併願校も第1志望という考え方、「後悔しない受験」の極意…後藤卓也

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「後悔しない受験」の三つのアドバイス

 昨年の秋、たまたま立ち寄ったレストランで、卒業生A君のお母さんと偶然、再会したときのことです。

 A君は2月1日に受験した第1志望のB中に進学したのですが、B中生の約半数は2日の2次試験の合格者。彼らにとってB中は「併願校」、つまり第2志望以下の学校ということになります。

 「先日、B中の保護者会に参加したんですけど、同級生のママたちが『我が家は開成落ち組で』『うちは麻布志望だったんですけど』ってグチグチ言っているのがホントに不愉快で……。受験が終わって半年も()っているのに、いつまでも親がそんな気持ちでいたら、子供が可哀相(かわいそう)だと思わないのかしら」

 A君ママのいうことは間違いなく正論です。「グチグチママ」たちの気持ちもよ~くわかりますが、少なくとも読者の皆さんには、できれば「後悔しない受験」をしてほしい。今回はそのための三つのアドバイスを披露することにします。

第1志望に合格するのは「3人に1人」は本当か?

 東京・神奈川の中学受験では「第1志望合格率は3分の1」と、よくいわれます。なぜ「3分の1」なのでしょうか? 統計的な根拠はないのですが、おそらく2月1日の難関校の実質競争倍率が平均して3倍くらいだからでしょう。

両親が「我が子にとっての第1志望校」を探すことが大事(画像はイメージです)
両親が「我が子にとっての第1志望校」を探すことが大事(画像はイメージです)

 実は、私たちの塾の最近の実績を振り返ってみると、どのクラス(1クラス20~25人程度)とも、第1志望合格率は50~70%台をキープしています。少子化などの影響で受験者数が減り、全体的に競争倍率が緩和されたことや、一つの学校で受験できる入試の回数が増え、複数回受験者を優遇する学校が増えたことの影響もあるでしょう。何より、私たちの塾では、「偏差値や世間の評判に惑わされず、一人一人の性格やご両親の教育観、入試問題との相性などを考慮して、『我が子にとっての第1志望校』を一緒に探していきましょう」という指導方針を貫いています。この方針に賛同いただける保護者が増えてきたことが一番の原因だと思います。

 しかし、それは「第1志望校のランクを下げて、より安全な受験作戦をとる」という意味ではありません。むしろ「向いている」と判断した場合は、保護者が尻込みするくらい「偏差値」の高い学校にチャレンジさせています。第1志望合格率はあくまでも「結果」であり「目標」ではないからです。

 そもそも「志望校のランク(格付け)」という観点そのものが、受験生や保護者の意識をミスリードしている元凶だと私は思います。「偏差値60の学校は偏差値50の学校よりいい学校である」という固定観念を捨て、「我が子に一番向いている学校はどこなのか」を第1に考える。それが「後悔しない受験」の第一歩です。

「偏差値」よりずっと大切なもの…鴎友学園の入試日変更

 昨年ある男子校を訪問したとき、取材に応じていただいた初対面のN先生から「後藤さんは、女子校ではどこがオススメですか?」と尋ねられました。個人面談でオススメする学校は一人一人異なりますが、個人的に応援したいと思っている学校はすぐに5校くらい挙げられます。そのうちの1校の名前を口にしました。

 N先生は「それはどうして?」とさらに聞いてきました。

 「学校訪問のときに再会する教え子たちが、みんなとてもいい顔をしているからですね」と答えたら、N先生は「我が意を得たり」といわんばかりの笑顔になり、すっかり意気投合して話が弾みました。

 私が口にした学校は、「鴎友学園女子中学高等学校」(東京都世田谷区)です。進学した教え子たちがみんな口を(そろ)えて「楽しい」と答えてくれる学校は他にもたくさんありますが、あえて鴎友学園を選んだ理由の一つは、3年前の2016年に入試日程を変更したことにあります。

 東京の中学入試は、基本的に2月1日が第1志望校、3日は国立や都立の入試日なので、2日は「併願校」という位置づけになります。これまで鴎友学園は、1、2、4日の3回入試を行い、2日の入試は、いわゆる「女子御三家」志望の受験者が併願するという、確固たる人気を誇っていました。しかし2016年から入試日を2月1日と3日の2回に変更し、1日の定員枠を増やします。その理由は「『どうしても鴎友学園に通いたい』という受験生に一人でも多く入学してほしいから」でした。

 2月2日入試の併願校メリットを捨てることで、結果的には、延べ受験者数は減り、2月1日の「偏差値」が若干下がりました。入学者の学力レベルもそれだけ下がるでしょう。それでも、受験生を集めにくい1日と3日に入試を実施しています。偏差値を上げ、受験者数を増やすために入試日程を変更したり、試験回数を多くしたりする学校はよくあります。鴎友学園は、学校の教育方針を理解し、より志望度の高い受験生を入学させようと、逆に(かじ)を切ったのです。その心意気を応援したいし、実際に進学した教え子たちの笑顔が、その舵取りの正しさを裏付けているように感じるのです。数年後の大学入試結果にどう影響するのか注目しています。

学校内の空気、在校生の表情が第1志望の生徒が多いかどうかの基準となる(画像はイメージです)
学校内の空気、在校生の表情が第1志望の生徒が多いかどうかの基準となる(画像はイメージです)

 私の学校選びの一番の基準は「第1志望で入学した生徒の割合」が高いかどうかです。実際にそうした数値は公表されていない(というか、調査もされていない)ので、塾内でのデータや卒業生からの報告、そして自分自身で感じた学校内の「空気」や在校生の表情などから推測するしかありません。保護者が本当にその学校に()れ込んで我が子を進学させた場合と、偏差値で判断して進学させた場合、どちらが結果的に満足度が高く、「後悔しない受験」になるのかは、誰が考えても明らかだと思うのです。

家庭内で「併願校」「第2志望」とは言わない…1.X志望も第1志望

 とはいえ、そこまで惚れ込める学校に出会えるとは限りませんし、仮に出会えたとしてもその学校が我が子の学力に合致するかどうかはまた別問題です。したがって、可能な限り「惚れ込み度」の高い学校を目指しながら、さまざまな併願作戦を練っていくことになります。

 ただし私は、少なくとも家庭内では「併願校」とか「第2志望」という言葉を使わないように、アドバイスしています。昨年末の最終保護者会では、こんな話をしました。

 「それぞれの入試日程の中で、1日午前はC校、午後はD校、2日はE校というように、いくつもの選択肢のなかから受験校を決めるわけですから、1日午前の第1志望はC校、1日午後の第1志望はD校、つまりすべてが第1志望だと考えましょう。もちろん二つ以上の学校に合格したときに、『C校とD校ならC校を選ぶ』という意味での『志望順位』はあるでしょう。だったらC校が第1.0志望、D校は第1.1志望、E校は第1.2志望でいいじゃないですか。四捨五入したら全部第1志望。夜空の星だって、0.5等級から1.4等級まで全部『一等星』なんですから」

 かなり強引なこじつけであることは百も承知です。ついでに「皆さん、結婚されたご相手は第1.X志望でしたか?」などと余計なことは聞きませんが、結婚も受験も同じようなもの。本当に大切なのは「惚れ込んだ相手と一緒になる」ことより、「縁のあった相手に惚れ込むこと」だと思うのです。だから、受験する学校はすべて第1志望(候補)なのです。

 子どもたちに「過去の十字架」を背負わせるのではなく、「まだ見ぬ明日」への希望に胸を膨らませられるような受験をさせてあげることが、私たち大人の最大の責務だと思うのです。

402591 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/01/24 05:20:00 2019/01/24 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190123-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

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