東京・神奈川が舞台、いざ2月の中学入試へ…北一成<2>

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 年明け間もなくスタートした首都圏中学入試も、1月の埼玉、千葉が一段落し、2月1日からの東京、神奈川でのスタートを待つばかりです。受験生の中には、1月の入試にチャレンジしたお子さんも多いことと思います。その結果を受け止め、志望校の過去問題演習などを中心としてラストスパートに入っている時期でしょう。2月の入試までの残り数日間に、受験生と保護者はどのようなことに留意すべきなのか考えていきましょう。

小学生の学力は「入試直前まで伸びる!」

1月20日に幕張メッセで行われた市川中(千葉県)の第1回入試(首都圏模試センター提供)
1月20日に幕張メッセで行われた市川中(千葉県)の第1回入試(首都圏模試センター提供)

 あらためて意識していただきたいのは、「小学生の学力は入試直前まで伸びる!」ということです。中学受験生は11、12歳。まだまだ未熟で、成長期の真っただ中にあります。だからこそ“伸びしろ”も大きい。

 多くの進学塾のカリキュラムや教材は、前年の夏休みか、その直前までに一通りの学習範囲を終え、あとは実戦に即した入試問題演習などに入っていきます。夏休みや9月初旬の段階で、それぞれの志望校の過去問題を十分に解くことができた受験生は、まだ少数派だったことと思います。この時期に苦労した受験生と、その様子を見て不安に感じた保護者も多かったことでしょう。

 一方、秋から冬(9~12月)にかけて努力し、かなりの手応えをつかむことができた受験生も多いはずです。つまり、中学受験生(=小学生)の学力は、最後の4~5か月で、最もダイナミックに伸びると考えられます。

 特に男子は、女子に比べて“本気モード”のエンジンがかかるのが遅いものです。11月くらいまで無邪気に構えて、お母さんをやきもきさせたりしますが、塾や小学校のクラスで受験に向けてのムードが高まる中で、徐々に集中力を増してくるというケースはかなり多いのです。

 そうした意味で今の時期は、中学受験生にとって、いろいろなことを最も吸収しやすく、気持ちの面や集中力も高まる時期と言えるでしょう。1月に埼玉や千葉での入試を体験した受験生であれば、なおさらです。本番の雰囲気を体験し、合否結果を自分自身で受け止めたことで、2月からの入試に挑んでいく心構えもできたはずです。

 あえてもう一度申しますが、中学受験生の学力は「入試直前まで伸びる」し、もっと言えば「入試の最中にも伸びる!」。ですから、前もって「受験しよう」と決めた学校は、何があっても前向きな強い気持ちで「受け続ける」。そうすることで入試期間中にも、お子さんの学力は伸び続けますし、精神的にもたくましさを増していきます。

2月本番に向けて「もう5点」をもぎ取るには

 そこで、この時期にやるべきことは何か。「極端な応用(実戦)」と「極端な基礎(基本)」の学習の両立です。

 志望校の過去問題はもちろん、それまでできなかった問題にも最後まで食らいついて、「もう1問」をもぎ取る。そういう受験勉強を入試本番まで続けてほしいと思います。これによって、「あっ、そうか!」「こう考えればいいのか!」という手掛かりや突破口に気付くことができれば、「もう5点」を得ることも意外に難しくないのです。

 その一方、「知識の総復習(見直し→完成)」や、各教科の基礎・基本、原理のおさらいに集中して取り組むことも効果的です。「あと少ししか時間がない」という緊迫感から生まれる集中力が、知識を定着する効果を高めます。この「極端な基礎」の学習によっても、「もう5点」の得点力を増すことが可能なのです。

 こうした入試直前の学習で意識してほしいのは、「弱点補強」よりも「強みを生かす」学習です。苦手なものへの取り組みに時間を費やすよりも、自信を持って力を発揮できる科目や分野、傾向問題で「もう5点」を得点することに心掛けたほうが、モチベーションも効果も上がると言えます。

合格に満点は必要ない。中学入試の合格最低点は意外と低い!

幕張メッセでの市川中の入試は例年3000人弱が出願する(首都圏模試センター提供)
幕張メッセでの市川中の入試は例年3000人弱が出願する(首都圏模試センター提供)

 また、「中学入試の合格点は意外に低い」ということも重要なポイントです。最近の私立中学入試の合格最低点は、平均して満点の6割前後か、それ以下です。かなりの難関校でも、50%台というところは少なくありません。

 なぜ、そうなるのでしょう。多くの私立中学の先生は、入試段階では「隙のない知識」や「比較的簡単な問題で高得点できる」学力よりも、手ごわい問題にも正面から向き合って、「その場で考え」「自分の言葉で表現する」ことができるような、骨太で粘り強い学力を求めているからです。少しばかり知識の不足や粗削りな面があっても、中高6年間で「大きく伸びていける」ような、資質や意欲、潜在的能力を評価しているのです。

 自分が志望する中学の合格最低点が例年、満点の50~60%だとします。試験開始のとき、まず問題全体を見渡して、解けそうな問題が8割くらいあればしめたもの。その中の8割が解ければ、得点は64%ですから合格は十分可能です。もし、解けそうな問題が6割しか見つからなくても、集中して正解することができれば、「60%」という合格最低ラインを超えることができます。

 ですから、過去問題に取り組むときも、必ずしも「全部解けるようにならないと……」と考える必要はありません。自分の強みを最大限に生かして、入試本番で「合格点をもぎ取る」ということに集中できれば、結果はついてくると考えて良いでしょう。

 入試直前に「これだけやれば安心」という、いわゆる特効薬は存在しません。しかし、一つだけ言えるのは、この時期の勉強は、受験生自身が最後までモチベーションを下げることなく、何らかの達成感を覚えることができるようなものが良い、ということです。

 たとえば、一つの課題(過去問題や演習問題)に対し、短い時間を決めて、最大限に集中して力を発揮する。そういう学習方法も効果的でしょう。その際、「自分の得意な科目・分野・傾向問題」で、できる限りの力を発揮するように意識します。そこで得られた達成感や自信が、次の課題に取り組むモチベーションを生んでくれるはずです。

 間違っても、残された時間が少ないからといって「あれもこれも」と手を出して、負担感を増すことのないようにするべきです。焦る気持ちは、さらに不安をあおるだけです。入試までの限られた時間の中で、受験生本人が少しでも成長を感じることができるような学習を重ね、「やるだけのことはやった」と考えることができれば、ある意味でそれが“特効薬”なのかもしれません。

 あとはお子さんの力を信じ、親子で話し合って決めた第1志望校の入試に臨むだけです。

 ただ、保護者には最後の最後にできることがあります。お子さんが風邪をひいて体調を崩すようなことがあっても、「それでも大丈夫!」と思えるような、万全の併願作戦を考え、受験できる用意を整えることです。

 たとえば、今春の入試では、男子も女子も「算数1科目入試」の新設がトレンドになっています。これは、最近の中学入試の多様化の中で増えてきた「得意科目選択型」の典型です。山脇学園のように、午後入試で「算数か国語」のどちらか1科目を選んで受験できる入試も実施されています。

 こうした「得意科目選択型」には、国・算・社・理の4科目の中から3ないし2科目、さらには1科目だけ選んで受験できる方式があり、最近は、英語を加えた5科目の中から科目を選択できるものも増えています。

 これらの入試は、私立中学校の側が「受験生の得意な部分」「受験生個々の強みや資質」を評価しようとして生まれたものですから、お子さんの強みが生かせる「得意科目選択型」入試の実施校を併願校の中に組み込むことも、賢い作戦の一つと言えるでしょう。

入試の前夜、当日に保護者が取るべき行動

 入試直前の時期、保護者は焦らず、悩まず、最後まで努力を続けるお子さんの姿を優しく見守っていただきたいと思います。食事や体調の管理、受験に伴う事務的な準備など、親だからこそできるサポートに全力を注げば良いのです。

 入試前日は、できればご家族で、目標にしてきた志望校の入試に向かうお子さんの力を信じ、励ましていただきたいと思います。晩の食事は、特別なものでなくてかまいません。お子さんの好きなメニューの中から、消化が良く、体が温まるようなものを選んでください。

 入試当日、試験会場に一人で入っていくお子さんの後ろ姿を見送る時は、「今までよく頑張ったね」と心の中でほめていただきたい。そういう気持ちはお子さんにもきっと伝わり、存分に力を発揮してくれることでしょう。

 入試が選抜である限りは、合否という結果に向き合わなければなりません。「ここまで力が付いた(=頑張った)」から「合格できた」。その喜びが受験のご褒美ですが、「思うように力を付けられなかった(=勉強の時間や努力が少し足りなかった)」と結果を振り返り、成長の糧にできるということも、中学受験の体験で得られる、とても大きな価値なのです。

 親子で目標に向けて歩んできた受験準備の過程も、お子さんの成長とともに思い出される、ご家族の貴重な思い出となるはずです。

 すべての中学受験生が、最後まで前向きな気持ちで入試に挑み、それぞれの親子、ご家庭が、実り多い中学受験体験ができることを心からお祈りしています。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

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421787 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/01/25 12:35:00 2019/02/04 11:22:53 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190204-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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