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【特集】心を育て国際人の基礎を作るキリスト教教育…桜美林

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 桜美林中学校・高等学校(東京都町田市)は今年、創立100周年を迎えた。創立者である清水安三牧師は「隣人愛」「学而事人(がくじじじん)」という理念を唱え、人間教育に努めた。これらの理念は現在も同校の教育の柱として受け継がれ、学校生活や教育プログラムに生かされているという。同校のキリスト教教育が生徒たちの成長をどう促すのかなどについて、中学校教頭と「聖書科」教諭に聞いた。

キリスト教教育の要となる毎日の「礼拝」

学校のキリスト教教育について話す若井教頭
学校のキリスト教教育について話す若井教頭

 桜美林学園は、清水安三牧師が1921年、中華民国時代の北京市に設立した女子学校「崇貞学園」を前身とする。当時北京市に住んでいた貧しい子女を国籍に関係なく集め、学問と職業技能を身に付けさせ、社会的自立を助ける学校だったという。

 桜美林中学校の若井一朗教頭は「清水牧師が追求したのは、キリスト教の『隣人愛』と自ら唱えた『学而事人(学んで人につかえるの意)』に基づく教育です。人間一人一人を神につくられた『かけがえのない存在』と捉え、自分を愛するように人を愛する。そして、自分に与えられた『賜物』を生かして社会に貢献する考え方です。終戦後、日本に引き揚げた清水牧師は、同じ理念の下に桜美林学園を設立しました」と説明する。

 宗教部長を務める堂本陽子教諭によると、こうした理念はキリスト教主義による全人教育として学校の柱と位置付けられ、「いのちの教育」と呼ばれている。

 学校生活の中で毎日行われる「礼拝」はそうしたキリスト教教育の要だ。「礼拝」には週に1度学校のチャペル「荊冠堂(けいかんどう)」で行う40分程のものと、その他の曜日にクラスで行う5分程のものがある。

 チャペルでの礼拝は、全中学生と高校各学年で曜日を分けて行われる。前半は礼拝と賛美歌斉唱を行い、後半の「奨励」の時間では、チャプレンや教会牧師、学校教員、社会奉仕団体の関係者、また社会貢献活動に取り組む人物などを招き、命を尊ぶ考え方やその実践についての奨励を聞く。

 奨励の主旨や感想は、生徒一人一人が「礼拝ノート」にまとめる。堂本教諭は、「お話の内容を振り返り、自分を顧みる。同時に人の話を聴く力や、思考する力を育てます」と、その意義を話す。

 チャペル礼拝の際は、生徒が寄付金などを各家庭から持ち寄る。それを地域の福祉施設やホームレス支援団体などへ寄付している。「キリスト教行事の一つである花の日礼拝の日には、聖壇を生徒が持ち寄った花で飾りつけます。その花は放課後に生徒の手で花束にし、近隣の病院や高齢者施設に持参し、交流活動を行います。高校生になって自ら支援活動に参加する生徒も少なくありません」

 クラスでの礼拝では、生徒が持ち回りで司会を務め、賛美歌斉唱や聖書朗読、お祈りを行う。「聖書朗読は時期ごとにテーマを設けています。1学期は出会いや感謝、共生などにまつわる一節を読んで日々を過ごすヒントを見つけ、2学期は各福音書を通読して聖書の内容を理解します。12月は特にクリスマス関連の箇所を読みます。3学期は聖書で語られるさまざまな格言や知恵の言葉を通して、キリスト教の理念を学びます」

心の成長を促す「聖書科」や総合学習

「キリスト教文化の理解は、国際人として重要な素養になる」と話す堂本教諭
「キリスト教文化の理解は、国際人として重要な素養になる」と話す堂本教諭

 同校は正規の授業として「聖書科」を設けている。聖書科教諭も務める堂本教諭は、「イエスの生涯やその教えを通し、自分を深く見つめ、より良く生きるにはどうしたら良いかを考える授業です」と説明する。「高1までは必修です。高3では選択科目となりますが、医療福祉や社会貢献関連の進路を目指す生徒が受講しています」

 授業では、イエスの教えを学び、聖書のエピソードを現代社会にあてはめて考えたり、マザー・テレサやキング牧師の行動や信仰を社会背景を踏まえて読み解いたりする。それをさらにペアワークやグループワークによって意見交換し、思考を深める。「映画やドラマにも聖書の概念やエピソードを踏まえたものがあり、良い教材になります」

 堂本教諭は、こうしたキリスト教教育が生徒の心の成長を促すという。「年度末に1年間の振り返りを書かせますが、『自分が好きになった』など自己肯定感を持つ生徒が数多くいます。また、『身の回りのことを多面的に見るようになった』『物事を深く考えてみるようになった』など、思考力の成長を自覚した感想も見られます」

 「隣人愛」「学而事人」の理念を踏まえ、生徒の心の成長を図る教育は、中学の総合学習のカリキュラムにも組み込まれている。

 中1では「自己理解」と「他者理解」をテーマに、スクールカウンセラーも参加してコミュニケーションの方法や対人関係のスキルを学ぶ。中2でのテーマは「食といのち」。学園内の畑で米やサツマイモといった作物や花などを栽培し、日々の世話や観察記録を通して自然の恵みを肌で知る。

 栽培した作物は学校行事の「収穫感謝礼拝」で祭壇に(ささ)げ、その後はホームレス支援施設に炊き出しの材料として寄付される。夏は長野県飯田市の農家にホームステイし、農作業の体験なども行う。

地理や歴史、先住民アボリジニの文化などを知る中3のオーストラリア英語研修
地理や歴史、先住民アボリジニの文化などを知る中3のオーストラリア英語研修

 中3でのテーマは「異文化理解」。12月に行われるオーストラリア英語研修の事前学習として、現地の地理や歴史、先住民アボリジニの文化などを調べ、ネイティブの教員との英会話学習やオンライン英会話を行う。

 「異文化理解は隣人愛の実践。互いの理解を深めるため、語学力は欠かせません」と若井教頭は話す。同校が用意している欧米やアジアなどへの短期留学プログラムでも、「隣人愛」「学而事人」の精神に沿った交流活動や奉仕活動が行われるという。「中3対象の2週間のフィリピン留学では、キリスト教主義の孤児院を訪問します。帰国後、文具やピアニカなどを集めて寄付する活動は、現地の話を聞いた生徒の報告がもとになっています」

国際人としての重要な素養にキリスト教理解

全中学生と高校各学年で曜日を分けて行われるチャペルでの礼拝
全中学生と高校各学年で曜日を分けて行われるチャペルでの礼拝

 堂本教諭は、キリスト教教育が「いのちの教育」であるだけでなく、「キリスト教文化の理解は、国際人として重要な素養になる」という今日的な意義を指摘する。「多くの国の歴史や文化の基盤に、キリスト教が深く関わっています。クリスチャンにならなくとも、ある程度の知識があれば、海外でのコミュニケーションや活動の大きな助けとなります」

 卒業生の話でも「桜美林でキリスト教について学んで良かった」という声は多いという。「ある卒業生は大学生として海外ボランティアで向かった先が、キリスト教、イスラム教、仏教などが混在する地域で、住民の考え方や立場を理解して行動に生かせたと喜んでいました。美術や歴史の領域に進んだ卒業生にとっても、キリスト教の知識は強みになるようです。在学中『宗教なんて大学受験科目にないのに』と言っていた生徒も、学んだ知識が大学や社会で思いがけず役立ち、『先生ありがとう』と言ってくれたりします」

 若井教頭によると、同校には車椅子を使用している生徒がいて、自分の経験を社会貢献に結び付けようと、工学系の進路を目指して頑張っているそうだ。「自分に与えられた『賜物』に『隣人愛』『学而事人』の理念を結びつけ、独自の道を開いていく。そんな生徒を、今後も育てていきたいです」

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート 一部写真提供:桜美林中学校・高等学校)

 桜美林中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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2022858 0 桜美林中学校・高等学校 2021/05/06 05:01:00 2021/05/06 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210430-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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