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【特集】理工系の知識で社会課題の解決を目指す「探究」…芝浦工大附属

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 芝浦工業大学附属中学高等学校(東京都江東区)は今年度、中学のカリキュラムを一新し、新たに「SHIBAURA探究」という独自の授業を開始した。この授業は、「IT(Information Technology)」と、「GC(Global Communication)」の二つの分野で構成されていて、いずれも知識の習得に終わらず、課題の実践的な解決へと導くことに特徴がある。この授業の内容や生徒の声を紹介する。

STEAM教育の先にあった独自の探究型授業

「自ら考えて、挑戦して、失敗したら、また考えて挑戦するという体験を大事にしている」と話す岩田先生
「自ら考えて、挑戦して、失敗したら、また考えて挑戦するという体験を大事にしている」と話す岩田先生

 新たに導入された「SHIBAURA探究」は、今年度、中学が共学化するのに伴って行われたカリキュラム改編の一環だ。新たなカリキュラムでは主要5教科の授業数を週4時間に引き締めており、余裕ができた分、「総合的な学習の時間」を増やして、「SHIBAURA探究」に充てている。このほか、生徒自ら授業の振り返りや、学習の定着、アウトプットをする時間として新しく「SD(Self Development)」という時間も設けた。

 広報部長の斎藤貢市先生は新カリキュラムについて、「私たちは、学力は生徒が自ら意欲を持って学ぶことで伸びると考えており、以前からSTEAM教育に力を入れてきました。これをさらに推し進めた先にあったのが『IT』と『GC』の学びであり、この2分野からなっているのが『SHIBAURA探究』なのです」と説明する。

 「IT」の授業は、「人に役立つためのモノ・コトづくり」を目標に掲げ、デザイン思考を取り入れた学習を行っている。1年生は「遊びながら想像する」をテーマに据え、1学期は「映画『アポロ13』から宇宙開発を知ろう」「ドラえもんになって、秘密道具を作ってみよう」「スクラッチでドローンを飛ばそう」などのプログラムに取り組んだ。

 この授業では初めに「かなえたいコト」などの課題を決め、それを自らの力で解決に導いていく。「IT」の主任で技術・情報科の岩田亮先生は、「たとえばドラえもんの道具を考える時はまず、なぜそれが必要なのか、それが人の生活にどう影響を及ぼすのかまで踏み込んで、グループで話し合いをします」と話す。

ドローンの飛行制御に取り組む生徒たち
ドローンの飛行制御に取り組む生徒たち

 取材に訪れた6月14日は、生徒がペアになって、ドローンの飛行制御を行っていた。毎回、岩田先生が授業の始まりに10分程度、学習の眼目を説明し、その後は生徒が主体となって活動をしている。「授業では、自ら考えて、挑戦して、失敗したら、また考えて挑戦するという体験を大事にしています。そのプロセスを踏むことで、知識を習得だけで終わらせず、使いこなすことへつなげていくことができます」

 「一般的にプログラミングの学習は、モニターの中でコードを書いて動かすことが多いのですが、本校では必ず実機に転送して確認をしてから、次のミッションへ進みます。数値の間違いが人命に関わる場合もあることを伝え、生徒たちには実学としての理工学を学んでほしいと考えています」

社会課題を「自分ごと」と捉えて解決目指す

豊洲観察で乗車した水陸両用バス「スカイダック」
豊洲観察で乗車した水陸両用バス「スカイダック」

 もう一つの授業の「GC」は、探究とSDGs(持続可能な開発目標)を組み合わせた内容で、社会の課題を「自分ごと」として捉えて解決を目指す学習だ。1年生は学校のある湾岸エリアを中心に活動を行い、2年生は長野県で農村体験をするなどして、地方から日本を考察する。3年生はアメリカ修学旅行を通じて、世界へと探究の領域を広げる。

 1年生は1学期に、地元の豊洲について歴史や産業などあらゆる角度から研究し、「TOYOSU解剖図鑑」を作成するプログラムに取り組んだ。「GC」主任で数学科の金森千春先生は、「調べ学習をする際、生徒たちは、現代と50~60年前の豊洲を表裏に描いた『TOYOASOBI探QMAP』というオリジナルの地図を持って、実際に街歩きをしました」と話す。

 その後も、水陸両用バス「スカイダック」に乗って海から豊洲を観察したり、IHIやマルハニチロなど地元の企業の人から話を聞いたりする活動を行った。「本来なら会社訪問をする予定でしたが、緊急事態宣言が出て、オンラインに切り替えることになりました。それでも資料に載っていない話を聞いたり、生徒の質問に答えていただいたり、貴重な体験をすることができました」

 このような「SHIBAURA探究」の取り組みは、既に外部の評価を受けており、「IT」では全国私立大学附属・併設中学校・高等学校教育研究集会(附属校サミット)の実践研究指定校に、「GC」ではパナソニック教育財団の特別研究指定校に認定されている。これによって大学教授のアドバイザーや助成金などの支援を受けることができ、より活動を活発化させている。

教科も探究化した授業の組み立て目指す

「SHIBAURA探究」で主に「GC」の分野を担当する金森先生
「SHIBAURA探究」で主に「GC」の分野を担当する金森先生

 岩田先生と金森先生が授業をつくる上で共に重視しているのが、「ワクワク感と学びをつなげること」と、「SHIBAURAにしかできない探究をすること」だと言う。「面白い、楽しいと感じることが、生徒の学びを進めると考えています」

 中1の 峯苫(みねとま)愛奈(かんな) さんは、最初、水陸両用バスに乗ると聞いたとき、「どうしてこんな遊びみたいなものが学習になるのだろう」と、不思議に思ったそうだ。「けれど海から豊洲を見ることで、また違う豊洲を知ることができ、いろいろな視点からものを見ることの大切さが分かりました。また、豊洲の街歩きをした時も、パソコンで調べるより、何倍も知識を深められることを実感しました」

 小5からスクラッチを勉強してきたという中1の 深作(ふかさく)友哉(ともや) 君は、「自分たちでプログラミングして、3Dやロボットを動かす学習がとても楽しい」と話す。「この学校は最新の設備が充実し、目指していることも技術で世界と関わるなど、スケールが大きいと感じます。将来は、人を助ける自宅用のロボットを開発したいと思っています」

 斎藤先生は「SHIBAURA探究」の最終目標について、「理工系の知識で社会課題を解決すること」と話す。「現代はグローバル化が進み、外国人とチームで仕事をすることも普通になっています。また、エンジニアも技術だけあればよいという時代ではなくなり、その技術を活用して、新しいものを発見したり、創造したりすることが求められます。そのことを中学の時からイメージできる環境を作っていきたいですね」

 今後の展望としては、「教科の探究化を目指します。『SHIBAURA探究』の取り組みをヒントに、教科においても、生徒の好奇心や意欲を引き出す授業を組み立てる。そして、総合的な学力と未来創造力を備えた若者を育てていきたいと考えています」

 (文:北野知美 写真:中学受験サポート 一部写真提供:芝浦工業大学附属中学高等学校)

 芝浦工業大学附属中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2205625 0 芝浦工業大学附属中学高等学校 2021/07/19 05:01:00 2021/07/19 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210714-OYT8I50007-T.jpg?type=thumbnail

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