本質的学力持つ子供に共通する「非常に高い読解力」…水島醉<1>

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中学入試問題には10年単位のトレンドがある

難関校はライバル校に負けないように、より難しい入試問題を出し続ける宿命を背負わされているが…(写真はイメージです)
難関校はライバル校に負けないように、より難しい入試問題を出し続ける宿命を背負わされているが…(写真はイメージです)

 今年度の近畿圏の中学入試について、昨年度と比べてそれほど大きな変化はなかったようです。そこで、ここでは単年度の比較では見えない、10年単位の大きなトレンドの変化と、中学受験をする上でどうしても必要な、重要なスキルについて、述べておきたいと思います。

 入試問題は、進学塾によって徹底的に出題内容の分析がなされます。中学校の側としては、志望者の多くは徹底的に対策された進学塾の生徒ですから、特定の進学塾に通っているかどうかによって不公平が生じないよう、進学塾の予想を超えた問題を出題しなければなりません。「難関○○中学の今年の入試問題は、当××進学塾の予想問題がピタリと的中しました」などということが何度もあると、学校の評価が下がることにもなりかねません。

 また、どの中学校も、優秀な生徒が欲しいのは言うまでもありません。特に偏差値70を超えるような超難関校、近畿圏なら灘(偏差値74)、東大寺(同73)、大阪星光(同71)などにおいては、そのまま自校の生徒募集に直接つながる京大、東大などの進学実績を残すことが、至上命題です。そういう超難関大学に進学できる生徒は当然、数が限られた上位の子供なわけで、そういう生徒を確保するためには、同じ偏差値70超えの中学がお互いにライバルとなり、より優秀な生徒を確保するために、より難しい問題を出題し合うことになります。

 さらに、入試問題の難しさは自校のレベルの高さを宣伝することに等しく、もし入試問題が他校と比べて易しいと評判になると、学校のレベルも低いと見られることになってしまいます。

 これらの理由によって、元々レベルの高い中学ほど、ライバル校に負けないよう、年々、より難しい、異なった入試問題を出題しなければならないという宿命を背負わされていることになります。しかし、入試問題を永遠に難しくし続けることはできません。どんな小学生にも解けないような難問を出題しても、意味はないからです。ここのところが、特に超難関中学にとって、ジレンマです。

 このジレンマに陥らないためには、生徒募集のことやライバル校の入試問題を意識せず、毎年同じ難易度の問題を作り続けるという勇気が必要となります。しかし他校と比較せず、同じ難易度の問題を出題し続けると、より難しい問題を出題するライバル校より、学校ランクで下位に位置されてしまうという現実があります。京都の難関私立中学を例に挙げると、長らく京都の雄であった洛星中(同68)は毎年およそ同じレベルの質の良い問題を出題していますが、急成長を遂げた洛南高付属中(同73)に偏差値で負けてもう何年にもなります。

 これらのジレンマを解決するため、難易度ではなく「毛色の違った問題」を出題しようというのが、10年単位の繰り返しの、大きな流れの一つとしてあります。およそ30年前、「新傾向の問題」と呼ばれ、それ以前に出題されたことのない、角度を変えた視点からの出題が増えた時期がその走りです。その後定期的に、そういう入試の原点、つまり本当に理解しているかどうかを問う問題に回帰する現象が起こっています。

入試問題の質だけでなく科目や日程も多様化

 1999年から始まった「公立中高一貫校」制度によって、公立中学が中学受験の選択肢に加えられました。この公立中高一貫校の、公立であるが故に「進学塾によって詰め込みされた、解法を教えられただけの特殊な生徒ではなく、本当の思考力のある、伸びる生徒が欲しい」という基本理念によって、過去のどの中学入試にも出題されたことのない、「新傾向」をさらに超える「新・新傾向」の問題が出題され始めました。

 そして「新・新傾向」は現在も続いていますが、公立中高一貫校もすでに20年、さすがにそれだけ続くと、どこにも出題されたことのない、またどの問題集にも載っていない問題を出題するのは、難しくなってきているというのが現実です。

 私立の最上位の超難関校では、だいたい毎年、入試問題の難易度はそう大きくは変化しません。最上位の一歩手前のいくつかの難関校では、前年の結果を踏まえて、問題の難易度を上げる、下げるを繰り返しているところもあります。また中堅校ぐらいだと、入試の難しさでは争わず、公立中高一貫校のような新・新傾向の問題を取り入れる工夫をしているところも多くみられます。

 これらのように、入試問題の質については、年々多様化が進んでいると言えます。さらに入試の科目や日程についても、多様化は進んでいます。

 かつては、主要4科目が中学入試の科目でしたが、最近は算・国・理の3科目受験も非常に増えており、その配点比率もさまざまです。また、小論文やプレゼンテーション、モノづくり作業から論理的思考力を見る試験なども出てきています。さらに、芸術の入賞歴や、指定業者の模試の成績などを対象とする自己推薦制度も増える傾向にあります。

 日程に関しても、前・後期、また午前・午後入試など、以前に比べて他校との併願を積極的に認める方向性が強まっています。複数の日程、選考方法が組み合わさり、専門家の私たちでも理解するのに時間がかかるような複雑な受験パターンになっている学校もあります。

入試の多様化に対応するカギは読解力の向上

 さて、このように年々複雑かつ多様化している中学入試に対応するためには、どのような対策をすればよいでしょうか。以前に比べて多くの学校を受験するチャンスは増えていますが、例えば私立難関校と公立一貫校など、出題傾向の異なる二つの中学を受験するのは難しいといわれています。しかしそういう両者に難なく合格している子供がいるのも事実です。そういう質の異なる試験にも適応できる力こそが、本質的な学力です。この本質的な学力を持った子供に共通している点の一つは、「読解力が非常に高い」ことです。人が言語で思考する以上、読解力は思考力の要です。全ての学力の基礎です。

 「読解力(国語力)を上げるのは他の科目に比べて難しい」と言われますが、実はそんなことはありません。簡単ではありませんが、明確に読解力を上げる方法はあります。次は読解力を上げる非常に効果的な方法についてお話したいと思います。

(本文中の偏差値は大手業者の模擬テストによる2018年度のデータです)

プロフィル
水島 醉( みずしま・よう
 1990年から「エム・アクセス」講師。「問題を解かせる→解説」という授業は国語力の向上につながらないと考え、「読書・思考・記述」を中心とした国語指導を展開している。「読む・聞く⇔書く・話す」の4ルートを鍛えることによって国語の地力を向上させる「視聴話写」という教材を開発。子供の心の成長と学力との関係を重視し、「マインドフルネス学習法」を提唱、授業に応用している。著書に「国語力のある子どもに育てる3つのルールと3つの方法」(ディスカヴァー携書)、「進学塾不要論」(同)など。

無断転載禁止
534591 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/04/15 05:21:00 2019/04/12 17:43:50 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190412-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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