憧れの女子校、桜蔭の非公開の歓迎会に潜入…辛酸なめ子<17>

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 水道橋のあたりを歩いていて桜蔭の生徒たちの集団とすれ違うと、彼女たちが何を話しているか、どんなマスコットをバッグに付けているか、一挙手一投足に注目せずにはいられません。早口で話していると、やはり頭の回転が……と思ってしまいます。誰もが気になる桜蔭は、最難関の女子校。東京中の神童が集まるという印象ですが、実際はどうなのでしょう。

 今回「桜蔭学園 PTA新入会員歓迎会」という、非公開の催しを取材させていただくことができました。PTA会員が、新入生と新入生の父母を歓迎するという主旨の会です。会場の講堂に伺い、2階席へ。静かな高揚感が漂っています。この会に招かれるのは、新入生の父母にとってはどんなパーティのインビテーションよりも誇らしいことに違いありません。PTA活動にも積極的に参加したくなりそうです。

 会は第一部と第二部にわかれ、粛々と進行します。PTA副会長の開会の辞、会長による歓迎の辞に続いて、齊藤由紀子校長先生による挨拶がありました。冒頭の「まずは、おはようございます、の時間でしょうか」という一言で、桜蔭という学校のすごさの片鱗を感じました。ただの挨拶でなく問いかけになっていて、生徒の考える力を伸ばそうとされているようです……。お話は、桜蔭の歴史について。関東大震災直後に、東京女子高等師範学校(現、お茶の水女子大学)の同窓生が、女性の教育のために私財をなげうって設立した学び()だそうです。その崇高な意識が100年近く()った今も連綿と受け継がれているようです。続いてお茶の水女子大学同窓会である桜蔭会会長のお話も、ダーウィンやウィリアム・ブレイクなどを引用した教養あふれる内容でした。この会の前半に参加しただけでかなりの教養を得られた感があります。

なぜなのか、5人中4人までがおでこ全開

作文発表中の様子。ステージの上で何百人に見られてすごく緊張する場面なはずなのに、声が震えている女子はいませんでした……。本番に強い桜蔭生です
作文発表中の様子。ステージの上で何百人に見られてすごく緊張する場面なはずなのに、声が震えている女子はいませんでした……。本番に強い桜蔭生です

 第一部の後半は、各クラスから選ばれた5人の中一生による作文発表がありました。壇上に並んでいる5人は一か月前まで小学生だったとは信じられない落ち着きぶりで、微動だにせず立っています。すでにぶれない自分を持っています。皆さん知性あふれるメガネっ子で、さらに5人中4人がおでこを出していました。おでこと集中力は無関係ではないような気がします。そのおでこは光沢感というか艶があり、高いポテンシャルを感じさせました。細かくて恐縮ですが、分け目がピシッとまっすぐな女子も多く、決して道を踏み外さないような安心感がありました。

 作文も、入学して2週間しか経っていないのが信じられないほどしっかりしていて意識が高い内容でした。1人目の方の作文は、3月下旬に祖父母と桜蔭の桜を見に行ったとき、桜蔭卒業生の娘さんのため桜を撮影している女性を見かけたエピソードについて。「桜蔭の桜を見るとこれからもがんばろうと思えるのかもしれません」と、その娘さんの気持ちに思いを()せていました。でも振り返ったらそのおばさんはいなかったとのこと。不思議な余韻が残ります。スピ好きとしては「霊では?」と結論付けたくなってしまいますが……。

 2人目の方の作文は、桜蔭に憧れたきっかけについて。小学校での討論は、「ポッキーとトッポどっちが良いか」「裂けるチーズと裂けるグミはどっちが良いか」といったどうでもいい内容だったのが、桜蔭の文化祭で見た社会科部のディベートはレベルが全然違ったそうです。笑いも取りつつ、最後は「私も人を支えられる人になりたい」とまじめにしめくくられました。

 3人目の方は、入学したばかりで緊張してクラスメイトに話しかけられなかった体験について。「朝、クラスメイトは静かに本を読んでいて、声をかけようと思ったけれど緊張して自分も本を読んでしまった」そうです。皆が朝から静かに読書する空間……他の中学ではなかなか見られない光景なのではないでしょうか?

 4人目の方は、声が大きくてバイタリティを感じさせました。桜蔭生の話の内容はふつうにアイドルや流行(はや)りについてで驚いたそうです。オンとオフの切り替えがしっかりしているのでしょう。「世の中で活躍できるような立派な大人になりたいです!」という叫びが心に残りました。

 5人目の方は、桜蔭の「礼」を重んじる校風に()かれた、というお話。「礼法」の授業があるというのも有名です。所作を体得し、体幹も鍛えられるそうです。その体幹の筋力については、第二部でも実感させられました。

桜蔭の人気の部活の発表を拝見し、集中力に戦慄

第二部のダンス。桜色のドレスがきれいです。肩のシルエットに甲斐性を感じました
第二部のダンス。桜色のドレスがきれいです。肩のシルエットに甲斐性を感じました
ダンス部のヒップホップ系のパフォーマンス。ダンス部は入場制限が出るほど人気だとか
ダンス部のヒップホップ系のパフォーマンス。ダンス部は入場制限が出るほど人気だとか

 第二部は桜蔭でも人気の部活であるダンス部と合唱部による発表がありました。中一はまだ部活に入っていないので、中二~高三のお姉さん方による演目です。ダンス部は大人気で、文化祭でも抽選で入場が決まるほどだそうです。最初は優雅な曲に合わせて、ピンクのドレス姿の女子たちが舞い踊っていました。肩が出る衣装だったのですが、肩には人の甲斐性(かいしょう)が現れると思っていて、桜蔭生の肩はこれからの日本を背負っていきそうな、頼りがいがある骨格をしていました。2曲目はがらっと変わって、なんとヒップホップ系でした。桜蔭でニッキー・ミナージュの曲を大音量で聴くことになるとは感慨深いです。上は赤いラメ、下は黒いパンツでキレの良いダンスを披露。皇族の女性がヒップホップダンスにハマるくらいなので、どこの女子校でも大人気なのでしょう。でも桜蔭の衣装は、黒いパンツもダボッとしていなくて、シルエットが細目で上品さを保っていました。ちなみにダンス部の部員たちも、髪をアップにしていておでこ全開でした。

合唱部の皆さんは笑顔で楽しそうに歌っています。桜蔭は全員部活必修で帰宅部はないそうでした。何にでも全力が求められます 
合唱部の皆さんは笑顔で楽しそうに歌っています。桜蔭は全員部活必修で帰宅部はないそうでした。何にでも全力が求められます 

 続いて合唱部の発表です。「傘立てに」「怪獣のバラード」というリズミカルな曲を正確な音程で歌っていて、その声には清らかさだけではない落ち着きがありました。最後は桜蔭の校歌で、愛校心がこもっているようでした。

 この合唱部の方々も、歌っていな時は動かずにピシッと立っていて、集中力と体幹力を感じました。中一の作文、そして上級生の発表などの端々に、桜蔭生の能力を感じて圧倒された歓迎会でしたが、帰り道、体をぶつけ合い、じゃれ合いながら帰る無邪気な中一の女子たちと一緒になって、心が和みました。でもそれも仮の姿。家に帰ったらスイッチが切り替わり、勉強モードになるのかもしれませんが……。

プロフィル
辛酸 なめ子( しんさん・なめこ
 漫画家・コラムニスト。東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。近著は「大人のコミュニケーション術」(光文社新書)、「おしゃ修行」(双葉社)、「魂活道場」(学研プラス)など。

556608 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/04/26 15:12:00 2019/04/27 15:31:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190426-OYT8I50029-T.jpg?type=thumbnail

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