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【特集】心・体・頭を鍛え、社会に貢献できる人材目指す…関西学院

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 プロテスタント校である関西学院中学部・高等部(兵庫県西宮市)は、「Mastery for Service(奉仕のための練達)」をスクールモットーとして、キリスト教主義に基づく人間教育を実践してきた。毎朝の礼拝や聖書の教えに加え、開校130年を超える伝統の中で生まれたユニークな体育・学校行事や学習法により、日々、生徒たちの「心・体・頭」を鍛えている。その教育方針や指導の実際などを中学部の藤原康洋部長に聞いた。

「社会に役立つ人物になるために自らを鍛えよう」

  ――教育方針について説明をお願いします。

「最も生徒に伝えたいと考えているのは、謙遜の心です」と語る藤原部長
「最も生徒に伝えたいと考えているのは、謙遜の心です」と語る藤原部長

 関西学院全体のスクールモットーとして、「Mastery for Service(奉仕のための練達)」という言葉があります。これは、社会に役立つ人物になるために自らを鍛えようという、キリスト教の教えに基づいた精神です。この精神のもと、本校では、神から与えられたタレント(才能)を鍛え、自分のためだけではなく、人のために使うことに喜びを感じる豊かな人間性を備えた人材の育成を目指してきました。

 特に中学部では、成長著しい中学生のうちにしっかり鍛えようということで、心・体・頭の「鍛錬」を重視した教育を行ってきました。まずは、心と体を鍛えて人間としての土台を育んだ上で、知識を養うことが大切だと考えています。

生徒たちの心を育成する毎朝の礼拝などのキリスト教主義教育
生徒たちの心を育成する毎朝の礼拝などのキリスト教主義教育

 まず、心を育成するにあたり、根幹となるのはキリスト教主義教育に基づいた学びです。毎朝の礼拝には全校生徒が参加し、日替わりで登壇する教員からの講話に耳を傾けます。日々の講話から生徒たちは、生きていく上で大切な学びを得てくれているでしょう。また、賛美歌の歌唱を通じて、芸術的な感性も養っています。

 私がキリスト教教育を通じて最も生徒に伝えたいと考えているのは、謙遜の心です。人間を超えた神の存在を感じることで、誰が見ていなくても自分を律し、常に謙遜の姿勢を忘れないでほしいと願っています。

 また、聖書には「世の光 地の塩」という言葉があります。社会に貢献するというのは、世界の課題を解決するような大きな力のことだけではありません。「世の光」として社会をリードして活躍する人と同様に、「地の塩」として身近な家族や職場、地域のために役立つ人も尊いものです。それぞれのやり方で「Mastery for Service」を体現する人になってほしいと生徒たちに折に触れて話しています。

たくましい体とめげない心を育てる

  ――たくましい体と心を育む取り組みはどういうものですか。

無人島でのキャンプで遠泳にチャレンジする生徒たち
無人島でのキャンプで遠泳にチャレンジする生徒たち

 週4回、1日3kmを目標にした駆け足を全員参加で行っています。入学当初は目標に達しなかった生徒も、1か月もたてば走れるようになります。日頃の駆け足の成果を発揮する場として、年1回のマラソン大会があり、男子は10km、女子は7kmを走破します。体が鍛えられると同時に、めげない精神力を養うこともできます。

 また、60年以上続く本校の伝統行事であるキャンプが挙げられます。入学式直後に行われる新入生オリエンテーションキャンプでは、泥まみれになりながらラグビーをする「メチャビー」で盛り上がります。2年生は、夏休みに無人島での4泊5日のキャンプを行います。原始的な環境での共同生活は便利な生活に慣れた生徒にとって、楽しいだけの体験ではありません。そんな非日常の世界で仲間とともに過ごすことで、自身の行動に責任を持つこと、協力することの大切さなどを肌で感じ、身も心もたくましく成長します。

 さらに、食事づくりや清掃など生活のすべてを自分たちで行う中で、普段の豊かな生活への感謝の心も芽生えます。日常の生活を支えてくれている存在に気付き、帰宅してから保護者に「いつも食事を作ってくれてありがとう」と感謝の言葉を述べる生徒もいます。

 2012年に共学化した際には、駆け足や無人島キャンプに女子生徒が参加することへの心配もあったのですが、すんなりとなじんで女子生徒も元気いっぱいに励んでいます。

 キャンプには本校卒業生の大学生も参加し、寝食を共にしながら関西学院の精神を先輩の姿から学ぶことができます。本校では、普段のクラブ活動でもコーチとして先輩大学生が指導しており、教員からだけではなく先輩から受ける感化も生徒たちの成長に役立っていると感じています。

自分の頭で考える力を養う「読書科」授業

  ――知識や探究心を育む独自の取り組みはありますか。

読書習慣を付け、探究活動にも取り組む「読書科」の授業
読書習慣を付け、探究活動にも取り組む「読書科」の授業

 週1、2回の「読書科」の授業があります。これも60年以上続く中学部の伝統です。この授業の狙いの一つは、読書の習慣付けです。中学部図書館の年間貸出冊数は2万冊以上です。個人で購入した本を読んでいる生徒も多く、読書が学校生活に定着しているように思います。本をじっくり読み込むことで、自分の頭で考える力が養われます。また、読書を通じて、心の成長も期待できます。読書をする時には客観的に作者の考えに寄り添うことが必要であり、人を理解しようとする心が育まれると考えています。

 読書科の授業では、本を読んで知識を得るだけに終わらず、「問う・答える(調べる)・伝える」の学びのサイクルを繰り返し、探究心や考察力、課題解決力、プレゼンテーション力といった多様な力も育まれます。学びの集大成として中3生は、約1年かけて本格的な卒業レポートを完成させます。大学生となった卒業生から読書科での学びが役立ったという声をよく聞きます。もちろん、大人になってからも生きる学びです。

 こうした言語活動教育の一環として、夏休みの宿題に外部の文芸コンクールへの応募を課しており、数々のコンクールで優秀な成績を収めています。絵本の原作を創作するコンクールで最優秀作品に選ばれ、有名絵本作家によって応募作品が絵本化された生徒もいます。外部の客観的な評価を得ることで、生徒は自分の力を知り、自信を付けるという効果ももたらされます。

  ――早期からプログラミング教育を導入していると聞きました。

 約10年前から、技術・家庭科の授業にプログラミング教育を導入しました。コンピューターの仕組みを理解するだけでなく、試行錯誤を繰り返す中で論理的思考力や問題解決能力を養うことを狙いとしています。オリジナルロボットの技術を競う「創造アイデアロボットコンテスト」にも参加し、毎年のように全国大会への出場を果たしています。生徒たちが自分たちの頭で考え、協力し、楽しみながら課題に取り組んでいる姿を見ると、まさにアクティブラーニングの実践につながっていると感じています。

  ――今後は、どういう教育を目指しますか。

 これから育んでいきたい力として、「レジリエンス」という言葉に着目しています。困難に直面しても乗り越えて成長していく精神力を意味します。駆け足やキャンプなどの取り組みを通じて、これまでもめげない心を育成してきましたが、一歩進んで失敗経験をも乗り越えられるたくましさを育てていきたいと考えています。そのため、例えばロボットコンテストのように、失敗をおそれずにチャレンジする機会をこれまで以上に提供していく必要があるでしょう。

 また、本校ではさまざまな取り組みに対して「みんなで協力して頑張ろう」という精神を大切にしてきました。もちろん、この精神は今後も変わりませんが、同時に生徒それぞれのニーズに即した個人の力を養うという面も強化していく方針です。今年度の中1生から1人1台のタブレット端末を導入し、ICT環境を活用するなどして、個人の力を高める取り組みを検討していきます。

 決して関西学院の伝統的な精神からぶれることなく、豊かな人生を生きるための生徒の成長につながる教育をこれからも提供していく考えです。

 (文・写真:溝口葉子 一部写真提供:関西学院中学部・高等部)

 関西学院中学部・高等部について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2142471 0 関西学院中学部・高等部 2021/06/23 05:01:00 2021/06/23 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210621-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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