「文章検」活用で、語彙力を表現力へ高める…漢検

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 2020年の大学入試改革では、「考える力」「文章で表現する力」が問われるようになる。八千代松陰中学校・高等学校(千葉県八千代市)は昨年から、この文章力強化の取り組みとして、教科外活動に「文章読解・作成能力検定(以下、文章検)」を導入した。文章の「基礎力」「読解力」「作成力」を判定するこの検定は、生徒たちの文章力を鍛える格好のツールとなることが期待される。国語科の教諭らに検定導入の効果を聞いてみた。

国語が苦手な生徒も、1か月の対策で見事合格

久保原玲奈先生(左)と飯塚真吾先生
久保原玲奈先生(左)と飯塚真吾先生

 「本校はこれまで『漢検』の受検を盛んに行って、国語の語彙(ごい)力を育ててきました。その成果を文章力にも生かしていきたいと考えていましたが、普段の授業の中にそのためのカリキュラムを導入するのは難しい。そこで、教科外活動として昨年から『文章検』も取り入れることにしたのです」と、同中1年の学年部長である飯塚真吾先生は話す。

 「日本漢字能力検定協会」(本部:京都市)が実施している「文章検」は、全国450校の大学・短期大学が、出願要件、一部試験免除、点数加算などの面で入試に活用している(2019年1月現在)。「文章検」の目的は、文章によるコミュニケーション能力・論理的思考力を高めることだ。全国の学校や塾、企業で行う団体受検のほか、公開会場で個人受検することもできる。

 同中の国語科主任である久保原玲奈先生は、「文章検」導入の目的についてこう語る。「本校の高等部でも文章力の低下が懸念されているので、ぜひ中学のうちから『文章検』を取り入れたいと考えていました。本校がこれまで取り組んできた『漢検』と連動しているという利点があり、年に2回の団体受検で、各自が自分の力を定期的に測定できるのもいいところだと感じています」

 同校が初めて「文章検」を実施したのは2018年10月。義務教育段階の学習内容の定着度合いを測る4級から、高等学校段階の学習内容の定着度合いを測る3級・準2級までの三つの級を計14人が受検して、12人が合格したという。現在は、社会人生活で必要とされる実用的な文章力が認められる2級まで受検しているという。

 「受検1か月前から、希望者向けに受検対策セミナーを開きました。国語を苦手とする男子生徒がいたのですが、『文章力を付けるために、ぜひ受けてみたい』と志願してきて、見事合格することができました。文章を読んで書く練習を重ねるうちに論理的思考力が向上し、どのポイントに注目して読み書きすればよいか、コツをつかむことができたようです」と久保原先生は「文章検」の効果を話した。

大学入試でも伝える文章の精度が問われる

協会が発行している公式テキスト
協会が発行している公式テキスト

 同校が生徒の文章力の強化に力を入れる背景には、目前に迫る大学入試の変化がある。中学・高校入試のリサーチとコンサルティングを行う「森上教育研究所」の森上展安所長によると、2020年から24年にかけて、高校と大学の接続のあり方が大きく変化する。その中で一般入試枠が小さくなり、AO入試が過半になるという。「人々の関心が、相対的な順位から絶対的な学習の質に向かいます。大学選抜のこうした変化は、実社会での人材選抜との接続を意識したものです」

 高校入試や大学入試の中身も、これまでのように「知識」「技能」という切り口で独立した評価が行われていたのとは、まったく様子が異なってくるという。「入試では、『知識』『技能』の定着を確認するのではなく、問題解決や探究活動の質を高められるような思考力や判断力、表現力を測ることになります。つまりは、読み手に的確に伝えることができる文章の精度をいかに上げられるかが問われるのです」

 同校では、「文章検」の導入だけでなく、普段の国語の授業でも文章力を付けるためのさまざまな取り組みに力を入れている。「文中の分からない言葉はきちんと調べる、主語と述語の関係を把握するといった指導を丹念に行っています」と久保原先生は話す。生徒たちは自分の考えたことを書いてまとめ、発表し、さらに人の意見を聞いて感想を書くという作業を日常的に行っている。また、すべての学年で年10回、さまざまなタイプの作文や小論文を書かせているという。「こうして育つ文章力は、大学入試のみならず、社会に出てからも非常に役立つと考えています」

e-ポートフォリオ使い、リポートを自由にアップ

文章検4級を受検する中学2年生たち
文章検4級を受検する中学2年生たち

 八千代松陰中学校・高等学校は1978年に創立され、現在、中学校で約660人、高校で約2000人の生徒を擁する大型校だ。2018年度は卒業生の約77パーセントが現役で4年制大学に進学しており、国公立大学へ進む卒業生も多い。同校へ寄せられる地域の期待も大きい。

 「本校は、『礼儀正しい、日本らしさを大切にする青年を育成する』という創立以来の精神を大切にし、地域に根差してきた学校です。そのうえで、グローバルな視野を広げて21世紀型のスキルを育てたいとも考えています。今は、昨年から始まった、その改革のただ中にあるところです」と、飯塚先生は話す。

 ICT(情報通信技術)環境の整備もその一つ。校舎にはWi-Fiが整備され、生徒は1人1台ノートパソコンを所持している。これによって、授業でのディスカッションをリポートにまとめ、学習管理ツールを使って共有できるようになった。

 また、e-ポートフォリオを導入し、授業やクラブ活動で経験したこと、スポーツ大会の記録、休日に友人と遊びに行ったときの体験などを、自由にリポートにまとめて提出し、先生や生徒らと共有できるようにした。「書かなければいけないという決まりがあるわけではなく、思いついたら自由にアップするというシステムです。生徒たちは自分から進んで文章を書き、すでに中学1年生だけで4000件以上のリポートがアップされています」と、飯塚先生は話す。

 e-ポートフォリオは、すでに今春の大学入試から、選考資料の一部として利用されている。飯塚先生は「入試を意識したものではありません」としているが、生徒たちの将来を開く有効なツールの一つであることは間違いない。

 「文章検」も、時代が求める新しい学力への対応策としてますます注目を集めている。同校では教諭たち自身も受検して、必要とされる能力を自ら確認しており、今年秋の受検日に向け、いっそう多くの生徒たちに受検の機会を広げていく方針だ。

 (文・写真:足立恵子 写真提供:日本漢字能力検定協会、八千代松陰中学校・高等学校)

 「文章検」について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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586132 0 資格・検定情報 2019/05/17 05:21:00 2019/05/28 09:55:29 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190516-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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