し、男女でおおよその募集数を決めて選抜してきた。当初は男女7対3でスタートしたが、現在は6.5対3.5まで緩和している。24年には男女別の募集枠を撤廃する予定だ。

 「共学をスタートした時は施設の関係もあり、女子の人数を制限せざるを得なかったのです。それでも昔の、むくつけき男だけの学校からは変わったと思いますし、これからも変えないといけません。女性教員の比率も増やしていきます」

 時代の変化に遭遇した伝統校が創立時の理念を磨き直すことで、さらに躍進しようとしている。

 (文・写真:林宗治 一部写真提供:三田学園中学校・高等学校)

 三田学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2689065 0 三田学園中学校・高等学校 2022/01/27 05:01:00 2022/01/28 10:05:33 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220120-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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