【特集】基礎学力の上に多様な力を花開かせる体験型学習…開明

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 大阪有数の進学校として知られる開明中学校・高等学校(大阪市)は近年、学校推薦・総合型などの選抜入試でも高い大学合格実績を上げている。背景には、日々の地道な学習に加え、年間を通して行われるさまざまな体験型プログラムがあるといい、これらを通して生徒は、学びのモチベーション、社会性、表現力など多様な力を育んでいるという。こうした教育の意義や効果、特色などについて林佳孝校長に話を聞いた。

卒業生の50~60%が国公立大に合格

「多様な力を育むために、体験型のプログラムが欠かせない」と話す林校長
「多様な力を育むために、体験型のプログラムが欠かせない」と話す林校長

 同校は、1914年に大阪商業会議所(現:大阪商工会議所)が設立した「大阪貿易語学校」を前身とし、今年で創立108年を迎える伝統校だ。大阪府内では指折りの進学校としても知られる。「20年以上前から、毎年50~60%の生徒が全国の国公立大学に合格し、東京大学、京都大学、国公立大医学科など難関校の合格者も輩出しています」と林校長は胸を張る。2022年度募集の大学入試でも、東京大学1人、京都大学16人を含む142人が国公立大学に現役合格し、既卒生を合わせると183人に及ぶ好実績となっている。

 林校長は、この実績を日々の地道な学習の賜物と見る。同校では毎日7時間の授業があり、確認テストや予習・復習のための課題によって徹底的に学習内容を定着させ、確かな学力を養成しているそうだ。

 ただ、教育方針として最も重視しているのは、「生徒の未来の土台となる力を中高6年間で育てることにあります」と林校長は強調する。「ですから、高1までは受験科目に注力した学習指導はせず、実技科目も含めてしっかりと取り組むように指導しています。大学受験のための学習ではなく、その先をも見据え、基礎学力、幅広い知識と教養を身に付けることが目標です。思考力や課題発見力といった多様な力も、これらの基礎的な力があってこそ身に付くものだと考えるからです」

 基礎学力を土台としてさらに多様な力を身に付ける。こうした教育方針の有効性を裏付けるのが、近年の学校推薦・総合型選抜入試での合格実績の伸びだ。林校長によると、同校は、こうした選抜入試で国公立大学へ毎年20人以上の合格者を出しており、昨年度の卒業生は40人が合格したという。選抜入試の一つである京都大学の特色入試でも同校は、導入された2015年以来7年連続で合格者を出しており、今年度の合格者は過去最多の7人となった。

 この傾向について、林校長は、同校が力を入れている体験型プログラムの効果を指摘する。「学校推薦型や総合型の大学選抜入試の際に、体験型プログラムの経験が生かされているのではないかと感じています。中学高校でどんな経験をしてきたのか、大学で何を学びたいか、将来はどんな道を志しているか、オリジナリティーのある自己の意見や思いをアピールできるからです」

年間を通じて多様な体験型プログラムを実施

海洋生物の採集、解剖、実験などを行う「理科実習」
海洋生物の採集、解剖、実験などを行う「理科実習」

 年間を通じて数多く実施されている体験型プログラムについて林校長は、「学びへのモチベーション、集団活動の中で培われる社会性、学びを支える体力・気力・精神力など、多様な力を育むには体験型のプログラムや学校行事が欠かせないと考えています」と言う。

 中学で新入生は、オリエンテーション合宿に始まり、5月には信楽焼などの産地で開かれる陶芸教室、7月の林間学校などを体験する。このほか、中学3年間を通じておよそ3か月に2回の頻度でプログラムが用意されており、和歌山県の加太湾を訪れて海洋生物の採集、分類、解剖、実験を行う「理科実習」、歴史にゆかりの土地を訪ねて歴史上の人物に思いをはせる「歴史探訪」、さらに弁論大会、スキー実習と、生徒の関心の幅を広げて学びへの意欲を引き出している。

14時間かけ、夜通しでしまなみ海道を歩く中3生たち
14時間かけ、夜通しでしまなみ海道を歩く中3生たち

 それらの中でも特筆されるのは、中3の3月に実施される卒業記念行事「しまなみ海道夜間歩行」だ。広島県の尾道から愛媛県の今治まで、次々と橋を渡り島々を巡る約43kmのルートを夜通し14時間かけて歩く。「苦しい時に仲間と励まし合いながら乗り越えた経験は、生徒たちの心に強く残ります。この経験が直接、学習に効果をもたらすわけではありませんが、受験期にクラス一丸となって目標に向かって頑張るなど、生徒たちの精神の成長に影響を与える行事となっているのではないでしょうか」

 また、大阪貿易語学校を前身とするだけに、英語学習・国際交流をテーマとするプログラムも豊富だ。例えば中1では秋の校外学習で、観光地を訪れて外国人観光客へのインタビューを行う。「初めは話しかけることに臆していた生徒でも、習いたての拙い英語が伝わるという経験を一度すると、自信が付いてどんどん積極的に話しかけるようになります」

 ほかにも、留学生との京都探訪、オーストラリアからの学生との交流、オーストラリア語学研修などのプログラムが行われる。オーストラリア語学研修では、現地校の授業に参加し、1家庭に生徒1人でホームステイし、2週間の英語漬け生活を体験する。希望者対象の研修だが、半数以上の生徒が参加を希望するそうだ。「これらの体験的なプログラムによって飛躍的に英語力が伸びるというわけではありませんが、英語を話すハードルを下げ、もっと話せるようになりたいという気持ちを刺激する効果をもたらしています」

実体験を通して自分の視点を持ち、表現力を磨く

観光地で外国人観光客に英語でインタビューする生徒たち
観光地で外国人観光客に英語でインタビューする生徒たち

 これらの体験型プログラムはただ体験するだけでは終わらせず、リポートの作成や発表につなげていく。6年間を通じて自分の言葉で表現する多くの機会を得て、生徒は実体験から自分なりの視点を持ち、考え方を深め、表現力を磨くことができるそうだ。

 体験型プログラムによる多様な経験は、生徒の将来の進路に影響を与えることも少なくないという。「北海道への修学旅行で地域振興策を地元の役場にプレゼンテーションしたのをきっかけに、農村が抱える課題に興味を持ち、京都大学の農学部に進学した生徒がいます。また、 JAXA(ジャクサ) (宇宙航空研究開発機構)に勤務する卒業生は、弁論大会のテーマに宇宙探査機を選んだことから、宇宙に興味を持つようになったと話していました」

 社会情勢の変化に応じた新たな取り組みも始まっている。文部科学省のGIGAスクール構想に対応し、今年度はタブレット端末を導入する。「この先の社会がどのように変化しても対応できる力を持った生徒を育てていくつもりです」と林校長は語る。「ただ、生徒にとって本当に必要な力を育成するという本校の目指す教育が変わることはありません。『研精不倦(研精して () まず)』という本校の校訓通り、地道に誠実に自分を磨き続けられる人になってほしい。努力に対してすぐに結果が出なくても、諦めずに取り組むことの大切さをこれからも生徒たちに伝えていきます」

 (文・写真:溝口葉子 一部写真提供:開明中学校・高等学校)

 開明中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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