大学入試と社会の変化を見越した中学入試の多様化…北一成<4>

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 2020年度以降も中学入試でも増加が予想される「私立中入試の多様化」について、前回に続いてお話しします。

小学生と保護者の選択肢を広げた入試の多様化

 今春2019年の首都圏中学入試では、1月の埼玉・千葉入試の時期から、東京・神奈川の私立中入試のスタート日である2月1日の直前、当日、さらに入試後も新聞やテレビなど多くのマスコミや受験情報誌で「私立中入試の多様化」が扱われ、目を引きました。この2、3年の間に、いわゆる「新タイプ入試」が多くの私立中学校で新設・導入されましたが、今年は一段と増加したからです。

 まず、「適性検査型」入試です。与えられた知識を柔軟に使い、その場で考え、自分の言葉で表現する力が問われます。すでに「公立一貫対応型入試」だけでなく、共立女子や大妻多摩などで行っている「合科型・総合型入試」、品川女子や光塩の「記述・論述型入試」、佼成女子や東京女子学園の「PISA型入試」、十文字や聖学院の「思考力入試」、駒沢女子の「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」など、いずれも広く「適性検査型」入試に含まれます。

 さらに今春は、新たに東京・神奈川の私立中で聖徳学園や相模女子の「プログラミング入試」や駒込の「STEM入試」、共立第二の「サイエンス入試」なども登場し、「適性検査型」入試のバリエーションは一層の広がりを見せています。

 これらの「適性検査型入試」の実施校を数えると、2014年から今春19年までの6年間で、首都圏では38校→53校→86校→120校→136校→147校と年々増加しており、首都圏の中学募集をしている学校約300校のほぼ半数に近くなっています。そして、これらの入試を、今春の入試では1万人以上が実際に受験して、約6500人が合格をしています。

 「公立一貫対応型入試」や「合科型・総合型入試」は、公立中高一貫校を志望して「適性検査」対策の学習をしてきた多くの小学生(公立中高一貫校受検生)が、本番への力試しやトレーニングのためにも受けやすい入試として歓迎されました。

 また、「思考力入試」や「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」は、知識そのものの多寡や正確さを問うものではないので、進学塾で2、3年にわたって私立中受験のための勉強をしてきた受験生だけではなく、受験準備を始めるのが遅かった小学生や、多様な学校生活、学習歴(習い事やスポーツなども含む)を経てきた小学生でも、短い期間の受験準備でチャレンジでき、私立中を受験する機会が広がりました。

 次に、「得意科目(1科・2科・3科)選択型」入試です。

 こちらも新設・導入例が増えています。志願者数の増加も昨年以上に目立つようになりました。「得意科目選択型」は、教科によって得意・不得意の差が大きな受験生が、自分の長所や強み(得意科目)を生かして受験できるのがメリットです。

 男子校の世田谷学園や巣鴨、女子校の普連土学園で今春から新設された、午後の「算数1科目入試」などは、「得意科目選択型」の典型ということもできるでしょう。山脇学園でも「国か算どちらか1科選択」という午後入試が新設されました。

 こうした中学入試の形態の多様化は、2020年を来年に控え、「日本の教育と大学入試」が大きく変わろうとしている節目に、中学入試でも問われる学力観が変化した結果と解釈できます。多様な学力や才能を持つ小学生が「中学受験にチャレンジできる機会が広がった」という意味で、小学生と保護者は、こうした多様化をポジティブに受け止めてよいでしょう。

 現にこうした新タイプ入試を新設・導入した私立中高一貫校の先生方は一様に、「これまで以上に多様な受験生と出会うことができ、記述答案や活動歴の文章、あるいはプレゼンテーションの様子から、多くの小学生の豊かな資質や潜在的な能力と伸びしろを感じることができました」と、その確かな手応えを語っています。

「英語入試」実施校は、ますます増加する傾向

「英語入試」を実施している学校は増えている(写真はイメージです)
「英語入試」を実施している学校は増えている(写真はイメージです)

 「中学入試の多様化」を象徴しているもう一つの傾向があります。「英語入試」実施校の増加です。これまでも「帰国生(別枠)入試」では、受験科目の一つに英語を課している私立中はいくつかありましたが、一般入試でも「英語(選択)入試」導入校が目立っており、14年から今春19年までの6年間で、15校→32校→64校→95校→112校→125校と急速に増加してきました。この「英語入試」を今春の入試では、1800~2000人が実際に受験し、1000人以上が合格しています。

 今春の入試に挑んだ中学1年生は、新しい学習指導要領の下で学んだ1期生として2024年度の大学受験に挑むことになります。この年は「大学入試改革の第2期」最初の年であり、以後は英語力の評価に民間英語検定のスコアが全面採用されると言われています。

 「英語入試」実施校の増加は、改革後の大学入試と、その先のグローバル社会で必須の能力となる「英語4技能」を育てていくために、中学受験段階から英語力を持つ、あるいは英語学習に意欲を持つ小学生を、積極的に受け入れていこうとする私立中学の姿勢の表れと考えられます。

 今春の入試では、神奈川の慶応湘南藤沢中等部が「国・算・英」の3教科による「英語(選択)入試」を導入しました。首都圏の公立中高一貫校でも、初の「IB(国際バカロレア)スクール」となるさいたま市立大宮国際中等教育学校の「適性検査」で、英語の出題がありました。こうした導入例も、来春以降の「英語入試」実施校の増加に拍車をかける要素となりそうです。

十数年後を予想した学校選びが重要になる

 ただ、今回の大学入試改革と日本の教育改革という大きな時代の変化を、懸念するよりむしろ歓迎している保護者層が存在することも確かです。この層は「ミレニアル世代」と呼ばれる若い保護者の世代で、グローバル企業やビジネスの第一線での活躍を通して、今後の大学入試や新たな教育で求められる「21世紀型スキル」や、高い英語力を前提としたコミュニケーション能力の必要を肌で感じている世代だからでしょう。

 知識を吸収することが何より重要で、それが思考力・応用力を高める大前提と考える旧来の「学力観」や、根強い「学歴信仰」を持たない、こうした保護者層には、「知識(インプット)の多寡と正確さ」を問われる大学入試よりも、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」が問われる今後の大学入試のあり方が歓迎されています。さらには、各大学での個別入試で「創造性・独創性・芸術性」を求める方向性に賛同する保護者まで、すでに数多く存在するという印象を受けます。

 7年後の本格的な大学入試改革を予想し、我が子が大学や大学院を卒業して社会に出る十数年後を予想し、さらに、その時代に我が子が「幸せに生きていける力」を育ててくれる中学・高校を探していく視点が、若い保護者たちにとって、今後ますます大切になってくるのではないでしょうか。

プロフィル
北 一成( きた・かずなり
 首都圏模試センター教務情報部長。1985年に首都圏の大手中学受験専門塾に入社。同塾の広報や進学情報誌の編集などに携わり、2013年8月に退職。翌月「日本Web情報出版」を設立し、同時に「日本Web学校情報センター」及び「JWSIC教育研究所」を開設。学校情報・入試情報を専門とし、取材等で約400校の中高一貫校をのべ3000回以上訪問。2000人以上の保護者から学校選びに関しての相談を受けてきた。2013年11月から現職。

582644 0 マナビレンジャー 合格への道 2019/05/15 05:21:00 2019/05/15 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/05/20190514-OYT8I50007-T.jpg?type=thumbnail

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