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わが子を前向きにさせる“魔法の言葉”…後藤卓也

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語るべき言葉は一つだけ

 このコラムが読まれているころ、私たちは(1)~(4)の各タイプの保護者、生徒、もしくはその両者と、電話で話したり、個人面談をしたりしているはずです。

 大きく四つにタイプ分けはしましたが、保護者の教育方針・子どもの性格・学力・志望校などは千差万別ですから、できる限り保護者の希望を(かな)え、想定しうる最良の受験をさせるために、受験パターンを微調整し、そのための対策を講じます。

 でも、有頂天になっているタイプ(1)(および(2)の一部)、自信喪失気味のタイプ(3)、自暴自棄のタイプ(4)、すべての生徒に向けて最初に発する言葉は心に決めています。

 「お前はどの学校に合格するためにこれまで頑張ってきたんだ? 確かにA中に合格したのは立派だった。でもたった1回の成功で満足するな、このバカチン! 最後の最後まで走り続けて、全部の学校に合格しなかったら、二度と塾には出入り禁止だ!」

 「B校に合格できなかったのは確かに悔しかっただろう。でも、合格から得られるのは単なる『喜び』だけだが、不合格から得られるのは『反省』と『悔しさ』だ。合格に喜び浮かれている(やつ)と、悔しさをこらえて立ち直ろうとしている奴が、もし次に戦ったらどっちが勝つと思う? わかったか。だから、泣きたかったら全部終わってから、喜びの涙を流せ。このバカチン!」

 「C校に合格できなかったのは、お前が『奇跡の大逆転のヒーロー』になるための、お膳立てみたいなもんだ。でも、もしここで諦めたらただの負け犬だぞ。自分を信じて、俺たちを信じて、最後に父ちゃんと母ちゃんを泣かせてやれ、このバカチン!」

 要するに大切なのは、成功も失敗も、喜びも悔しさも、「次に向けての糧」、人生における貴重な体験として受け止めることができるかだ。大切なのは「過去」ではなく「明日」なんだ。

 ……ということを、少し表現を変えて語っているだけであり、「このバカチン!」は単なる「オマケ」に過ぎません(このセリフを「オマケ」として付け加えた理由は、あとで述べます)。

 でも、中学受験に限らず、人生の岐路というのは、すべてそういうものではないでしょうか。

 人間が大きく成長するのは、決まって「痛恨の敗北」や「ありえないような失敗」に打ちひしがれ、もがき苦しみ、そこから立ち直るための第一歩を踏み出そうとしたときだと、私は思います。

 むしろ何の挫折や失敗も経験せずに「超一流校」に合格してしまった場合のほうが、「あとのしっペ返し」が怖い。「12歳の成功ほど怖いものはない」というのは、私をこの世界に導いてくれた大先輩のセリフですが、まさにその通りだと思うのです。

ヒヨコたちの第一歩のために

ヒヨコ(=わが子)がひとり立ちするために、親は何をすべきか(画像はイメージ)
ヒヨコ(=わが子)がひとり立ちするために、親は何をすべきか(画像はイメージ)

 まして12歳という年齢は、子どもが「親離れ」を始め、親が「子離れ」を始めるべき時期です。

 これまで親鳥のあとをトコトコついていくだけだったヒヨコが、自分1人で歩き出すべき時期を迎える。歩き出してみたのはいいものの、すぐに転んだり、道に迷ったりする。

 親鳥に口出しされると、「せっかく自分で歩こうとしているのに」と反発する。

 でも、まだ1人立ちはできないから、その悔しさを「反抗期」という形で親鳥にぶつけたりもする。ちゃんと歩けるようになると、(うれ)しくて有頂天になり、大きな失敗をしでかすこともある。

 でも、本当は「よしよし。上手に歩けるようになったな」と、親鳥に認めてもらうことが一番嬉しい。そんなもどかしい成長の過程を、見守り続けるのが親鳥の務め。でもついつい……。

 「ほら、そこは危ないから……。あ~あ、だから言ったでしょ!」などと言ってしまう。

 「勝手に歩いていっちゃダメでしょ? いいから黙って私のあとをついてきなさい」などと口にしてしまう。

 その気持ちは痛いほどわかりますが、それではヒヨコはいつまでも、1人で歩きだすことができないのです。

 「このバカチン!」というセリフは、一昨年TBSで放映された『重版出来!』というテレビドラマの最終回で、マンガ雑誌編集者の黒沢心(出演=黒木華さん)が、新人漫画家の中田伯(出演=永山絢斗さん)に、投げかけてしまうセリフです。

 「編集者のヒヨコ」である黒沢心は、はじめて自分が発掘した「漫画家のヒヨコ」である中田伯をなんとかデビューさせようとして、まるで母鳥のように小まめに気遣いをし、全力で応援します。中田くんも実は、黒沢さんのことを「僕を見つけてくれた女神さま」だと慕っているのですが、幼少期に受けた虐待のトラウマから、「ちゃんと食事をして睡眠をとってください。みんな中田さんのために頑張ってくれているんです」と「母鳥目線」で説教する黒沢さんに、「僕のことを支配しようとするな!」と暴言を吐いてしまう。

 そんなシーンのなかで、黒沢さんが、どうしても我慢できずに、でも本当は心からの愛情を込めて投げかけてしまう言葉が、「このバカチン!」なのだと、私は勝手に解釈しています。

 そのシーンがあまりにステキだったので、amazon primeで10回以上()てしまい、「今年の決めゼリフ」に決めました。よろしければドラマをご覧いただき、もしお気に召したなら、受験生のヒヨコ=我が子に、万感の思いを込めて、ぶつけていただければと思います(笑)。

 繰り返しになりますが、大切なのは「明日」に目を向けさせること。そして「残された日々」を全力で歩き続けることです。

 1月入試の成否と2月入試の成否のあいだには、必ずしも有意な相関関係はありません。多数のデータを統計処理すれば、やはり十分な学力を身につけている生徒はきちんと1月入試でも成功し、無事第1志望にも合格しているケースのほうが多いでしょう。しかし「真逆」の結果、つまり1月入試で失敗して2月の第1志望に合格できた、もしくは「その逆」のケースが少なからずあることも事実です。だから最後まで諦めず、勇気を奮い起こして、「親鳥」としての務めを果たしましょう。

 何よりも、幼いヒヨコたちがはじめて厳しい現実に直面したときに、親鳥(および私たち)はどんなふうに接し、どんな言葉をかけてあげられるのか。たぶんそれこそが、中学受験を通して得た、一番の宝物になるのではないかと、私は思うのです。

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3119 0 マナビレンジャー 合格への道 2018/01/17 05:20:00 2018/01/17 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180112-OYT8I50052-1.jpg?type=thumbnail

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