研修で英語鍛え「サイエンス・オリンピアド」で大健闘…CIEE

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 海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)は今年、全米の中高生が科学の知識や思考力、工作技術などを競う「Science Olympiad(サイエンス・オリンピアド)」の高校生部門で、日本代表として初めて2競技で10位以内に入る好成績を収めた。高い英語能力が要求されるこの大会に向けて、生徒たちの活躍を側面から支えたのが英語の「TOEFLテスト」日本事務局の「CIEE Japan」(以下CIEE)だ。同校とCIEEの取り組みの跡をたどる。

自主的に行動して結果を出す海陽流

アメリカ・コーネル大学へ生徒たちを引率した物理担当の谷繁穂高教諭
アメリカ・コーネル大学へ生徒たちを引率した物理担当の谷繁穂高教諭

 「『科学の甲子園』に一緒に出ないか」。昨年7月、内川涼介君(6年生)は仲間たちに呼びかけた。海陽の「Science Olympiad(サイエンス・オリンピアド)」(以下SO)への挑戦が始まったのはここからだった。

 「科学の甲子園」はSOをモデルに2011年から開催されている国内大会で、高校生が学校対抗で科学の知識や実験、工作を競う。優勝校はアメリカのSOに招待され、副賞としてCIEEからSO出場に向けた準備研修が受けられる。

 「2016年の大会で先輩が優勝していたので、僕たちも絶対に優勝したかったんです」と内川君はその時の決意について語る。愛知県予選に向けて仲間を募り、理系クラスで同学年の桜田晃太郎君、兒玉太陽君、田口仁君、穴田悠人君、岡本直樹君が大会出場メンバーに加わった。

 教師が指示するのではなく、「この指とまれ」で生徒が自主的に行動して結果を出していくのが海陽流だという。SOでアメリカへ生徒たちを引率した物理担当の谷繁穂高教諭(61)はこう語る。「海陽ではいつも、大会に出たい人が手を挙げて、自分たちでメンバーを組むという感じなのです。学校としての強化指導とかはありません。学校側でやったことは、実験のアドバイスや場所を提供したくらいです」

 同校は、1440年に創立されたイギリスのパブリックスクール、イートン校を参考に06年4月に開校した全寮制の男子中高一貫校だ。

 パブリックスクールの歴史や教育内容について書かれた『パブリック・スクールと日本の名門校』(秦由美子著、平凡社新書)では、イートン校の教育を「とことん生徒の自主性を尊重し、サポートに徹するところは『すごい』と言わざるを得ない」と称賛する。また、同校の教育目標として、「自立した考えをもつ人間を育てる」「新しいことにチャレンジしていける人間を育てる」などを掲げていることも紹介している。

 イートン校に範を取る同校でも、自主的に行動し、挑戦する生徒をサポートする校風がある。また、いったん始めたら結果に向かって徹底的に努力するのも海陽流だ。

 メンバーは昨年の夏休み、東海・北陸地方の高校による科学の甲子園に向けた合同練習会に参加し、筆記試験や実験で他校と切磋琢磨(せっさたくま)した。10月からは過去問題を解き、プログラミングの勉強もした。年明けからは、寮で遅くまで準備や勉強を続けたという。「メンバーがそれぞれ好きな科目の勉強をして知識を積み重ねていきました」と兒玉太陽君は話す。

 そして、今年1月末の県予選を見事突破し、県代表に選ばれた。3月の全国大会では筆記競技と科学実技で1位となり、総合優勝を果たした。SOへの出場が決まったのだ。

 勝因について内川君は寮生活を挙げる。授業が終わり、寮に戻った午後5時過ぎから11時ごろまで、夕食の時間を挟み、毎晩会議室を“占拠”したという。「ほかの学校と違って、かなり遅い時間まで準備できました。共同作業することで、本番でチームワークを発揮できたのです」

研修と努力の積み重ねがモチベーション高める

CIEEによる2回目の準備研修でプレゼンテーションする生徒たち
CIEEによる2回目の準備研修でプレゼンテーションする生徒たち

 SO出場に向けて、科学の甲子園で優勝した6人のチームに、1学年下の平石雄大君と古舘勇人君が加わった。ここから5月下旬のSOまで、残された準備期間は2か月弱だった。特別参加チームである海陽が出場するのは全23競技のうち4競技だ。当然、英文の問題に英作文で解答しなければならない。しかも、科学関連の専門用語が分からなければお手上げだ。CIEEによる英語力強化の研修が始まった。

 4月上旬の1回目の研修ではTOEFLテストを受け、出場する4競技について説明を受けた。2回目の研修は5月中旬に行われた。SOでは8人が2人1組に分かれ、1競技ずつを受け持って4競技に挑む。このため、本番の大会でペアになる2人で英語や日本語のプレゼンテーションを行い、その後、講師役の鈴木佑治・慶応大学名誉教授が英語で質問するという訓練を積んだ。「最初の研修が終わった後にすごく準備をしてくれていました。2回目はリープ(跳躍)していましたね」と鈴木名誉教授も驚嘆する上達ぶりだった。

 同校の英語教育は手厚い。1~3年では週2回、ネイティブ教師による英語授業を受けている。また、帰国生や海外大進学希望者のためのアドバンスト・イングリッシュ・クラス(AEC)では、ネイティブの教師から英語だけのディスカッション授業を受ける。穴田君と古舘君はAECに入っており、穴田君はイートン校での1か月の短期留学経験もあった。全員の英語力が高かったためか、研修効果は顕著だったようだ。

 研修が終わったとき、SOはわずか2週間後に迫っていた。「フェルミ・クエスチョンズ」(フェルミ推計)という競技に参加する田口君と兒玉君はネットに掲載されていたSOの練習問題を毎日、2、3問解いた。アメリカのチームも使っている問題集で、海陽チームの得点率は60点くらいだった。兒玉君は「アメリカチームの得点も出ていました。それと比較すると僕たちの点数は高い方なんだと分かった」という。暗中模索の日々に光が見えた。着実な努力は実っていることが分かり、モチベーションが一気に高まった。

7位、9位に入った競技もあり大健闘

Global Ambassador Team Awardを授与された生徒たち
Global Ambassador Team Awardを授与された生徒たち

 SOの2019年大会は5月31日から6月1日にかけて、ニューヨーク州イサカ市にあるアイビーリーグの名門、コーネル大学を会場にして開催された。全米50州のトーナメント戦を勝ち抜いた60チームが、知識や思考力、実験の技術・技量を総動員して23競技で競う。分野は物理、化学、工学、生命科学、宇宙科学などの多分野にわたる。

 海陽は特別参加チーム(グローバル・アンバサダー・チーム)のため、4競技のみの参加だったが、現地の高校生を相手に大活躍した。4競技のうち、古舘・岡本組の「フォレンジクス」(法医学)が9位に、田口・兒玉組の「フェルミ・クエスチョンズ」は7位に入った。これまで日本チームが、2競技で10位以内に入ったのは海陽が初めてだ。

 ほかの2競技でも、穴田・平石組の「ライト・イット・ドゥ・イット」(1人が文章で構造物を説明し、もう1人がそれを読んで工作、再現する)が39位、内川・桜田組の「ケミストリー・ラブ」(化学実験)が29位と、それぞれ健闘した。

 「僕はあまり活躍できなかった。英作文ができなくて桜田君の足を引っ張った」と謙遜する内川君に対して、鈴木名誉教授は「なんでそんなに恥ずかしそうに言うのかな。この成績はすごいこと」と激賞する。「小学1年生から十数年、この競技をやっているアメリカ人もいます。海陽チームは今回わずか2週間、準備しただけです。この順位を誇りに思わなければならない。それだけの実力があったのです」

 SOの表彰式では、谷繁教諭と生徒8人がステージに上がった。特別賞「Global Ambassador Team Award」が授与され、会場を埋めた学生たちから、歓声と盛大な拍手が送られた。おそろいのダブルのブレザーを着て、メダルを首から下げた8人は、手を振って喜びを爆発させた。

 (文・写真:林宗治 一部写真提供:海陽中等教育学校、CIEE)

 CIEEについて、さらに詳しく知りたい方はこちら

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769492 0 資格・検定情報 2019/08/30 05:21:00 2019/08/30 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190829-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

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