アカデミックな英語力養成へ、東北大が米教育研究機関と連携…CIEE

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 CIEE国際教育交換協議会(東京都渋谷区)がTOEFLテストの業務を受託する米国の教育研究機関「Educational Testing Service(ETS)」と東北大学(仙台市)が、英語教育で連携する覚書を締結した。国内の大学では初の試みという。同大は、世界で通用するアカデミックな英語力習得に向け、ETSが開発・提供しているTOEFLテストなどを活用した新しいカリキュラムを、新年度からスタートさせる。その狙いなどについて、同大の副学長や担当教授らに座談会形式で語ってもらった。

学部1、2年生で米国大学の講義受けられる英語力を

根本斉・CIEE国際教育交換協議会代表理事
根本斉・CIEE国際教育交換協議会代表理事

 この座談会は2月4日、仙台市の東北大学川内(かわうち)キャンパスで行われ、教育改革・国際戦略担当の山口昌弘副学長と同大大学院国際文化研究科の岡田毅教授、CIEE国際教育交換協議会の根本斉代表理事が話し合った。

 根本代表理事(以後、根本) 東北大が昨年7月、ETSと連携覚書を結んだとき、私も米国に同行して立ち会いました。ETSは戦後設立された米国の非営利団体で、約70年の歴史がある世界的な教育研究機関です。英語力を測るTOEFLテストやTOEIC、米国の高校生が大学進学時に受けるSATなどのテストを開発してきたほか、教育全般のアセスメント(評価)のシステムや英語教員のトレーニングなどの研究にも取り組んでいます。今回、東北大はなぜETSとの連携を考えたのでしょうか。

山口昌弘・東北大学副学長
山口昌弘・東北大学副学長

 山口副学長(以後、山口) グローバル社会を迎え、総合研究型の東北大としては、国際的視野に立って専門性を生かせる人材を育てたいと考えています。そのため、専門分野を学ぶ前の学部の1、2年生で、まず「一般学術目的の英語(English for General Academic Purposes)」を身に付けてほしい。米国の大学で講義を受け、キャンパスライフを送るのに必要な英語力と言ったらよいでしょう。それを測るのに適しているのが、ETSの提供するTOEFLテストです。そのテスト結果などを分析しながら、英語の授業やカリキュラムにも生かしていく。ETSはテスト開発のほか、さまざまな教育プログラムなどの研究にも取り組んでおり、パートナーシップを結ぶことで、学生の英語力だけでなく、教員のスキルも含めて東北大の英語教育全体のレベルアップが期待できます。

 根本 東北大は、これまでも英語教育にTOEFLテストの受験を取り入れていますね。

 山口 10年ほど前から1年生全員が毎年、「TOEFL ITPテスト」(団体向けのペーパー方式テスト)を受けています。英語圏の大学に交換留学をするには、このテストで550点以上(677点満点)取ることが一つの目安です。いわば世界で通用するギリギリのレベルですが、そこに届く学生は、この10年で全体の2~3%から7~8%に増えました。東北大の英語教員たちの熱心な指導のおかげですが、さらに伸ばす必要があります。

新入生の授業から新しい英語学習のゴールとロードマップ

 根本 TOEFLテスト受験などを通して、アカデミックな環境で使える英語力を習得することが目指す方向ということですね。東北大ではどのくらいの学生が大学院へ進むのですか。

 山口 理系の学部では8~9割です。特に大学院に行くと、アカデミックな英語力が欠かせません。英語で文献を読み、論文を書き、発表するのですから。また、最近は留学生が増え、研究室でも英語での会話が日常的になっています。中でもベトナムやタイなど東南アジアからの留学生の英語力ははるかに高く、日本の学生は厳しい競争を強いられています。一方、文系の学生は就職するケースが多いのですが、グローバル企業などで世界とつながるうえでも、理系、文系を問わず今まで以上に高い英語力が求められます。

 根本 今回、ETSと連携覚書を締結したことによって、東北大の英語教育は具体的にどう新しくなるのでしょうか。

岡田毅・東北大学大学院国際文化研究科教授
岡田毅・東北大学大学院国際文化研究科教授

 岡田教授(以後、岡田) まず新年度から1年生の英語の授業が変わります。私は東北大で30年ほど英語教育に携わり、改革にも取り組んできましたが、英語教員たちが授業を進めるうえで、指針となる統一したゴールと明確なロードマップが欠けていました。今回、ETSとの連携に伴い、新年度の1年生の英語授業「英語A」(読む・書く)、「英語B」(聞く・話す)について、TOEFLテストが目指す理念などをもとに、計12の学習目標と、それぞれを実現するため身に付けるべき計24のコアスキル(主要な技能)をまとめることができました。英語教員たちはそれに沿って、授業のシラバス(進め方)を作成したのです。

 根本 「英語ができる」「できない」とよく言いますが、その中身はあいまいです。しかし、アカデミックな英語力習得という大きなゴールに向かって、具体的な目標や必要なスキルが示されれば、学生たちも自分の英語力が今どこにあって、何が足りなくて、何を学べばよいのかが分かりますね。

 山口 大学の研究者の場合、膨大な英文資料の中から、重要なポイントを探さなければなりません。一字一句読んでいては間に合わない。それはビジネスの世界でも同じです。今回まとめた計24のコアスキルの中には、例えば、さっと目を通し大意をつかむSkimming(スキミング)、素早くキーワードを探していくScanning(スキャニング)といった速読の技術など、アカデミックな場面を想定したものが盛り込まれています。最終的には学術的テーマで議論をし、論文を書き、発表する能力を身に付けてほしい。

東北大の新しい英語授業を地域の高校教師らにも公開

1、2年生らが学ぶ東北大学川内キャンパス 
1、2年生らが学ぶ東北大学川内キャンパス 

 根本 東北大とETSの覚書では、「教育プログラムの改善を目指した共同研究」「共同セミナーやワークショップを通しての、教員の英語教育能力向上に向けた取り組み」などで協働するとしています。そして、今回の連携の目的として、「東北大学、ひいては日本全体の英語の教育と学習と研究の質的向上と発展」をうたっていますね。

 岡田 東北大だけがTOEFLテストを活用させてもらうのでなく、私たちの英語教育の改革がどんな効果を生むのか、そのデータをETSにお返ししていく。東北大が良くなると同時に、世界的な教育研究機関であるETSとしても、テストやプログラムの開発などに役立てられるはずです。また、東北大の新しい授業を公開し、ぜひ地域の高校の先生などに見てもらいたいと考えています。それを持ち帰って、自分たちの授業に生かしてほしい。そうした中で、英語の先生たちが授業をブラックボックス化せず、互いに学び合うようになればと願っています。

 根本 日本人は英語ができないと言われて久しいですが、どうにかしないといけない。日本を代表する国立大学の東北大が、自分たちで得た英語教育の知見をオープンにして、他の大学や高校の先生などとシェアしていくとしたら、画期的なことです。

 山口 東北大で新しい英語教育が始まります。まずは成果を上げ、グローバルに活躍できる学生たちを育てていきたい。ぜひ注目してください。

 (文・写真:武中英夫)

 CIEE国際教育交換協議会について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1140386 0 資格・検定情報 2020/04/01 05:21:00 2020/04/01 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200330-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

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