人間力を大きく伸ばす男子校 麻布中・栄光学園中…広野雅明<10>

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 今回は、自由な校風で知られる男子校2校をご紹介したいと思います。麻布中学校は今年度の志願者数が昨年度の933人から1037人に、栄光学園中学校は749人から882人に増加しています。大学入試改革や、社会へのAI(人工知能)の浸透が目前に迫る、この時代だからこそ、多くの受験生、保護者に期待される両校の最近の変化をお伝えしたいと思います。

麻布 自由 闊達(かったつ) な校風と自主自律の精神

麻布中・栄光学園中ともに、入試では思考力と記述力が重視される(写真はイメージです)
麻布中・栄光学園中ともに、入試では思考力と記述力が重視される(写真はイメージです)

 東大100人合格(うち現役70人)。この数字について平秀明校長が口にされたのは、「現役でこんなに受かるなんて麻布らしくないです」の一言でした。

 今年、麻布中学校に合格したある児童は、「4年生の9月、母に連れられて初めて訪れた麻布中で衝撃を受けた。昼食時に生徒が近所のコンビニでお湯を入れたカップ麺を学校に持ち帰っている姿を見たのだ。その自由さにあこがれて、麻布中に入学したいと思うようになった」と受験体験記に記しています。また、文化祭の感想にも、「顔まで真っ白に染めた人や七色の髪の色をしている人などがいておもしろそうだった」「髪を染める人がいたり、マニアックな展示がされていたりと自由さがにじみ出ていて雰囲気もよかった」などとあり、なかなか今の進学校にはない、型破りな校風を感じさせます。

 麻布中学校は1895年、東洋英和学校内に設けた校舎に「麻布尋常中学校」として創立されました。創立者の江原素六(えばらそろく)は旧幕臣で、沼津兵学校を設立するなど旧幕臣の子女の教育に力を入れた人物です。自身はキリスト教信者でしたが、キリスト教の精神を基底に持ちながらも、布教活動とは一線を画した中等教育を目指し、麻布中学校を創立したそうです。自由民権運動に共鳴し、自由党の板垣退助らと共に遊説したエピソードもあり、本校の今の自由な校風に通じるように思います。

 麻布中学校の歴史で大きなターニングポイントとなったのは1969年から始まる学園紛争だと言われます。ロックアウト、ストライキ、校長室占拠など今では考えられないような騒動が伝えられています。その中で今の麻布の自由が勝ち取られ、今の校風が確立したとされています。

 平校長は、麻布の教育を「1-4-1制」だと言います。最初の「1」は中1です。中1では麻布生らしく中2以後を過ごすための準備期間として、徹底的に土台を作ります。各教科で頻繁に小テストを実施し、長期休暇には多くの課題を出します。ノートチェックも行い、まずは自主的に勉強する習慣を確立します。卒業生は、「麻布らしくない」と評するようですが、「今の子供には必要」との考えです。その一方で社会科では、世界の地理と歴史の分野を統合した「世界」という科目を学びます。単なる知識の集積ではなく、麻布らしい魅力ある授業が展開されます。

 麻布らしい授業としては、高1、高2を対象に土曜日の2時間をあてて実施されている「教養総合」が挙げられます。この授業では、既成のカリキュラムとは別個に、テーマ性の高い多様な授業群の中から、それぞれ自分の関心にあった授業を、学期ごとに選択できます。同校のWEBサイトに掲載された授業例には、「中国語、ドイツ語、韓国語、記号論理学入門、初等量子化学入門、日本画と漆喰レリーフ」など多彩な講座が紹介されています。このような授業に文化祭、運動会などの各種行事があって麻布生らしい4年間が過ごされます。

 最後の「1」は高3の大学受験です。麻布生も最後はしっかり勉強し、先生方もしっかり勉強させます。だからこそ、昨今の難関大学合格者、特に現役合格者数が伸びるのだと思います。そして、それぞれの授業は、まさに「生徒に鍛えられ、先生に刺激される」、そして、「とにかく考え続け、ひたすら書き上げる」ものです。

 麻布中学校の入試問題はどの教科も単なる知識の暗記や公式のマスターでは対応できない思考力、記述力の最高峰です。それは入学後に待ち受ける麻布の魅力ある授業の予告編と言えるでしょう。過去の入試問題をわくわくしながら考える児童には麻布は非常に向いています。人間的に大きく成長させたい、そんな保護者の期待に応える学校の一つだと思います。

栄光学園 広大な校地とアットホームな雰囲気

 栄光学園は1947年にイエズス会によって、神奈川県横須賀市田浦に設立されたカトリックのミッションスクールです。1964年に現在地に移転しました。2016年には、学校法人「上智学院」「六甲学院」「広島学院」「泰星学園」と合併し、法人名を「学校法人 上智学院」と改称しました。新校舎も完成し、教育環境もますます充実した同校の近況を紹介させていただきます。

 栄光学園は、1学年が180人(45人×4クラス)の比較的小規模の学校です。そのため、1人の先生が1日で1学年の全クラスの授業を担当できるそうです。同じ授業を1日に担当することで、各クラスのさまざまな意見や発見が集積され、それが次回以後の授業につながります。また、6年間持ち上がりではないので、全教員がほぼ全生徒をいずれかの学年で担当することになります。そのため、教師と先生の距離が近く、何年たっても家族のような雰囲気があります。「先生方と生徒が一緒にダンスしている姿を見て、先生との距離が近く、生徒ものびのびしていて楽しそうだなと思った。この校風が気に入ってこの学校に決めた」という児童もいます。

 最近は若い先生や女性の先生も増えたせいか、どの授業も活発です。教科ごとに各学年で何を教えるかの目安はあるようですが、細部は先生方に任されていますので、裁量の余地が大きいです。ICTを多用する先生、グループワークを好む先生、課題の多い先生、ノート提出の多い先生、各先生の得意とする方法論で生徒を伸ばします。このような授業を保護者は、「勉強を楽しみながらできていたし、お友達もできてその後の生活も楽しかったようです」と評価しています。

 栄光学園に特徴的な授業として「高一ゼミ」があります。週に1時間行う少人数のゼミナール形式の授業です。同校のWEBサイトには、「沖縄、文化人類学、手話、スペイン語、マジック、立体紙工作」など、魅力的な授業の例が掲載されており、先生方の教養の高さを感じます。

 授業だけでなく教育環境の充実も栄光学園の魅力です。校地の広さは11万1000平方メートルで、東京ドームの約2.4倍だそうです。その広大な校地に聖堂、図書館、小講堂などを備えた複合棟、全校生徒が集まれる大講堂、二つの体育館、300メートルトラック、サッカーコート、テニスコート、野球場などがあります。

 先ごろ完成した新校舎は卒業生の建築家、隈研吾氏が設計した建物です。最近の新校舎は、どこも近代建築で高層化され、地下まで利用した建物が多いですが、本校は2階建てで、木材も多用しています。休み時間になると1階からも2階からも生徒が飛び出し、広大な校地で走り回ります。また2時間目と3時間目の間には「中間体操」の時間があって、全校生徒が一斉に外に出て体を動かします。

 栄光学園の入試問題は麻布中と同様に思考力、記述力を重視した内容です。問題は各先生方が非常に工夫しており、受験生の頭を悩まします。例えば社会科では毎年、何かのテーマに基づいて地理、歴史、公民の設問があり、最後にこれらの問題を一通り解いた後に考えたことを、自分の言葉でまとめる記述問題が出されることが多いです。今年のテーマは「石炭」でした。まさに栄光学園の授業で求められる力を見ているように思います。

 広大な校地でのびのびと過ごし、アットホームな雰囲気の中で先生や友人に囲まれ、面倒見よく、かつ刺激的な授業の一端を、ぜひ学校行事等で体感していただきたいと思います。

プロフィル
広野 雅明( ひろの・まさあき
 サピックス教育事業本部本部長。サピックス草創期から、一貫して算数を指導。算数科教科責任者・教務部長などを歴任。現在は、入試情報、広報活動、新規教育事業を担当。

無断転載・複製を禁じます
552504 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/04/25 05:22:00 2019/04/25 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190423-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

一緒に読もう新聞コンクール

新着クーポン

NEW
参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
NEW
参考画像
600円300円
NEW
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス
NEW
参考画像
ご宿泊のお客様の夕食時に地酒(お銚子)またはソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ